『【推しの子】』『女の園の星』『怪獣8号』……マンガ大賞2021を受賞するのは? ノミネート作を一挙解説

マンガ大賞2021ノミネート作品(50音順)

『【推しの子】』赤坂アカ・横槍メンゴ
『女の園の星』和山やま
『怪獣8号』松本直也
『カラオケ行こ! 』和山やま
『九龍ジェネリックロマンス』眉月じゅん
『SPY×FAMILY』遠藤達哉
『葬送のフリーレン』山田鐘人・アベツカサ
『チ。―地球の運動について―』魚豊
『水は海に向かって流れる』田島列島
『メタモルフォーゼの縁側』鶴谷香央理

 ネット時代の漫画人気の広がり方を示すようなラインナップだ。2020年に刊行された漫画で、友達に一番薦めたい作品を投票してもらう「マンガ大賞2021」の候補作品が出そろった。

 第6巻の初版部数が100万部を超えて話題になった遠藤達哉『SPY×FAMILY』(集英社)や、新連載作品ながら「週刊少年サンデー」誌上で大人気の山田鐘人原作・アベツカサ作画『葬送のフリーレン』(小学館)など10作品がノミネート。雑誌に掲載されるだけでなく、ネットでも作品が展開されることで面白さが広く知られ、評判となる作品が多く入った。

 前回は、油絵で東京藝大を目指すソフトヤンキーが主人公の山口つばさ『ブルーピリオド』(講談社)が受賞したマンガ大賞。今回は、95人の選考員が最大で5作品まで投票できる一次選考で挙げた216作品から、得票の多い10作品が二次選考へと駒を進めた。この中で、前回に続いてノミネートされたのが『SPY×FAMILY』だ。

『SPY×FAMILY』遠藤達哉 集英社

 東国に潜入した西国の男性スパイが、カムフラージュのために疑似家族を募ったが、そこで妻にしたのが西国でもトップクラスの殺し屋で、娘に迎えたのが心を読むことができる超能力者だった。夫婦はお互いの正体を知らず、娘だけが心を読んで知っていることで起こるドタバタが面白く、「少年ジャンプ+」(以下、J+)でのネット配信作品にも関わらず大人気になった。

 「J+」連載作品からは、篠原健太『彼方のアストラ』がマンガ大賞2019を受賞しており、ネット発でも面白ければ支持を得られることは証明されていた。2年連続のノミネートもそうした支持の現れで、あとは惜しくも2位となった前回の雪辱を果たし、栄えあるマンガ大賞の栄冠にたどり着けるかに注目が集まる。

『怪獣8号』松本直也 集英社

 もっとも、同じ「J+」から松本直也の『怪獣8号』(集英社)もノミネートされているから、簡単にはいかなさそう。怪獣が暴れ回る世界で、怪獣を倒す組織に入りたいと憧れながらも果たせなかった男が、年齢制限の緩和で再挑戦しようとするものの、自身が退治されるべき怪獣になってしまうという設定で話題になっている。

 第1巻が刊行されたばかりの早い段階でノミネートに至ったのは、それだけ話題が広がっているということ。同じく第1巻だけの段階で、マンガ大賞2010を獲得したヤマザキマリ『テルマエ・ロマエ』(KADOKAWA)の例もあり、新しい物好きで先物買いの傾向があるマンガ大賞を、一気に獲得となる可能性も低くはない。

 同じジャンプ系でも、雑誌の「週刊ヤングジャンプ」連載作品からのノミネートが赤坂アカ×横倉メンゴ『【推しの子】』(集英社)と、『恋は雨上がりのように』(小学館)がアニメ化や実写映画化された眉月じゅん『九龍ジェネリックロマンス』(集英社)だ。

『【推しの子】』赤坂アカ・横槍メンゴ 集英社

 『【推しの子】』は、異世界転生ならぬ推しアイドルの双子の息子へと転生してしまった元医者の男と、同じように熱烈なファンから同じアイドルの双子の娘に転生した少女がメインキャラ。第1巻では、幼い双子の視点からアイドル業界の大変さ、第2巻では、成長した双子が芸能界で苦闘する姿が描かれる。

『九龍ジェネリックロマンス』眉月じゅん 集英社

 『九龍ジェネリックロマンス』は、香港にかつて存在した九龍城砦によく似た舞台で、30代の女性と男性が繰り広げる、仕事や食事といった日常が淡々と描かれていく。「ヤンジャン」連載と言いながらこの作品は、アプリの「ヤンジャン!」やウエブサイト「となりのヤングジャンプ」でも発信されている。

 『【推しの子】』も同様に、「J+」や「となりのヤングジャンプ」で発信中だ。雑誌を手に取らずともネットからアクセスできることで、口コミで評判を知ってアクセスし、リアルタイムで追いかける人が多くいて、話題が広がっているようにも見える。

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