『怪獣自衛隊』と『怪獣8号』大ヒット怪獣漫画2作の異なる魅力を考察 それぞれが描くヒーローのあり方とは?

現在、世界を襲う恐ろしい“怪獣”

 さて、『怪獣自衛隊』に話を戻すと、同作では物語が進むにつれ、徐々に自衛隊内部だけでなく、政府、海上保安庁、警察、報道関係者……そして、中国、アメリカと、それまで見えない“壁”で遮断されていた人々が、怪獣という得体の知れない脅威を前にして、(互いに腹の探り合いはしつつも)組織や国境を越えて、ひとつになろうと歩み寄り始めている。

 これは、いま、新型コロナウイルスという名の恐ろしい“怪獣”と戦わなければいけない、我々人類のあるべき姿を示唆している、というのは、いささかいいすぎだろうか。

 そういえば、小松左京はかつて、以下のような文章を『復活の日』で書いた。周知のように、同作はパンデミックを描いた半世紀以上も前のSF小説だが、井上淳哉の『怪獣自衛隊』を読んで、ふとこの一節を思い出したので、少々長くなるが、本稿の最後に引用したい。

この“底知れぬ物質宇宙の、ちっぽけな孤島に偶然発生した知的生物群としての人類意識”がもっと早く普遍化されていたならば……われわれ人類は、もっと早くその全人類的意識を獲得することによって、冥蒙たることをやめ…、相互殺戮の、侮辱や憎悪の、エネルギーを…真の人間のための闘い――貧困と飢餓と冥蒙と疫病に対する闘いに、そして認識のための闘いに…ふりむけていたかも知れない。それがまた、今度の不意打ちの終末、大災厄に対して、万に一つの、チャンスだったかも知れないのであります。〜小松左京『復活の日』(角川文庫)より〜

怪獣自衛隊 【0話】 | コミックバンチweb(comicbunch.com)

■書籍情報
『怪獣自衛隊』5巻
井上淳哉/企画協力:白土晴一
発売日:9月9日
定価:各726円(税込)
出版社:新潮社
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