『深夜食堂』の鍋焼きうどん、『きのう何食べた?』の常夜鍋……冬に食べたい、グルメ漫画の"あったか鍋料理"3選

 ご飯が美味しそうに描かれている漫画には、不思議な魅力がある。物語を彩り、登場人物を癒し、時には読み手の心を動かすこともある。食事のシーンや料理のメニューは、登場人物の心情を表すメタファーであったり、物語の移り変わりや経過を表現する重要な役割を担っていたりする。

 グルメ漫画は、何も料理だけが主役なというわけではない。ご飯を食べる、料理するという行為を通し、人の心を動かすヒューマンドラマだ。数多くあるグルメ漫画の中から、冬に食べたくなる”あったか鍋料理”を紹介する。

『深夜食堂』 第30夜、鍋焼きうどん

『深夜食堂』5巻

 営業時間は、深夜0時から朝の7時頃まで。メニューは豚汁定食のみ、食べたいものがあれば、店にある食材で作れるものなら作る、そんな一風変わった定食屋。「深夜食堂」と呼ばれるその店は、年齢も性別も境遇も違う、様々な常連達から愛されている。

 「鍋焼きうどん」は『深夜食堂』第3巻、第30夜に登場する。寒がりで冷え性の常連、ひとみが注文するメニューだ。

 時間は明け方4時、深夜食堂で鍋焼きうどんを注文したひとみは、大学受験で上京してきたという”あったかそう”な男子学生に食事をご馳走する。そのまま学生をお持ち帰りしたひとみは、毎年受験シーズンになると鍋焼きうどんを注文し、あったかそうな学生を待つようになった。

 数年経ち、子供が作れなくなってしまったひとみを励まそうと友人が誕生日会を企画。深夜食堂を貸し切った誕生日会に集まったのは、これまでひとみに”男にしてもらった”学生達だった。

 ひとみが「しょっぱすぎるよ」と涙を流しながら食べたマスターの特製鍋焼きうどんは、きっとひとみ自身も、そして読者の心も温めたに違いない。

『きのう何食べた?』#120、常夜鍋

『きのう何食べた?』15巻

 イケメン弁護士・筧史朗と乙女な美容師・矢吹賢二。恋人として同棲生活を送る2人の日常には、同性愛者が抱える事情や家族との関係、ご近所付き合いなどが描かれる。

 節約家の筧史朗が作る家庭料理、スーパーで出会ったご近所の佳代子さんが作るおもてなし料理、ゲイカップルの友人小日向さんが作る高級レシピなど、様々な食事が物語を彩る。「常夜鍋」が登場するのは、コミックス15巻。『きのう何食べた?』では調理シーンも細かく描かれ、その通りに調理すれば同じメニューを作ることができるほど。レシピ本顔負けの内容となっている。

 物語とレシピがきちんとリンクするよう作られており、「常夜鍋」では冒頭で出てくる職場の上司にもらったクッキングヒーターや、別の回で登場した万能ねぎゴマだれも登場する。

 「毎晩作っても苦にならない鍋」が名前の由来と言われるほど、少ない材料で手軽に作ることができ、他の鍋料理よりも早く煮える特徴がある常夜鍋。両親の老人ホーム見学に付き合うため、手の込んだ料理ができない日に史朗が提案したメニューだ。

 しっかり〆まで満喫した賢二と史朗の会話は、自然と老人ホームの話になっていく。そんな時、賢二の実家から「母が入院した」との電話がかかってくる。慌てて帰省した賢二は、母親から「パートナーを連れてきて欲しい」と言われ…?

 これからが予想される急な展開。史朗が言う「常夜鍋はケの日の料理」のセリフは、親への挨拶という、2人の”ハレの日”への布石なのかもしれない。

関連記事