山下達郎、安室奈美恵、坂本龍一……時を超える“サンプリング” 令和の最新系 Def Class×工藤静香が巻き起こす風

ラジオから流れる重厚なヒップホップビートと、どこか聴き覚えのあるメロディライン。新進気鋭のダンスボーカルグループ・Def Classが発表した「嵐の素顔(Def Class Remix)」が今、音楽シーンで大きな旋風を巻き起こしている。
工藤静香「嵐の素顔」をサンプリングした本作は、radiko週間楽曲ランキングで2位(6月21日付)を獲得したほか、USEN HIT J-POPランキングで18位(6月24日付)、Billboard JAPAN「Hot 100」で40位を記録(6月17日付)。さらに、SHAZAM ディスカバリーチャートでは見事1位(6月24日付)に輝いた。原曲を歌った工藤本人もSNSで本作のダンスに挑戦するなど、世代を超えた広がりを見せている。
「嵐の素顔(Def Class Remix)」の魅力は、単なる懐メロの再利用ではない。原曲が持つ印象的なフレーズをサンプリングしながら、それを現代的なサウンドのなかへと溶け込ませ、スキルフルなラップとダンスパフォーマンスを掛け合わせることで、完全に“今鳴るべき音”として再生させている。1980年代終わりの歌謡曲シーンを席巻した名曲が、令和の若き才能たちによって、全く新しい姿で覚醒したのだ。
J-POPに息づく“サンプリング”の歴史
そもそも音楽における“サンプリング”とは、過去の楽曲の音源の一部を引用し、まったく新しい楽曲へ組み込む手法だ。過去のメロディやフレーズ、リズムを切り取り、別の文脈へ置くことで、原曲を知る人には“過去の記憶”を呼び起こし、知らない人には“新鮮な体験”として届ける。同じ音源でありながら、組み合わせるビートや言葉、時代背景によって異なる意味を持ち始める。とりわけヒップホップカルチャーのなかで発展してきたこの技法は、日本のポップミュージックにおいても確かな存在感を発揮してきた。
象徴的なのが、KICK THE CAN CREW「クリスマス・イブ Rap」だ。山下達郎の名曲「クリスマス・イブ」という強力な記憶を背負った楽曲を、ラップミュージックとして再構築。その意外な組み合わせは、原曲の知名度をただ利用したわけではなく、日本語ラップがJ-POP、特に国民的なヒットソングとも自然に交差できることを示す試みでもあった。
また、安室奈美恵の「SWEET 19 BLUES」を大胆にサンプリングした加藤ミリヤの「19 Memories」は、同世代のティーンエイジャーが抱える葛藤や不安を等身大の言葉でアップデートしてみせた。さらに、宇多田ヒカルがUtada名義で発表した「Merry Christmas Mr. Lawrence - FYI」は、坂本龍一による映画音楽の名曲「戦場のメリークリスマス」をグローバル仕様のR&Bポップスへと華麗に昇華。近年では、米津玄師が「KICK BACK」においてモーニング娘。「そうだ! We're ALIVE」のフレーズをサンプリングしたことも記憶に新しい。
こうして振り返ると、サンプリングの面白さは、過去の名曲を現代風にアレンジするという単純なものではなく、原曲が持つ歴史や聴き手の記憶を背負いながら、新しい世代の表現者がそこへ自分たちの言葉や感性でアップデートしていくという点にあるように思う。音楽は時間を超えて受け渡され、その過程で新たな意味を獲得する。サンプリングとは、言ってみれば音楽による“世代間の対話”なのだ。
サンプリングの最新系「嵐の素顔(Def Class Remix)」が提示する“令和の音”
こうした先人たちの系譜を受け継ぎながら、令和の最新系として鮮烈な輝きを放っているのが、Def Classの「嵐の素顔(Def Class Remix)」である。
1989年にリリースされた原曲「嵐の素顔」は、一聴してそれと分かる哀愁漂うメロディと、顔の横で手をL字に動かす独特のダンスで一世を風靡した。
Def Classは、この名曲を最先端のヒップホップサウンドに乗せて歌う。太くうねるベースラインと、タイトで洗練されたリズムトラックの上に、スキルフルなラップを展開。原曲のメロディが持つドラマチックな力強さを活かしつつも、Def Classの強みであるグルーヴ感あふれるボーカルとライミングが見事に融合し、完全に“令和の音”として提示している。
特筆すべきは、彼らの真骨頂であるダンスパフォーマンスだ。MVやSNS動画で披露されるダイナミックかつ繊細なフォーメーションダンスは、L字ダンスへのオマージュを感じさせつつ、原曲の持つスリリングな世界観をより一層引き立てている。振付を担当したJESSICAのアプローチも相まって、ストリートダンスの高度な技術と、気高い美意識が詰まった現代的な表現へとブラッシュアップされている。
ここで重要なのは、Def Classが「嵐の素顔」という巨大な既存曲のイメージに飲み込まれていないことだろう。サンプリングを用いた楽曲では、原曲の知名度や印象的なフレーズが強すぎるあまり、“原曲ありき”の企画にとどまってしまうことも少なくない。しかし本作では、誰もが知るメロディを入口としながらも、その先にはDef Classならではのヒップホップ的解釈と、メンバーそれぞれの表現力がしっかりと存在している。過去の名曲を借りるのではなく、自分たちのフィルターを通してしっかりと新たな作品へと生まれ変わらせている。その大胆さとセンスこそが、本作を単なるリミックスの枠に収まらない一曲にしているのだ。
工藤静香は本曲について、「1989年に生まれた『嵐の素顔』が、時を超えてDef Classの皆さんに歌っていただき、とても嬉しく思っています。時代が変わっても、良い音楽は良い音楽!とあらためて実感させていただきました」とコメントしているように、原曲を生み出した本人が新しい解釈を歓迎し、さらにはダンスにも挑戦。この関係性そのものが、サンプリングという“世代間の対話”の理想的なあり方を示しているように思える。
一昔前のヒットソングが、現代的なビートとダンスをまとって2026年のリスナーへ届く。原曲を知る世代にとっては懐かしさと驚きを、初めて触れる世代にとっては新鮮な発見をもたらした本作。過去の音楽を現在進行形のカルチャーへと接続できるこのダイナミズムこそ、サンプリングの醍醐味である。
工藤本人もコメントした通り、「時代が変わっても、良い音楽は良い音楽」だ。そして、その“良い音楽”を次の時代へと継承し、新たな息吹を与えるのは、アーティストたちの才能と熱量である。9月14日には、最新EP『Mellow & Tuff』のリリースが控えているDef Class。彼らが作り出す“今の音”に注目したい。
■リリース情報
4th Digital Single『嵐の素顔(Def Class Remix)』
配信中
配信リンク:https://defclass.lnk.to/ArashiNoSugao

3rd Digital EP『Mellow & Tuff』
配信日:2026年9月14日(月)
<収録内容>
01. 君を忘れない
02. G.T.A. ~Get The Adrenaline~
03. ACTION
04. MELODY
■公演情報
『FREEDOM〜ストリートからの逆襲〜』
日時:2026年9月23日(水・祝)OPEN 16:00 / START 17:00
会場:KAWASAKI CLUB CITTA’
チケット:https://mt.tstar.jp/cart/events/58977
■関連リンク
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