金ローで大反響!『葬送のフリーレン』原作から今後の見どころをチェック

 日本テレビ系の「金曜ロードショー」で一挙2時間放送という異例のスタートを切ったTVアニメ『葬送のフリーレン』。不老長命のエルフと、100年も生きられない人間との時間に対する感覚の違いを見せつつ、長く生きるエルフに思い出を与える人間の優しさを描いて、多くの人の感動を呼んだ。もっとも、山田鐘人原作、アベツカサ作画の漫画『葬送のフリーレン』には、TVアニメの初回放送では触れられなかった魅力が、まだたっぷりと残っている。アニメで分かった作品の面白さと、これから知る奥深さとは?

 「老いぼれてる……」。TVアニメ『葬送のフリーレン』の冒頭、魔王を倒した魔法使いのフリーレンや勇者ヒンメル、戦士アイゼン、僧侶ハイターのパーティが、空に流れるエーラ流星を眺めながら、50年後に同じ流星群を見ようと約束して別れて50年後の世界で、フリーレンがヒンメルと再会して発した言葉に笑った人も多くいただろう。

 「言い方ひどくない?」と返したヒンメルと同じ気持ちになって、フリーレンに突っ込みたくたくなった場面。同時に、紛うことなきイケメンだったヒンメルが、頭は禿げて背丈も縮んだ老人なっていたことに、避けることのできない老いという現実を突きつけられた。

 程なくして死んでいったヒンメルの葬儀の後、人間の寿命は短いと分かっていたにもかかわらず、ヒンメルのことを知ろうと思わなかった自分を責めるフリーレンに、4人のパーティがとても充実した10年を過ごしていたことが伺えた。もっと人間のことを知ろうと思う。そんなことを言うようにフリーレンを変えたヒンメルに、会えなかった何十年もの年月を含めて、人生をかけてフリーレンのことを思い続けた優しさが見えた。

 誰かを思い続けること、それが繋がっていくことが、記憶の中に誰かを生かし続けるのだというメッセージを感じて、忘れないでいようと強く思った。

 ヒンメルに続いて死んでいったハイターが、戦災孤児のフェルンを育ててフリーレンに託したことも、ハイターの存在をフリーレンの中に残すことになった。死んだヒンメルと話せるかもしれない大陸北部のエンデに向かって、フリーレンとフェルンが2人で旅を始める第4話まで放送された「金曜ロードショー」から、『葬送のフリーレン』という作品が示す思いの連鎖の大切さを、誰もがしっかりと受け止めたことだろう。

 TVアニメは、そうした決断までの道のりを、淡々とした描写の中に描いて、視聴者の心情をキャラクターたちに沿わせていった。感情をあまり入れずに話すフリーレンを種﨑敦美が演じきり、市ノ瀬加那も感情は抑え気味だが芯に強いものを持っているフェルンというキャラクターになりきって、良いコンビぶりを見せてくれた。若きイケメンが老いぼれた自称イケメンになったヒンメルを演じた岡本信彦の変化にも、さすがと思わされた。

 『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』と同じエバン・コールが手掛けた音楽も、移りゆく季節であり年月をしっとりと感じさせてくれた。派手さはなくてもその分を物語によって引きつけ、音楽によって取り込むアニメ。『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』や『夏目友人帳』が好きな人なら、同じように好きになるアニメだと『葬送のフリーレン』のことを思った人も少なくなさそうだ。

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