ほうとう、ベーコン鍋、ポトフ……『美味しんぼ』心も体も温まるメニューで冬を乗り切ろう

 平均気温が10度を下回り、厳しい寒さが続くこの季節は鍋や麺類など、体が温まる料理をどうしても求めてしまうもの。

 料理漫画『美味しんぼ』には、冬を少しでも暖かく過ごすことができるような「あったかい料理」がたびたび登場している。今回はそんな「あったかい料理」を見てみたい。

ほうとう

 山梨県の郷土料理・ほうとうは、寒い冬を過ごすための心強い味方の一つ。『美味しんぼ』登場のきっかけは、東西新聞社社員旅行だった。富井副部長の友人・武田が経営する山梨県韮崎市のペンションを訪れた東西新聞社文化部が訪れたのだ。

 夕食に出てきたのは、本格的なフランス料理。赤貝とミル貝のサラダを見た山岡士郎は「山の中なのに海の貝のサラダか…」と、不満気な顔を浮かべる。武田は富井に「経営が思わしくない」と話しており、山岡はその要因を見抜いたようだった。

 翌日、山岡が過去に窮地を救ったうどん店「力屋」の主人と、山岡が「力屋」に紹介した大谷・大山・大馬の3人がペンションに姿を見せる。実は「力屋」の主人と武田の母「玄さん」は知り合いだったのだ。「力屋」の主人は3人を独立させるため、「うどん打ちの名人」と認める玄さんの奥義を学ばせるために来たのだという。

 栗田や田畑は3人の打ったうどんを食べたあと、玄さんの作ったものを食べる。すると「信じられないわ。おばあちゃんのうどんを天使のほっぺとすると、大谷さんたちのは、象のお尻だわ」と驚く。うどんを作った3人も、その味を確かめると「本当だ」と青ざめた。

 山岡は「ペンションに客を集める策を思いついた」と話し、玄さんに山梨名物のほうとうを作ってもらうよう頼む。そして「カツオと昆布でダシを取る」「サトイモ、ニンジン、カボチャ、コンニャク、油揚げ、シイタケ、ニンニクを適当に切って入れる」と、説明しながらお手伝い。

 出来上がったほうとうを東西新聞社のメンバーは大絶賛。武田は「こんなものが美味しいのか」と驚くが、山岡は「東京ではほうとうを食べさせる店は少ない。特にこのおばあちゃんの作るようなほうとうは絶対に食べられない」「山梨で一番美味しいのは山梨の食べ物」と力説。そして玄さんの懇願もあり、ペンションでほうとうを出すことになる。これが大当たりで、武田のペンションは、客がぐっと増えることになった。(10巻)

 山梨県下の店で出されるほうとうは専用の太麺を使うことが主流となっており、市販のうどんとは異なるようだが、『美味しんぼ』によると、うどんでも美味しく食べることができる様子。また、ネット通販でほうとう麺を購入することも可能だ。

 筆者は甲府市の専門店でほうとうを味わったことがあるが、カボチャの甘味を帯びた汁と麺の取り合わせが絶品だったのをよく覚えている。

ベーコン鍋

 一風変わったベーコン鍋という料理が『美味しんぼ』に登場したのは、栗田ゆう子の祖母・たま代を巡る事件だった。

 恋のライバルとして張り合う大柱と黒柏が、テーブルにじゃがいも、玉ねぎ、ベーコンを残し、行方不明になってしまう。栗田は中松警部に相談し、紹介を受けた所轄の井出刑事が捜査に乗り出した。

 そんななか、政治部の松川から「ベーコンの焼き方を教えてほしい」と頼まれた山岡。料理をしているうちに、行方不明の2人が黒柏の持つ軽井沢にいると確信し、急行する。 勘は的中し、2人を発見。両者は燻製作りが趣味で、たま代が嫌いなベーコンを協力して食べさせようと、研究していたのだ。

 後日栗田と山岡、そして中松警部・井出刑事と軽井沢を訪れたたま代に、大柱はベーコン鍋を振る舞う。それは鳥ガラ、牛の赤身肉などを煮て取ったスープで、ジャガイモや玉ネギを煮て、ジャガイモが煮えた後、薄切りのベーコンを入れ、そこに白菜を入れるというもの。

 そして頃合いを見て白菜とベーコンを小鉢に取り、黒胡椒をかけて食べる。これには普段味に厳しい山岡も「うまい」と叫ぶ。中松警部も「こんな美味しいベーコンの食べ方があるなんてなあ」とビックリ。大柱によると、鍋に入れておいたジャガイモが、ベーコンの旨味を吸って素晴らしく美味しくなるのだそう。(28巻)

 作中では大柱と黒柏が別荘でベーコンを手作りしており、良質なものを使うことが条件となっているが、ベーコンと白菜とジャガイモだけで鍋ができるとは驚きだ。良いベーコンを手に入れて試してみるのも、いいかもしれない。

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