「魔法科高校の劣等生」「Fate」「このすば」……ラノベ週間ランキング、“スピンオフ作品”が上位席巻

本 ライトノベル 週間ランキング(2020年1月6日~2020年1月12日・楽天ブックス調べ)
1位『魔法科高校の劣等生 司波達也暗殺計画3(電撃文庫)』佐島勤、石田可奈 KADOKAWA
2位『Fate/strange Fake6(電撃文庫)』成田良悟、森井しづき KADOKAWA
3位『薬屋のひとりごと9(ヒーロー文庫)』主婦の友社
4位『ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編1(MF文庫J)』衣笠彰梧、トモセシュンサク KADOKAWA
5位『ストライク・ザ・ブラッド21 十二眷獣と血の従者たち(電撃文庫)』三雲岳斗、マニャ子 KADOKAWA
6位『薬屋のひとりごと9 ドラマCD付き限定特装版(ヒーロー文庫)』日向夏、しのとうこ 主婦の友社
7位『ソードアート・オンライン23 ユナイタル・リングII(電撃文庫)』川原礫、abec KADOKAWA
8位『くま クマ 熊 ベアー 14(PASH!ブックス)』くまなの、029 主婦と生活社
9位『懐妊初夜~一途な社長は求愛の手を緩めない~(ベリーズ文庫)』兎山もなか スターツ出版
10位『この素晴らしい世界に祝福を! よりみち!(角川スニーカー文庫)』暁なつめ、三嶋くろね KADOKAWA
ランキング:https://books.rakuten.co.jp/ranking/weekly/001017/#!/1/

 第92回アカデミー賞で、トッド・フィリップ監督の『ジョーカー』が作品賞や監督賞など11部門にノミネートされた。底辺で喘ぐ中年男が抑圧を受け、嘲笑を浴びた果てにぶち切れるという、現代の格差社会をえぐるような内容だったことが共感を得てヒットしたことは確か。一方で、DCが誇るキャラクター、バットマンの仇敵として高い人気と知名度を誇るジョーカーについて描かれた映画だということが、観客を劇場へと導いた。

 人気シリーズのキャラクターに関してもっと知りたいという渇望と、知っているキャラクターの話なら絶対に面白いに違いないという安心感が、ハリウッドの映画界でキャラクターものの拡大を促している。ライトノベルという、キャラクターが核になる小説でも事情は同じ。人気シリーズの外伝だとかスピンオフだとかシェアードワールドといった作品が相次ぎ刊行されては、ランキングの上位に顔を出す。

 佐島勤による「魔法科高校の劣等生 司波達也暗殺計画」のシリーズも、そうしたキャラクターや世界観をより深く、そして広く楽しむことができるエクステンデット・ユニバース的作品だ。最新刊となる『魔法科高校の劣等生 司波達也暗殺計画③』は予約段階からランキングの1位を走り続け、発売直後もその位置をキープした。

 本編「魔法科高校の劣等生」シリーズの主人公で、圧倒的な強さを誇る魔法師の司波達也を狙いつつ果たせなかった暗殺者の榛有希が、相棒の鰐塚単馬ともども達也の陣営に引き入れられては、彼を狙う敵を排除していくストーリー。最新刊では本編の「スティープルチェース編」に描かれた、九校戦を舞台にした新兵器実験を達也が阻止したエピソードで、失脚した軍人の一派が達也を狙うが、そこに有希ともうひとり、謎の男が現れ軍人たちを屠っていく。

 達也自身の出番はなく、彼の圧倒的な強さにカタルシスを得るような展開もないが、物語を通して決して弱くはないところを見せてくれる有希や謎の男が、絶対にかなわない相手と足下にひれ伏すような存在として、達也のことを感じられそう。本編では妹の深雪を深く想い、彼女の願いを絶対に聞き届けようとする“優しさ”が漂う司波達也の、真の恐ろしさ、冷酷さを感じさせるシリーズだ。

 2位の『Fate/strange Fake⑥』もタイトルを見れば一目瞭然、TYAPE-MOONの<Fateシリーズ>を“拡張”した作品だ。『デュラララ!!』という人気シリーズを出している成田良悟が、エイプリルフールの冗談として発表した企画が本当のものとなって2015年にスタート。舞台を日本の冬木市からアメリカのスノーフィールド市へと移し、呼び出されたサーヴァントたちが偽りの聖杯戦争を繰り広げる。

 デビュー作の『バッカーノ!』や『デュラララ!!』など、群像劇を得意とする成田が描いているだけあって、多数登場するサーヴァントやマスターといったキャラクターたちに用意された見せ場はたっぷり。ゲームアプリ『Fate/Grand Order』の爆発的なヒットもあって、21世紀最大級のコンテンツとなった<Fateシリーズ>の一角を担いつつ、元からの成田良悟ファンも引きつけ広がる拡張世界の行き着く先は? 

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