ニートが戦闘指揮官に……「マージナル・オペレーション」は近未来のビジョンを描く ラノベ週間ランキング
他の芝村裕吏作品へと、手を進める糸口も掴めるシリーズでもある。作中で活躍する「まめたん」は、アラサー工学系女子が主人公の『富士学校まめたん研究分室』(ハヤカワ文庫JA)に誕生の経緯が書かれている。アラタらしき人物の将来は、ネット上に作られた架空の政府が、諸外国からの侵略に大活躍する『この空のまもり』(ハヤカワ文庫JA)にほのめかされる。その先に訪れるネット世界の発展や、世界的な国家間の対立がを「セルフ・クラフト・ワールド」(ハヤカワ文庫JA)全3巻では、人類の遙か遠い未来の姿としてが示される。
イトウさんという、アラタの周囲に出没して謀略に巻き込む女スパイらしきキャラの関係者が出てくる『猟犬の國』(KADOKAWA)もあってと、多方面に及ぶ芝村ワールドの結節点に、「マージナル・オペレーション」シリーズは位置している。完結目前の今、読み始めておきたい。
週間ランキングで1位は、顎木あくみ『わたしの幸せな結婚 三』(富士見L文庫)。大正に似た時代の日本で、継母や異母妹に虐げられて育った女性が、誰にも心を開かない男性に嫁いで始まる一種のシンデレラストーリーで、冷酷に見えて実は優しい夫に心ときめかせる読者が増えているのか、既刊の3冊が7位までに入った。異能の力で悪鬼を狩る展開に、『鬼滅の刃』からスライドもあるのか?
2位は、川原礫による世界的な人気シリーズの最新刊『ソードアート・オンライン24 ユナイタル・リングⅢ』(電撃文庫)。4位の伏見つかさ『俺の妹がこんなに可愛いわけがない(14) あやせif 下』や、14位の鎌池和馬『とある魔術の禁書目録 外典書庫(1)』、21位の支倉凍砂『新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙V』など、電撃レーベルで長く続くシリーズの新刊が並んでいて、「ソードアート・オンライン」ともどもライトノベルでの底堅い人気ぶりを見せた。
■タニグチリウイチ
愛知県生まれ、書評家・ライター。ライトノベルを中心に『SFマガジン』『ミステリマガジン』で書評を執筆、本の雑誌社『おすすめ文庫王国』でもライトノベルのベスト10を紹介。文庫解説では越谷オサム『いとみち』3部作をすべて担当。小学館の『漫画家本』シリーズに細野不二彦、一ノ関圭、小山ゆうらの作品評を執筆。2019年3月まで勤務していた新聞社ではアニメやゲームの記事を良く手がけ、退職後もアニメや映画の監督インタビュー、エンタメ系イベントのリポートなどを各所に執筆。