日本新聞協会「生成AIによる見解」掲載  報道自体の「根幹」を見直す時期に?

AIがニュースを作る時代の懸念

 最近、その名を聞かないことがないChatGPT。メディアの注目度は高まっており、2022年11月30日にプロトタイプが公開されて以来、衝撃をもって迎えられ、既に近年のIT業界にとって革命的なツールと評する識者もいる。

 一般社団法人日本新聞協会はこうした生成AIが普及するにあたり、「生成AIによる報道コンテンツ利用をめぐる見解」を発表した。協会は「他人の著作物等を AI が無断利用したり、AI を不適切な形で使ったりする“負の影響”も広がっている」と指摘。「AI 技術の進歩に法律や社会制度が追いついておらず」「民主主義を下支えする健全な言論空間を守る観点から課題が生じ」ているとし、報道における懸念を5つの論点から述べている。

①言論空間の混乱と社会の動揺
②個人情報保護上の懸念
③現行著作権法や法改正に至る過程の問題点
④報道機関の著作物等をめぐる課題
⑤不透明な運用実態、権利者への不十分な情報開示

 協会が懸念するのは以上の5点である。①については、現時点ではAIが作り出す文章には、事実関係の間違いが非常に多く、偽情報や有害な情報の氾濫する可能性が高いと指摘。また、「報道各社の記事を複数組み合わせ、文言を少し変えるだけで新たな記事を量産できる」ため、報道の質の低下が懸念されているという。

 また、③と④の著作権の問題に関しては、Twitterではイラストや漫画に関して議論が行われているが、報道などの著作物においても同様の懸念がある。協会によれば、2018 年の著作権法改正でAIなどの開発過程で、既存の著作物を無許諾で収集したり、利用することは原則として合法になったという。しかし、これはあくまでも日本発の検索エンジンの開発を意図し、リノベーションを促すためのものであった。まさかAIがここまで甚大に著作権を侵害しかねない事態になるとは想定外だったようである。

 したがって、協会では「当時、生成 AI のような高度な AI の負の影響が十分に想定されていたわけではない」とする。そして、報道機関が著作権を有する記事、写真、画像などのコンテンツが「無断・無秩序に AI に利用される懸念が高まっている」と述べている。こうしたコメントからは、わずか5年で想定外なスピードで進化したAIに対し、国も、報道各社も十分な対応ができていない現実が浮き彫りになっている。

忖度をせず、捏造を許さない姿勢が重要だ

 既に述べたように、現状ではAIが作成する情報は精度が低い。そのため、報道各社がより良質なコンテンツを作成し、信頼に足る記事をつくることで差別化を図れると思う。それが、偽情報の氾濫を防ぎ、報道の信頼を担保するためにもっとも必要なことではないか。

 しかし、現状の報道各社は果たしてそれができているのだろうか。昨今、報道の信頼を揺るがす事態が多く発生しているうえ、本来国民が知るべき情報が報じられていないのではないか、という指摘があるのも事実だ。

 5月15日にはNHKの「ニュースウォッチ9」が、コロナワクチンを接種後に亡くなった遺族に取材した映像を、コロナウイルスに感染して亡くなった遺族ととれるような捏造報道を行い、ネットで大炎上して翌日謝罪に追い込まれている。

 そもそも、コロナワクチンに関する懸念は2021年の段階から一部の研究者の間で指摘されていた。また、ネットニュース編集者の中川淳一郎氏やジャーナリストの鳥集徹氏のように、接種に疑問を呈するマスコミ関係者も少数ながらいたのである。

 テレビでも、そして新聞でもそうした意見はほとんど報じられることがなかった。むしろワクチンに批判的な意見に対し、一方的にデマと決めつける報道が行われてきた現実がある。これは科学的な報道とは到底言えないし、マスコミのあり方として、正しいといえるだろうか。

 こうした意図的な忖度や捏造ととれる報道が行われている状態では、AIの精度が上がってくると、読者が「AIのほうが信頼に足るメディア」と捉えるようになっても不思議ではない。AIの進化によって、ある意味誰でも記者のような仕事ができる時代になってきたからこそ、報道各社は自らの仕事の在り方を根底から見つめ直す必要があるのではないだろうか。

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