野﨑まど『タイタン』が問いかける“仕事”の意義 人類と人工知能がたどり着いた境地とは

 コイオスが調子を崩した理由として、やはり《仕事》の意味が問われる。《仕事》などしたことがなかった成果とは反対に、人類に貢献するという《仕事》しかしていなかったコイオスならではの現象。それは、スケールこそ違え人間にも当てはまることだ。自分で納得するだけでは追いつかない、他者からの評価を得るなり外部に影響を与えていることを実感するなりがあって、初めて《仕事》は納得できるものになる。そんな主張が伺える。

 つまりはやり甲斐。それが得られない《仕事》を《生活》の大部分にして過ごすより、毎日をやりたいことをやって過ごす方が良いに決まっている。対価という問題が横たわる以上は簡単には結論は出せないが、世界的に《仕事》への向き合い方が変わろうとしている状況下、人間にとって最良の道を考えるべきなのかもしれない。

 『タイタン』では、そうした《仕事》に対する悩みが、人工知能のレベルでも繰り広げられる。その解消のために繰り出されたプロジェクトが凄まじい。それこそ環太平洋レベルのプロジェクトの果てに来る超絶スケールでの逢瀬の果て、人類と人工知能がたどり着いた境地に震撼しよう。

■タニグチリウイチ
愛知県生まれ、書評家・ライター。ライトノベルを中心に『SFマガジン』『ミステリマガジン』で書評を執筆、本の雑誌社『おすすめ文庫王国』でもライトノベルのベスト10を紹介。文庫解説では越谷オサム『いとみち』3部作をすべて担当。小学館の『漫画家本』シリーズに細野不二彦、一ノ関圭、小山ゆうらの作品評を執筆。2019年3月まで勤務していた新聞社ではアニメやゲームの記事を良く手がけ、退職後もアニメや映画の監督インタビュー、エンタメ系イベントのリポートなどを各所に執筆。

■書籍情報
『タイタン』
著者:野崎まど
出版社:株式会社 講談社
価格:本体1,800円+税
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000326715

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