『葬送のフリーレン』が教えてくれる、“ただ生きること”のドラマチックさ 「不老長寿」に対する独自のアプローチを考察

 
 過去に自分の魔法で喜んでくれた人がいたから、フリーレンは「魔法集め」という趣味を持ち毎日を過ごしている。仲間が酸っぱい葡萄が好きだったからか、彼女は甘い葡萄を酸っぱくする魔法も使うことができる。

 親しかった勇者のヒンメルを亡くし、生前、彼のことをもっと知ろうと思わなかったことを後悔しているから、フリーレンは「人間を知る」という目標を見つけ歩みを進めている。もともとは弟子を取ることを「時間の無駄」と話したり、天国を信じていなかったドライな彼女も、旅の中で少しずつ変化しているようだ。

 フリーレンは過去と今を結びつけ、ときに思い出に浸り、ときに過去に気がつかなかった新しい発見を得て、生きている。その姿は基本的に淡々としているが、「ただ生きる」ことがいかにドラマチックか、ということを教えてくれるのだ。悩みの多い時代、そんなフリーレンの旅に勇気づけられる人は少なくないだろう。それが本作が多くのファンを獲得している、ひとつの大きな理由なのかもしれない。

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