アニメ化決定『アオのハコ』なぜ人気? ジャンプでは異例“お色気ナシ”のストロング恋愛マンガを考察

 「週刊少年ジャンプ」で連載中の青春部活ラブストーリー『アオのハコ』が、TVアニメ化されることが発表された。ティザービジュアルの解禁と共に、主要キャストを声優の千葉翔也、上田麗奈が演じることも発表され、大きな注目を浴びている。

  原作の時点で、単行本の累計発行部数がすでに270万部を突破しているほどの大人気作品だが、なぜ同作は大ヒットに至ったのだろうか。そこにはある意味“ジャンプらしくない”魅力が関係しているように思われる。

 『アオのハコ』は2021年4月から連載が始まった三浦糀の作品。甘酸っぱいラブストーリーと熱いスポ根的なストーリーが軸となっており、中高一貫のスポーツ強豪校「栄明高校」を舞台とした青春模様が描かれている。

 主人公の猪股大喜は、男子バドミントン部に所属する高校1年生。中学生の頃から女子バスケットボール部のスターである1年上の先輩・鹿野千夏に恋心を寄せていたが、家庭の都合によって同じ家で暮らし始めることに……。恋と部活に全力でぶつかっていく高校生たちの心理描写は、どこまでもリアルで細やかだ。

  そんな同作について、ファンからよく指摘されているのが、いわゆるお色気シーンがほとんど存在しないこと。時折主人公をドギマギさせる出来事が起きるものの、それは読者に向けたサービスシーンなどではなく、あくまで思春期の男女の距離感を描写するためのものに見える。だからこそ、性別も年齢も問わずに共感を集める作品となっているのではないだろうか。

   しかし「週刊少年ジャンプ」の作品として見ると、『アオのハコ』はかなり異例な位置付けではないかと思われる。というのも同誌に掲載される恋愛マンガは、伝統的にお色気要素が強い作品がヒットしてきたからだ。

 「週刊少年ジャンプ」の時代を代表する恋愛マンガを振り返ると、1980年代には『きまぐれオレンジ☆ロード』、1990年代には桂正和の『電影少女』や『I"s』など、恋愛とお色気をミックスした名作が継続的に生み出されている。そして2000年代には、ヒロインの“いちごパンツ”から物語が始まる『いちご100%』や、言わずと知れた伝説のハーレムラブコメ『To LOVEる―とらぶる―』がスタートし、さらにお色気要素が増していった。

令和に求められるのはさわやかなラブストーリー?

  そんな「週刊少年ジャンプ」の恋愛マンガの系譜において、ちょっとした転機と言えるのが2011年かもしれない。この年、新連載として『鏡の国の針栖川』と『ニセコイ』の掲載が始まったが、熾烈な競争を生き残ったのは『ニセコイ』の方だった。

 『鏡の国の針栖川』は、『プリティフェイス』や『エム×ゼロ』の作者・叶恭弘が、セクシーな描写を大胆に取り入れた三角関係のラブストーリー。それに対して、『ニセコイ』は作者・古味直志が意識的にお色気要素を薄くしたことを語っており、読者へのツカミとなる1話目からほぼお色気なしという強気の姿勢を見せていた。

  そして『ニセコイ』は、アニメ化や実写化が行われるほどの大ヒットを記録。「週刊少年ジャンプ」のラブコメ作品として、史上最長の連載記録を打ち立てている。おそらく今の読者には、ピュアでさわやかなラブストーリーを求める層が少なくない数存在するのだろう。

  その需要の高さを思えば、さわやかな青春描写をさらに突き詰めた『アオのハコ』が大きな人気を集めているのも、いわば必然と言えるのかもしれない。

 『アオのハコ』のTVアニメ化にあたって、鹿野千夏役を演じる声優の上田麗奈はオフィシャルコメントを発表。オーディションを受けた際のことを、「作品の瑞々しさに圧倒され、『眩しい…!』と目をしぱしぱさせながら頑張ったオーディションでした」と振り返っていた。

  ファンのみならず、演者にも眩しく見えるほどの青春ラブストーリー。アニメでは登場人物たちの心情の機微がどのように表現されるのか、期待が高まる。

■放送情報
TVアニメ『アオのハコ』
原作:三浦糀
声の出演:千葉翔也、上田麗奈
公式サイト:https://aonohako-anime.com/
公式X(旧Twitter):https://twitter.com/aonohako_PR

©三浦糀/集英社

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