大人が読んでも怖すぎる……『笑ゥせぇるすまん』トラウマ回を検証
藤子不二雄A原作の漫画『笑ゥせぇるすまん』。1989年から92年まで放送されたTBS系人気バラエティ番組『ギミア・ぶれいく』内で放送されたことがきっかけで人気が高まった。
その内容は主人公の喪黒福造が、心に隙間のある人物に近寄り、陥れるというもの。衝撃的な内容も多く、皮肉の効いた「ブラックジョーク」を描いた作品として現在も高い人気を誇る。本項では『笑ゥせぇるすまん』のなかで、トラウマになってしまいそうなほど喪黒に陥れられてしまった人々の話を見てみよう。
プラットホームの女(中公コミックスーリ1巻)
毎朝の通勤時、駅でマスクをした美人女性に一目惚れをした銀行員の直木純一。その様子を見た喪黒は、「女性との仲を取り持って差し上げる」と言って近づく。
直木は思い悩み、半ば強引に喪黒が仲を取り持つことに。一度は声をかけて逃げられたことから疑いを持つが、喪黒は彼女の素性などを明かし、「あなたに好意を持っているようです」「今夜あなたの部屋に行くそうです」と話す。
そして喪黒は「彼女はあまり幸せな身の上ではない」「あなたが好奇心や興味だけで会いたいなら止めていただきたい」と忠告する。直木はそれでも「何ヶ月もあの人見続けて来た」「彼女こそ僕のアコガレの女性」と譲らない。
その夜、女性は本当に直木の部屋を訪れ、「もし私が結婚してほしいと言ったら結婚してくれますか?」と話す。直木は「もちろんです」と応じるが、女は「あなたは私のことを何もしらない」と意味深な言葉を投げかける。
「それでも結婚する」と答えた直木に対し、女は服を脱ぎ下着姿で「身体に欠陥はありません」と話す。そしてマスクを取ると「この顔は整形手術で作った顔。でも失敗した」とつぶやき、顔を指で押すと顔にヒビが入るとともに皮膚が崩れ落ち、骸骨が現れる。そして「これでも愛してくれますか?」と求婚した。
喪黒はそんな様子に「あの程度の欠点なら彼の深い愛情で補えるでしょう」と言って笑った。外見の美しさだけで人に惚れてしまう愚かさを、身を持って体験させた喪黒。直木がその後どうしたのかは不明だ。
イージードライバー(中公コミックスーリ1巻)
子供とドライブをしたいと、44歳で運転免許取得のため自動車学校に通うが、教官に怒鳴られてばかりの浦成平一。喪黒は「個人レッスンをしたい」「授業料無料」「あなたは私に車の運転を習うべき」などと持ちかけ、強引にレッスンを始める。
喪黒は教習車にベンツやスバルなど高級車を次々と用意し、路上に出ていい気分にさせる。免許を持っていない浦成は、次々と車を壁にぶつけ、廃車にしてしまう。それでも喪黒は怒ることなく笑っていた。
その後、2人はバーでしこたま酒を飲むと、喪黒は「車を持ってくる」と言って、高級車を持ってくる。2人が乗り込むと、謎の男が「車を返せ」「あいつは教習所の……無免許の車泥棒だ」と追いかけてくる。喪黒が用意した車は、盗難車だったのだ。
浦成は構うことなく車を暴走させ、警察に追われる。助手席の喪黒は「スピードを出して」「赤信号だけど行っちまいましょう」などと、煽り続ける。
結局、暴走車は事故を起こして止まり、喪黒はその間に逃げる。浦成が警察に取り囲まれ、取り乱す様子を見て「これであの人は一通り運転をマスターした」「いくつ違反が重なったのか楽しみです」と笑った。
「子供とドライブがしたい」という思いから44歳で自動車学校に通う浦成を最初から陥れるつもりで近づいた喪黒。浦成を犯罪者にしたうえ、教習車も盗難車である可能性が高い。喪黒の恐ろしさが際立った話だった。