心地よい暮らしの達人・後藤由紀子の“愛しい日々の読書” 第1回:八千草薫『まあまあふうふう。』

 静岡沼津市の雑貨店halを経営しながら執筆活動を続け、先日16冊目となる著作を発表した後藤由紀子さん。この連載では、そんな後藤さんが日々の読書のなかで「愛しく感じた本」を、みなさんに紹介していきたいと思います。(編集部)

八千草薫の人生論

八千草薫『まあまあふうふう。』/主婦と生活社 刊

  八千草薫さんが、平成から令和に変わり夏の気配がする頃、「米寿を迎え、偉そうなことは言えませんが少しでもお伝えすることがあるかもしれない。自分を見つめ返す良い機会」だと、この本『まあまあふうふう。』を出版されました。 

 大胆・潔い・不器用とご自身を分析し、慣れない現場で、ガチガチに緊張していたことに気が付いたご主人から、その緊張をほぐすために「いい加減に生きなさい」と何度も助言されたそうです。それからは、良い加減に肩の力を入れすぎず、楽にほどよく生きることができるようになったとあります。中国の言葉で、いい加減を意味する「馬馬虎虎(まあまあふうふう)」という言葉が、本の題名になっています。

   この本を読み進めていくうちに、八千草さんの朗読を聞いているような気分になりました。普段は著者の声を知らないため、そんなことはないのですが、映画の台詞やテレビで話されている声をよく聞いていたので、不思議とそんな感覚になったのかもしれません。

   印象的だったのは、最初から最後までご主人の話をたくさん書かれていることです。ご主人とは、とてもウマが合ったとのこと。好きなもの、面白いと思うことの価値観が合い、ご主人と一緒のときはとてもリラックスできたとのこと。映画監督で19歳も年上、天真爛漫な話好き、そしておおらかでありながらユーモアがある人柄のご主人。そのご主人のお仕事のこと、お酒を飲んで帰ってきたときの話、山登りの話、散歩の話など、身近でユーモアにあふれる、幸せなエピソードを紹介されています。

   結婚50周年の年にご主人は亡くなられて、落ち込みつつも「しょうがないな」と、ふとやってくる寂しさを否定することなく、うまく寄り添ってきたそうです。ご自宅は華美ではなく、ゆったりとしていて風通しの良い印象のお宅。「足るを知る」ともいうべき、自分なりに気に入って居心地の良い暮らしぶり。ご自宅のページで好きな話がありました。

「役に立たないから毎日豊かに」「ものは捨てない」というお話がとても興味深かったです。お洋服を長年愛用し、アクセサリーもほんの少しなのに「何だかわからないけれど面白いもの」がたくさんあり、それが「生活を豊かにする」。「自分の心がウキウキするものに出会いたい」とのくだりに、「八千草さん同感です」と、うなずきながら読みました。

関連記事