『怪獣8号』衝撃の展開で物語はどこへ向かう? 人気沸騰の理由と今後の行末を考察

 『怪獣8号』(集英社)の勢いが止まらない。漫画アプリ「少年ジャンプ+」で松本直也が連載している本作は、怪獣大国日本が舞台のアクションバトル漫画だ。現在単行本は2巻まで発売されており、驚異的なスピードで売り上げを伸ばしている。そして4月23日に公開された[第32話]は物語の行方を左右する衝撃の展開が話題となり、Twitter上でトレンド入りを果たした。

 ジャンプ作品愛好家でもあり、ドラマ評論家として活躍する成馬零一氏に『怪獣8号』最新話の衝撃、今後の展開、ヒット作になりえた理由について話を聞いた。

※本稿は最新[第32話]のネタバレを含みます。未読の方はご注意ください。

「一気に物語が動きましたね。『怪獣8号』の”鍵”は主人公・日比野カフカの正体がいつ隊員にバレるかだと思っていました。カフカの相棒である市川レノ、四ノ宮キコルがカフカの正体を知っているなかで、他の隊員はいつその事実を知るようになるか。少しずつその事実を知っている人間が増えていくのかと思いきや、一気に怪獣8号の正体がバレてしまった。この展開の速さに驚きつつも、『怪獣8号』は今の「ジャンプ」作品らしいなという印象です」

 週を重ねるごとに激しさを増す巨大怪獣・人型怪獣とのバトルについても次のように言及している。

「このタイミングで怪獣との戦闘のステージが一気に上がった印象です。怪獣が『新世紀エヴァンゲリオン』の使徒みたいな得体の知れない存在となってきて『一体こんな怪物をどう討伐するんだろう』と。バトルのレベルが一気にインフレを起こしたようにも思います」

 また、4月6日に連載が終了した『進撃の巨人』(諫山創)が本作、並びにジャンプ漫画に与えた影響も感じられるという。

「『チェンソーマン』(藤本タツキ)や『呪術廻戦』(芥見下々)もそうですが、現在のジャンプ漫画は『進撃の巨人』の大ヒットの影響で生まれた側面が大きいと思います。これは、それぞれの作家が意識したという以上にジャンプ編集部が『進撃の巨人』の成功を見て「今後は、ここまでやらないと現代の読者に届く漫画にならない」と考えを改め、今までとは違うジャンプらしくない作品も積極的に連載するようになった。具体的に言うと、登場人物があっけなく命を落とす描写に象徴されるシビアな世界観や、細かい謎を提示することで、壮大な物語を展開していく見せ方ですね。設定も、より精密になっている。

 その中でも『怪獣8号』は、かなり『進撃の巨人』を意識した作りになっていると思えます。興味深いのはその結果として、怪獣映画や特撮ヒーローモノのフォーマットを、ジャンプ漫画として咀嚼した内容になっているということです。ある種の原点回帰ですよね。

 話が少し飛躍しますが『仮面ライダー』や『ウルトラマン』は人に正体を知られてはいけない存在でした。それに対して『進撃の巨人』は、巨人の正体が判明したうえで、その能力をどう扱うかを11年にわたる連載で描きました。『怪獣8号』は連載開始からわずか数ヶ月でその領域に突入した感があります。

 カフカに怪獣が取り憑いたことで、カフカ自身が怪獣になってしまうという設定。それは『デビルマン』(永井豪)以降の漫画では定番の設定です。背後にあるのは『悪から生まれたものは善になりうるのか』という葛藤ですが、これは『進撃の巨人』はもちろんのこと、『チェンソーマン』や『呪術廻戦』を筆頭とする近年のジャンプ漫画にも受け継がれている、少年漫画に脈々と流れる大きなテーマですね」

 さらに紙の連載である「週刊少年ジャンプ」とウェブ連載である「ジャンプ+」というプラットフォームの違いが作品の連載に与える影響についても指摘している。

「本来「週刊少年ジャンプ」は週刊連載ということもあり、単発バトルの連続で読者に読ませる作品が多く、緻密にストーリーが練られた作品とは相性がよくなかったんです。そういった状況もあり、『進撃の巨人』は制作スケジュールに少し余裕がある月刊誌で花開きました。しかし、現在の「ジャンプ」特に「ジャンプ+」の作品は毎話、バトルを面白く読ませると同時に、コミックス単位で見ると壮大なストーリーが楽しめる作品が増えてきています。『怪獣8号』もその流れを踏襲しているのですが、それでもこの展開の早さには少し驚きました」