G-FREAK FACTORY、結成30周年を前に解き放つ“パンクの核心” 初のアコースティック盤『灯-TOMOSHIBI』クロスレビュー

G-FREAK FACTORY『灯』クロスレビュー

 2027年に結成30周年を迎えるG-FREAK FACTORYが、初のアコースティックアルバム『灯-TOMOSHIBI』を9月16日にリリースする。代表曲「ダディ・ダーリン」から始まり、初期から近年の楽曲に至るまで、計8曲が新たなアレンジで生まれ変わった。地元・群馬に根を張るパンクバンドとしての強固なアティテュードは変わらないまま、楽曲そのものの魅力をさらに深掘ったことで、新たな層へ広がり得る作品になったとも言えるだろう。今作について、音楽ライターの石井恵梨子、天野史彬の2氏によるクロスレビューを掲載する。(編集部)

G-FREAK FACTORY Acoustic Album "灯-TOMOSHIBI" Teaser
G-FREAK FACTORY 2026.09.16 release Acoustic Album 『灯 - TOMOSHIBI』初回特典DVD "山人音楽祭2025" Teaser

怒りだけではないロックの醍醐味を解放したグッドソング集(石井恵梨子)

 G-FREAK FACTORYがアコースティックアルバムを出すというニュースは、違和感なく私の腑に落ちてきた。まさか、意外すぎる、とは思わない。むしろ今の茂木洋晃(Vo)にはぴったりなんじゃないかとすら思う。

 若々しさや麗しさを売りにすることなく、向上心の強さで前に出ていくわけでもない。ボサボサ頭のままニヤッと笑い「俺らは最強のローカルだから」と語る茂木は、もともと渋いジジイに憧れてきたところがあるように思う。たとえるならSION。ボロボロの格好で何かをボソボソ歌っていて、よく聴けば、強烈に心を抉る、涙腺を崩壊させるようなことを口にしているブルースマン。もちろんSIONに憧れるシンガーは星の数だし、憧れたところで同じになれるわけではない。みんな、自分がやれることをやるしかないのだ。

 G-FREAK FACTORYの“やること”は、最初はレゲエとパンクの融合、レベルミュージックとしての言葉を磨き上げること、途中からは地元・群馬を背負う活動になっていく。2012年に始まった『GUNMA ROCK FESTIVAL』、途中から『山人音楽祭』へと名前を変えた主催フェスがそれにあたり、地域社会に向ける眼差しは、いつしか安中市の全児童に防災ヘルメットを贈る活動になったり、桐生信用金庫からのオファーで創立100周年記念の事業イメージソングに起用されるなど、確実に地元に受け入れられ、豊かな実を結んできた。

 コロナ禍以降、茂木がソロ活動を始めたこともあり、近年はより優しい歌詞、土着の血を感じさせる歌謡メロディも増えていく。見た目も尖ったパンクスというより、群馬に根を張って生きるおっさんそのものになってきた。書けば書くほど必然に思えてくる。お年寄りから子供まで、身近なところに辛そうな顔をした人がいないか気を配りながら、しっぽりアコギで歌い出すなら今がおあつらえ向きではないか。

 ニューアルバム『灯-TOMOSHIBI』は既発の8曲をアコースティックアレンジしたものだ。始まりが10年前の名曲「ダディ・ダーリン」であるのは納得。もともと鍵盤やコーラスが彩りを添えるフォーキーな曲だったが、新録バージョンはまさに骨だけ。削ぎ落としたアレンジが強く深く突き刺さる茂木の言葉を浮き彫りにしている。また〈平和を願う気持ち〉について自問する後半のハイライトは、新バージョンでは静かな朗読となり、いよいよ少なくなった戦争体験者の語りを聞いているかのような凄みを醸し出す。どこまでも枯れた風情で、ボソボソと静かに、涙腺を崩壊させる真実を歌う。本作は、渋いジジイの理想にまた一歩近づいた企画盤と言えるのかもしれない。

 と、思っていたが、レゲエの原曲がジャズアレンジになった2曲目「島生民」から印象は変わってくる。跳ねるウッドベースとシャッフルビートは、当たり前だがバンドらしい躍動感に満ちたもの。単なる渋さアピールというよりは、演奏で会話を続けるメンバーの活気のほうが強く伝わってくる。

 代表曲のひとつ「らしくあれと」にしても、疾走するギターリフが柔らかなアコースティックに変わることで、隙間をどんなふうにキーボードが埋めているのか、アンサンブルの組み立て方がよくわかる仕上がりに。このバンドはドラム/ベース/ギター/ボーカルの4人編成だが、今作はキーボード奏者が重要なアシストをする曲が多数。4人ないし5人でどのように足し引きを考えるか。音色のひとつずつをどんな塩梅で決めていくか。爆音を鳴らして成立する世界ではないから、意外なくらい細やかなメンバーのパス回しが見えてくる。これもまた「演奏で会話を続ける」「バンドらしい躍動感」ということだ。

 ボサノヴァ風アレンジが光る「FLARE」、さらに踊れるピアノロックに生まれ変わったラストの「GOOD OLD SHINY DAYS」で印象は決定的になる。どちらも2019年のシングル収録曲。このあとコロナが直撃し、G-FREAK FACTORYに限らず、あらゆる表現者が何をすべきか戸惑う時期に入るわけだが、不安と真正面から向き合ってきた彼らは、今ようやく希望を実感しているのではないか。「FLARE」も「GOOD OLD SHINY DAYS」も、原曲よりはっきりと明るく、さらには透明感が増している。どうせなら笑い合って音楽を鳴らそう。だって俺たちは一人ではできないバンドをやっているのだから。そんな気持ちがまずは前提だろう。言葉の鋭さに痺れるばかりだった彼らの音を聴きながら、楽しそうだな、仲間に入れてよと言いたくなるのは、おそらく初めてのことだ。

 そういうわけで、すみません、自分でも笑ってしまうくらい間違っていた。これはSIONみたいになりたい人の激渋ブルース作品ではまったくない。ただしっぽり爪弾くだけのアコギアルバムでもなかった。社会に対する怒りや疑問はもちろん消えないが、だからといって楽しさを否定するのも違うのだ。『灯-TOMOSHIBI』は、長く続いたバンドが今だから解放できた音楽讃歌。ただシンプルなグッドソング集である。(石井恵梨子)

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