野性爆弾・くっきー!が考える「誠実さ」とは? 「真面目なだけの絵は、たぶん描いたことがない」

「誠実さ」を考えるきっかけに

――いろいろと挙げていただいて、ありがとうございます。物語のテーマは「誠実であるかどうか」だと思うのですが、くっきー!さんの思う誠実さってどんなものですか。

くっきー!:人に怒られないような振る舞いをするのがいちばんなんでしょうけど、人間って絶対、誰かに怒られるものじゃないですか。そういう時に、ちゃんと謝れてるかどうかは大事ですけどねぇ……誠実。……誠実か……ほんまになんなんでしょうね? ほんまに誠実な人なんて0人やと思いますし、誠実でありすぎるのもよくないと思うんですよ。行きすぎてるって、なんかだるいですやん? 例えば、『グラップラー刃牙』のジャック・ハンマーなんて、筋トレしすぎてカリガリになった時期もありましたし。まぁ、僕の中でも模索中っていうか、この本を読んで誠実ってなんだろうかって、各々考えてもらえたらいいですね。

――実写と絵の合成以外では、どんなところにこだわりましたか?

くっきー!:中身については思いつきで描きたいものを描いたところがあるんですけど、本の装丁はすげぇこだわりました。本ってバーコードが入りますやん? あれ、めっちゃだせぇな、嫌やなと思って、帯に入れるか、パッケージにしてシールで貼るかとかいろいろと付けない案を考えたんです。けど、どうしても付けなダメやってなったんで、カバーを取っ払った表紙にこだわろうということになりました。

――なるほど。カバーを外した表紙のほうが豪華な作りになっているのは、そういう意図だったんですね。

くっきー!:そうです。本来見せたかったのは、カバーを取った表紙。これやったら飾れますやん? 本とかCDでかっこいいヤツって飾りたくなりますやん? 最近、『そんなコト考えた事なかったクイズ! トリニクって何の肉!?』(ABCテレビ・テレビ朝日系)っていう番組でよく出題として出てるんですけど、洋書がバーっと並んでいるところで収録してるんですよ。それを見てかっこええなと思って、洋書っぽい本にしたかったんで満足のいく装丁になりました。あとね、ほんまはもっとぶっとい本にしたかったんです。ぶっといのってかっこいいじゃないですか。でも、あたしの絵を描く限界がこの厚みでした。

――ということは、絵の制作に結構時間がかかったということでしょうか。

くっきー!:それも締め切り間近から始める感じやったんです。1カ月くらい期間をもらいましたけど、結局、5日くらいで描いたんじゃないですかね? あたし、集中力がえぐいんですよ。1日に大体5枚……は言い過ぎですけど、3枚は確実に描いてました。今回、アクリル絵の具を使ったんですけど、すぐ乾いてまいよるんです。足りへんかったらかなわんから多めにビュビュって出すんですけど、絵具がもったいないから1枚、背景を塗ったら、同じ色を使うところ(ほかの場面)を塗るという流れ作業で描いていきましたね。

5年前と比べて変わった死への意識

――絵と実写を合成するという新しい試みで、苦労したのはどんなところですか?

くっきー!:実写を当てはめられるように描いていったんですけど、抱き抱えられる城を描くのがむずくて。青木さんが持っているような感じを出したかったので、角度をどうするか、すごく悩みながら描きました。バックドロップしているところは、青木さんの腰のあたりに台を置いて撮影したんです。

――5年前と今、ご自身の書く物語、描いた絵に自分なりの変化は感じますか?

くっきー!:個人的には変わってないと思います。画力が上がってるかどうかは、自分ではわからないですし……けど、軸は変わってないんじゃないですかね? 映画とかも全然観ぃひんし、インプットもあんまりしない。基本、よそさまのものにあんまり興味はないんですよ。もちろん何かに影響されて今があるとは思うんですけど、これを観たからこういう絵を描こうと思うことはないですね。ただ、5年前は、死を平気で描いてたところがあったんです。けど、今回はしっかりと子供目線にしたかったんで読み聞かせができるようにQRコードで読み聞かせしてる音声もつけましたし、お母さんが子供に読んであげる本やということを意識して死の表現はだいぶ抑えました。

――何かしら心境の変化があったんでしょうか。

くっきー!:若い頃より、死ぬということをリアルに考える歳になってきたのはあるんかなぁ。死ぬ、ということに違った意識を持つようになったんかもしれないですね。

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