HYがHYを信じること、26年目の自信の在処 17枚目のフルアルバム『MIND+』をメンバー全員で語り合う

「なんで生まれてきたんだろう?」ってずっと考えながら生きてきた(仲宗根)

――それが、名嘉さんがボーカルを務める「サナギ」に表れている。
名嘉:はい。「サナギ」は「挑戦は早めにしとけ」という母のひとことがきっかけにあります。今日がいちばん若いし、あとから挑戦しようとしてもダメだよ、と。「サナギ」は僕とイズだけでパフォーマンスするんですけど、そのあとに僕が立ったままヒデがドラムを叩き始めて始まる、HIPHOPの楽曲も作り始めてるんですよ。
――まったく別の新曲?
名嘉:そうですね。
仲宗根:信介はもういないってこと?
許田信介(Ba/以下、許田):いるわ(笑)!
名嘉:レコーディングはヒデにやってほしいですし。
新里:面白そう。
名嘉:バンドのなかでめちゃくちゃ遊んでる40代みたいなのは、オンリーワンじゃないかなって。HYにしかできないことを30周年目に向けてやっている。これが今回の僕のなかのテーマでした。
――確認になりますが、名嘉さんがフルでボーカルを担当するのは、これが初めてですよね?
名嘉:初めてですね。僕はスティックを持って26年やってるので、それがマイクに変わるのは大変ですね。
――もちろん「隆福丸」のように、新里さんとともに一緒に歌うパターンというのは初期からあったと思います。
名嘉:そうですね。今だからこそできることもあるんですよね。それは26年ずっとふたりが歌い続けてきたからこそ、自分がそういうふうに入っても、ヒデが言ったようにHYらしくなるのは自分たちの強みでもあるし、柔らかさでもあるから。歌うってこと、まだ自分の母にも言ってないんですよ(笑)(取材は8月末)。ファンのみなさんにもツアーを含めて楽しみにしててほしいなと思います。
――この名嘉さんの挑戦を、ほかのみなさんはどのように感じていますか?
新里:めっちゃいいですね。今がいちばん若いという話も、もう今何か探してますよ。
名嘉:あなた、ソロツアー終わったばっかでしょ?
新里:刺激になりますよね。
仲宗根:少年なんだよ(笑)。
新里:刺激にもなるし、また何か自分ができること、チャレンジできることを僕らは探していくでしょうね。

――許田さんはこれから挑戦していきたいことはありますか?
許田:それを今見つけていこうかなと思いまして。
仲宗根:26年、ないんですよ、だから27年目に向けて何かひとつ。
許田:何かひとつね、爪痕を残せたらなと思いますけど。
新里:でも、体を鍛えてるところからの繋がりで、西川(貴教)さんと「やってるね」っていう話になって。
――先日、『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)で共演されてましたからね。
仲宗根:そこのふたりで歌出すとかやってほしいです。
新里:俺も横でちょっと踊りたい(笑)。
――期待しています(笑)。「心海」は映画『時給三〇〇円の死神』の主題歌になっています。自分も試写で映画を拝見しましたが、決して報われるわけではないけれど、幸せを見つけて前を向いて歩いていくというメッセージは、「すべてを受け入れ前向きに進んでいきたい」というアルバムのコンセプトとも通ずるように感じました。
仲宗根:今回は映像を観させてもらってから、楽曲を書くことになったんです。私にとってはあの映画になっているのが自分の世界という感じで、悩まずに10分ぐらいで書くことができました。自分のことを書いたというか。私は小さい頃から厳しい生活環境のなかで、ずっと思ってたんですよね。「なんで生きてるんだろう?」とか「なんで生まれてきたんだろう?」「私って何なんだろう?」っていうのをずっと考えながら生きてきたので、今回の映画を観ていなかったとしても、いつかはこういう歌を書いていたんだろうなとも思います。
この曲を作ったあとに、ファンの方々から日々もらう手紙のなかに、「私って何で生まれてきたかわからない」とか「こういう社会のなかで私だけ置いていかれて、愛情がもらえてない」とか、同じようなことが書かれていて。それを読んだ時に、この歌を作ってよかったなと思えました。社会のなかにはもちろんプラス思考の人もいるし、マイナス思考だからこそ見える景色とか、そういった生活環境だったからこそ見えたものもあって。そのすべてが悲しくてツラいわけではなくて、そこから学びに活かして自分の人生をプラスに変えていくことをしないと、ずっと「私ってかわいそうな人間だ」と思ってしまうと思うんです。「なんで生まれてきたんだろう?」とずっと思い続けながら死んでいくほうが、私はイヤだなと思ったんですよね。だから、そう思っているみんなにも、私自身にも言い聞かせるために生きていることへの問いかけだったりとか、生きていることで幸せに思いたいよねということを詰め込んだ感じですね。
名嘉:いい距離感で、さすがイズの書いたバラードだなと思います。この時、みんながほかのタイアップの曲でいっぱいいっぱいで、バラードだったらイズが得意なのもあって任せてよかったです。レコーディングもゴスペルが入って、大サビのところにグルーヴも出ている。今までのバラードだったら、ピアノとストリングからきれいに入っていくというような、決まった流れがあったんですよね。でも、今回は今までにないグルーヴが出てるというか、そこら辺のかき回し方がすごく好きでした。
――全編にわたってのゴスペルが曲としての厚みを生んでいますよね。
仲宗根:この曲をひとりの人間とした時に、このツラい経験をした子を旅立たせるとなった時には賛美歌だなと思ったんです。
名嘉:男性のゴスペルというのもいいよね、太くて。それも新しい感じでした。
――今までの楽曲だと、たとえば「NAO」にもゴスペルが入っていたと思うんですけど、そことの違いはありましたか?
仲宗根:「NAO」がゴスペルを入れた一発目の曲でした。私がゴスペルを入れる曲には、必ず意味があるんです。「ゴスペルが好きだから」という理由で入れたのは「NAO」だけ。その次が「時をこえ」。アメリカと沖縄――私は三線、太鼓、エイサーの沖縄民謡だけで成立させるのではなくて、そこにゴスペルという外国の血、音楽を入れることこそが本当の平和だと思っています。当時は批判もあったんですよ。でも、そこに私のなかでの強い意思があって。「愛しあって許しあって」は、仕事場で友人になった方が紛争地帯に行って写真を撮るカメラマンだったんです。その方は亡くなってしまったんですが、現地の状況がニュースで毎日流れてくるんです。亡くなったことを知ったのが、ちょうどツアー中で。すごく悲しかったんですけど、「紛争地帯に行くわけだから、いつかは死んでしまう」「だから、俺を殺した人を恨まないでくれ」ということを、生きている時によく聞いていたんです。その方を思った歌として、ゴスペルにいろんな方をお誘いして、そこに亡くなった方の娘さんも入ってもらったんです。今回の「心海」は、魂を昇華するためにゴスペルを入れています。ゴスペルが入っている曲の意味も、より深く知って思ってくれたら嬉しいです。




















