Masato Hayashi、『RAPSTAR』を通して気づいた「ラップとは何か?」 苦悩の日々、充実の今、シーンへの危機感を語る

Masato Hayashi、『RAPSTAR』で得たもの

「俺はリスナーを信者やファンじゃなくて、仲間だと思っている」

Masato Hayashi

――タイミングも完璧だったんですね。ほかには『RAPSTAR 2025』で印象的だった出来事はありましたか?

Masato Hayashi:「SELECTION CYPHER」に上がる前の「MIC TRYOUT」は大阪で受けたんです。当時所属していた16 Recordsの社長に個人的に交通費を借りて会場まで行ったんですけど、控室がめちゃくちゃピリついていて。「俺ここ無理だわ」と思って、自分の番ギリギリまで外にいました。戻ったら前の前の人がオートチューンのキーを外したまま最後までやって、自信満々に「ありがとうございました」って降りていって。「あ、こいつ終わったな」って思ったのをいちばん覚えてます(笑)。

――冷静だったんですね(笑)。『RAPSTAR 2025』で準優勝したことは自信に繋がりましたか? 反応も大きかったと思います。

Masato Hayashi:決勝まで行って、アリーナでパフォーマンスしたことは、かなり自信になりました。なったんですけど、現実味はなくて。友達からの反応はあるし、SNSでも反応を見たりしているんですけど、道端で話しかけられたり、現実での反応ってまだそんなにないんですよね。ただ、ライブする会場行くと、「え、人めっちゃいる」みたいな、そういうのが徐々に自信にはなっていっていますね。そのなかでもいちばん大きいのは3月にやったゲリラライブかもしれないです。あれが大きな自信になったんですよね。たまたまなんですけど、以前お世話になった渋谷警察署の前でできて。もう引き寄せてるとしか思えない(笑)。

Masato Hayashi 渋谷ゲリラライブに密着|熱狂の9分間の裏側に迫る|HIPHOP MAGAZINE -THE HOPE-

――盛り上がりすぎて10分経たずで終了になったゲリラライブですね。天気も良くないなかでの野外でのライブでした。

Masato Hayashi:やる前は「どうせ人集まんねえだろ」ってナイーブになって、前日にマネージャーと大喧嘩したくらいだったんですよ(笑)。

――そうだったんですね。『RAPSTAR 2025』のあとは最初に話していたマーケティング/プロモーションの部分も含め、協力者がたくさんできたり、変化した面も多かったのではないでしょうか?

Masato Hayashi:サポートしてくれる人が増えたし、自分でやらなきゃいけないタスクがかなり減ったんで、その分作品に集中できていますね。あと俺じゃ出てこないアイデアを出してくれたりするのもめちゃくちゃ助かります。やっぱり餅は餅屋というか、俺の場合、アーティストはアーティストでいた方がいいと思うんです。ビジネスが得意で、自分のブランディングをしていくのが好きでとかだったらいいんですけど、俺は全然好きじゃないんですよ。正確に言うと、ビジネスは好きなんですけど、自分を商品にするビジネスが全然好きじゃなくて。アートはアートであってほしいんですよね。だから作品を作るときも、売れるかどうか考えることもあるけど、あまり考えたくないんです。自分が作品と向き合って、もう楽しめなくなったら終わりだと思ってるんで。それ以外の部分を少しでも任せられるようになったのはめっちゃありがたい。

Masato Hayashi

――逆に変わっていないように感じるのは、MasatoさんのSNSの使い方です。ずっと等身大というか、ラッパーとしては珍しい在り方ですよね。

Masato Hayashi:わかんないんですよね、SNS(笑)。デジタルネイティブじゃない、狭間の世代なんで。今の若い子たちは、もっとスタイリッシュでスマートですよね。だけど別に俺がそれ合わせる必要もないと思うし、本来SNSって、自分の家の庭で喋ってるくらいの感覚なんですよ。そこにみんなが勝手に聞きに来て、「それ違うだろ」って壁の向こうから言ってくる(笑)。もちろん言っていいことと悪いことはあるけど、必要以上に取り繕う気はないですね。

――自分も含め、MasatoさんのSNSのファンは多いと思います。

Masato Hayashi:だといいんですけど、その分アンチもめっちゃ多いです(笑)。アンチには同業者も多いんじゃないかと予想してますけどね。自分も昔は売れているラッパーに妬みはあったし、もちろんアンチコメントを書き込んだりはしていないけど、気持ちはわかるんで。

――『RAPSTAR 2025』以降だと「暴走東京」リリースパーティーも話題になりましたね。「暴走東京」のフラッグへの書き込みなど来場者も参加できる企画もありました。

Masato Hayashi:本当にやりたいことが多すぎて大変でしたね。あのときもゲリラライブに近い感じで、Tシャツを配りながら街を歩いたんです。めちゃくちゃたくさんの人が来てくれたのと、道行く外国人とかが「何が起こっているんだ?」って感じで、絶対俺のことを知らないのにサインを求められたりして。

Masato Hayashi

――近い距離でファンと触れ合うと感覚が変わったりもしますか?

Masato Hayashi:変わりますね。これまで俺が言ってきたことと矛盾してる面もあるんですけど、言葉に責任を持たないとなって思ったりします。言葉ひとつでリスナーを誘導できちゃう面もあると思うんです。俺が悪いことやネガティブなことを言ったら、聴いている人も影響を受けるんだろうなって。俺はリスナーを信者やファンじゃなくて、仲間だと思っているんで、だからこそ同じ目線でありたいし、言葉にもマジで気をつけようってあらためて思いましたね。

――同じ目線に立つ、ということですね。

Masato Hayashi:社会で生きていくって大変だと思うんです。我慢することも多いし、息苦しさも感じる。そうやって必死に生きている人たちと自分も変わらないじゃないですか。だから「同じだぜ」「わかるよ」って、そういう目線でありたいんですよね。

――それは曲にも表れていますよね。「暴走東京」にも近しいメッセージを感じました。この曲にはどのような想いを込めましたか?

Masato Hayashi:本当にシンプルで、「振り切れろ」ってことです。社会で生きていくうえで我慢することは大事だと思うんですよ。大事だけど、我慢することに慣れちゃいけない。よく言われる言葉ですけど、人生一回だから、自分がこうしたい、ああしたいって思うことがあったらやろうぜ、「こう思われるんじゃないか?」みたいな考えから脱却しようぜっていう曲なんですよね。やれんだろ、暴走しちまえよって。

――ある意味、リスナーへの応援歌ですよね。

Masato Hayashi:そうそう。だからコメントで「ライブを意識しすぎててちょっと嫌だ」とか書かれてますけど、そんな小さいところにフォーカスしてないんです。もちろんライブのことも考えないワケではないけど、もっと人生単位で〈やれんだろ かませ/ビビんなよ 騒げ〉って言ってるんです。なんかコメントに言い返してるみたいで嫌なんですけど(笑)。

Masato Hayashi - 暴走東京 [Official Music Video]

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