Kroi、第7部『ジョジョ』OP主題歌「Spin」の制作背景を明かす 荒野と映画愛、密度の高い音像の探求

アニメ『スティール・ボール・ラン ジョジョの奇妙な冒険』(Netflix/以下、『スティール・ボール・ラン』)のオープニング主題歌「SPIN」を手がけたKroi。西部劇を思わせるギターやコーラス、高密度のファンクグルーヴ、そして次々に景色を変えるアレンジには、作品世界への共感と、彼らが以前から探求してきた音楽性が重なっている。砂漠や荒野を創作のテーマの一つとしてきた彼らは、今回、その風景にどんな音や物語を見出したのか。
映画やカルチャーへの愛情がにじむ制作のエピソードから、4年ぶりの『FUJI ROCK FESTIVAL'26』で得た手応え、現在の創作モードまで、じっくりと語ってもらった。(黒田隆憲)
※益田英知(Dr)は、体調不良のため欠席。
『ジョジョ』との出会いと、探求してきた荒野の原風景
――まずは、『スティール・ボール・ラン』の主題歌のお話を受けたときの心境を聞かせてください。
関将典(以下、関):これまでも素敵なアニメ作品に関わらせていただきましたけど、『ジョジョ』はすでに第6部までアニメ化されていて、昔から根強いファンがいるシリーズですよね。世界中にファンがいる印象もあって、これまでとはまた違った嬉しさがありました。すごい作品からオファーをいただけたんだな、と。
長谷部悠生(以下、長谷部):僕はもともと『ジョジョ』が大好きで、なかでも第7部の『スティール・ボール・ラン』が一番好きなんです。だからアニメ化が決まったときも、普通にファンとして楽しみにしていたんですよ。まさか自分たちが主題歌を担当するとは思わず、口を開けてアニメの公開を待っていたら、ある日メンバーとスタッフさんとのLINEグループにこの作品の資料が送られてきて。見た瞬間、ちょっとパニックになっちゃいました(笑)。シンプルに、めちゃめちゃびっくりしましたね。
内田怜央(以下、内田):僕もびっくりしました。学生時代の友達にも、ほかのアーティストにも、人生の中で『ジョジョ』をすごく大事にしている人が多いんです。その世界にKroiが曲を添えられることが嬉しかったし、お話が決まった時点から気合いが入っていました。原作やアニメの表現はもちろん、劇伴やオープニングも、ずっと斬新で攻めている作品だと思っていたので、自分たちもその“攻め”に加担できたらな、と。
千葉大樹(以下、千葉):僕は「確かに相性がよさそうだな」と思いました。『ジョジョ』って、クリエイションにこだわりながら、一筋縄ではいかない変化球も投げるじゃないですか。僕らもタイアップごとにアプローチを変えて、作品に寄り添いながらも、これまでとは違うことをしようとしてきた。そういう姿勢が、制作サイドに伝わったのかなと思いました。
それに怜央は、数年前から折に触れて「砂漠、砂漠」と言いながら曲を書いていたんですよ。エスニックな音階を使ったり、音でそういう風景を想起させたりすることを、ずっとやってきたので。今回のために狙っていたわけではないけど、自分たちの関心と作品の世界観が重なって、いいタイミングで声をかけていただけた感覚がありますね。
――皆さん、それぞれ『ジョジョ』との接点はあったのでしょうか。
関:僕はお話をいただいてから、アニメの第1部から第6部まで一気に観ました。めちゃくちゃ面白くて。そこで初めて、このシリーズの中で自分たちが曲をやれるんだという実感が湧きました。
千葉:僕も今回初めて触れました。ものすごい世界だなと思いましたね。
――長谷部さんは、どんなところがお好きですか?
関:この話でインタビューが終わっちゃうかもしれない(笑)。
長谷部:まず、荒木先生の圧倒的な画力ですね。あとは、決まった型にはまっていないところ。バトル漫画でもあり、ヒューマンドラマもあるんですけど、既存のフォーマットには収まらない。部によって物語のテーマが違って、新しい部が始まるたびに、そのシチュエーションに引き込まれるんです。その入り口から、ほかの作品とは違う面白さがありますね。
――内田さんは、曲を作るうえで『スティール・ボール・ラン』の世界をどう受け止めましたか?
内田:自分たちが研究していたテーマに、すごくはまっていると思いました。以前は曲を書くと、自然と自分の住んでいる東京とか、都会が舞台になっていたんです。それをあえて砂漠や荒野にしたらどうなるんだろう、と試していた時期があって。その頃から、アラビアンなテイストの作品や、砂漠が舞台の作品に関わる機会が増えてきた。自分たちが表現したいものが、アニメの制作をされる方々にも伝わっているのかなと。
今回は、その中でも西部劇的な荒野ですよね。長谷部はカウボーイのファッションなどにも興味があるし、僕もそういう映画が大好きなのでこの世界には入り込めそうだな、と安心して臨めました。原作を読み終わったときには、「これは絶対楽しいぞ」と思いましたね。
――そもそも、砂漠や荒野を舞台に曲を書こうと思ったきっかけは?
内田:街の風景では、自分の中で書くことがなくなってきていたんだと思います。ちょうど、ティモシー・シャラメが出ている『DUNE/デューン 砂の惑星』の1作目が公開された頃、歌詞が書けなさすぎて、ショッピングモールをうろうろしていたんですよ。映画館の前を通って、「1本観て帰ったらリフレッシュになるかな」と、ふらっと『DUNE』を観たら、映像美がすごくて。「この風景の中で起こる物語を書いてみたい」と思ったんです。あれは実在するどこかの砂漠ではなく、ファンタジーの世界じゃないですか。だったら、砂地の風景を自分の頭の中で作り上げてもいいんじゃないか、とヒントをもらった。そこからほかの映画も観ながら、自分の中のイメージを形にしていきました。

――西部劇というところでは、アレハンドロ・ホドロフスキー監督の『エル・トポ』などはいかがですか?
内田:大好きです。カルト映画が好きなんですよ。『エル・トポ』のような、オリジナリティのある西部劇にはすごく安心するというか。忠実に描いた作品も好きなんですけど、たとえばカレーがインドからイギリスを経由して、日本に来たらカレーライスになっていました、みたいな(笑)。ちなみに『エル・トポ』はDVDも持っていて、「SPIN」を作っているときにも参考に観た気がします。
――長谷部さんのウエスタンへの関心は、内田さんとはまた別のところから?
長谷部:原点は『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3』です。あの西部開拓時代の世界観が、昔から好きだったんですよ。その後、怜央にクエンティン・タランティーノ監督の『ジャンゴ 繋がれざる者』を勧めてもらって、すごくはまりました。ファッションにはもう少し前から興味があって。70年代のファンクが好きなので、フレアパンツから入って、ウエスタンの服も知っていたんですけど。
内田:もともと好きだったんだよね。多分はまるだろうなと思って『ジャンゴ』を見せたら、「これだ!」って。ジョン・フルシアンテもカウボーイシャツを着ていたしね。
長谷部:そうそう。スティーヴィー・レイ・ヴォーンもそうですし、自分の音楽的なルーツにある人たちが好きなものでもあったんですよね。

――関さんも、そうした世界観を演奏に取り入れてきた感覚はありますか?
関:僕自身は涼しいところが好きなんですけど(笑)。怜央が先頭に立って砂漠をテーマに研究してくれて、そのノウハウがアニメの曲作りにも活きてきたと思います。鳥山明先生原作の『SAND LAND: THE SERIES』(NHK総合)のOPテーマ「Water Carrier」や、エスニックな空気感のある『ぶっちぎり?!』(テレビ東京系)のOPテーマ「Sesame」もそうですね。タイアップ以外でも、「Drippin' Desert」や「Amber」など、エスニックな要素のある曲を作ってきましたし。
デモを受け取って楽曲にしていく僕らも、それぞれ研究する必要があると感じていました。実際に取り組んでみると、音のつながりだけでなく、音色ひとつでもその世界観を表現できる面白さに気づくんです。そうした蓄積は、ライブや今後のレコーディングにも活きてくると思いますね。



















