『ガンダム 水星の魔女』シビれる最終決戦へーー丁寧に描かれたスレッタとミオリネの再会シーンに納得

 ついに最終決戦が始まった『水星の魔女』。22話はその最終決戦直前の、キャラクターたちによる準備を丁寧に描いた回となった。

 クワイエット・ゼロに立て篭もり、圧倒的戦力差で議会連合の艦隊を撃退するプロスペラとエリクト。一方のアスティカシア学園側では、スレッタをはじめとした学園メンバーが戦いに備えて準備を進めていた。

 大嫌いなスペーシアンに頭を下げてでもデミバーディングの貸し出しを頼むチュチュ、一緒に連れて行ってくれと地球寮メンバーに直訴するフェルシーと、各自がクワイエット・ゼロへと向かう準備を進める中、エラン4号の顛末をエラン5号から聞くスレッタ。その話を聞いてなお、スレッタはプロスペラとエリクトを止める決意を固める。

 緊迫した状況が続く中、スレッタはミオリネとの面会を希望する。そこに立ちはだかったのが、現在婚約者であるグエル。婚約者としての立場から、スレッタに対してフェンシングでの決闘を申し込む。

 この「決闘」というプロセスを踏まなくてはならないところから、グエルの性格、そしてスレッタの覚悟を感じさせるものがある。この状況でスレッタとミオリネが再会すれば、それはもう互いの感情を曝け出すに決まっている。スレッタがミオリネの婚約者ではない状況で、そんな「浮気」を許すことは、グエルの立場的にも物事の筋としても不可能である。そこらの学生の痴話喧嘩ではない。ベネリットグループのトップの話なのだ。

 だからこそ、グエルはあえて「決闘」というプロセスを踏むことにし、スレッタは覚悟を持ってそれに臨んだのだろう。実際のところ、グエルがわざと負けるつもりでいたのか、それともマジでスレッタが勝ったのかはわからない。しかしこのフェンシングのシーンは短いながら作画にも気合が入っており、両者の剣捌きにも緊迫感がある。隙あらばすかさずそこを突くという、第一話から見られるスレッタの容赦なさも感じられた。

 さらに最後の「バカだな」というグエルの台詞は、スレッタとミオリネを会わせるにもプロセスにこだわらざるを得ない自分の立場や、一度は告白までしたスレッタとこんな形で決闘していることの滑稽さなど、さまざまなものに対する自嘲だろうと思う。このフェンシングのシーンは、短いながらさまざまな含みを感じさせるものだった。

 続くスレッタとミオリネの再会も、丁寧な描写だったと思う。「逃げればひとつ、進めばふたつ」というプロスペラに刷り込まれたフレーズではなく、「自分のやったことは取り戻せない」「それでも、何も手に入らないかもしれないけど、前に進むしかない」という言葉を手に入れたスレッタ。そしてその言葉に応えて自分から扉を開けてこの先に向き合うことを選んだミオリネ。会話の流れにもキャラクターの行動にも納得感があり、ここ数話の強引さが嘘のようである。

 扉を開けた時に立っているミオリネのズタボロ感が、なんだか妙にリアルだったのもよかった。これまで常に完璧、穴のあるところなど絶対に他人には見せられないと突っ張っていたミオリネが、晴れて婚約者となったスレッタに対して完全に無防備な姿を晒す……。意味合いが強すぎて「もう最終回じゃん……」となってしまった場面である。

 しかし今回は最終回ではない。復活したミオリネは学園の仲間やベルメリア、ケナンジ隊長らと作戦会議を開く。目標はクワイエット・ゼロがユニットを回収して完璧な状態になる前に、内部に突入して停止コードを打ち込んで機能停止させること。強力なデータストームの中で唯一活動できるのは、体質的にデータストーム耐性が強いスレッタが乗り込むキャリバーンと、複座の操縦システムを持つデミバーディングのみ。スレッタは必死の思いでスコア5までのコールをクリアし、決戦に臨む。

 基本的に子供が酷い目に遭い、大人がダメ人間であることが多いガンダムシリーズ。そこにまともな大人が出てくると、それだけで株がグッと上がる。『水星の魔女』でのその「まともな大人」枠は、やはりケナンジ隊長だった。相手がアーシアンだと子供に対しても当たりがキツかったりして「こ、怖え! やっぱプロの軍人だこの人」と思っていたものの、今回の「責任は大人にとらせなさい」のセリフでいい意味でのプロの軍人らしさを発揮していた。プロローグでの非道な戦いぶりからは、ここまでまともなキャラクターになるとは思いもしなかった……。

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