ツミキ 寄稿文|NOMELON NOLEMON 結成5周年と『EYE』ーー岡本太郎から得た“眼”のヒント、矛盾を肯定するポップス

「私から見た世界は本当に酷いこと、酷いものばかりです。自分自身がそこで非力な存在であることも含めて」――NOMELON NOLEMONが結成5周年の節目に放った3rdアルバム『EYE』は、そんな葛藤の先で「音楽で世界を美しく塗り替えたい」と解を求めたコンポーザー・ツミキの切実な祈りの結晶だ。
今回リアルサウンドでは、ツミキによる特別手記を掲載。岡本太郎の芸術思想に学び、割り切れない感情や二律背反をそのまま抱きしめる“矛盾を肯定するポップス”。ツミキ自身が自らの言葉で『EYE』の真意と楽曲背景、そして5年目の現在地点を解き明かすセルフライナーノーツをお届けする。(8月20日寄稿/編集部)
NOMELON NOLEMONが鳴らすポップス

ツミキです。
さて、この度NOMELON NOLEMONはお陰様で5周年を迎えました。いつもありがとうございます。
そんな5年の歴史の中から、今年2月にリリースした『EYE』という最新アルバムについて少しお話ししようと思います。
自分の作った音楽をわざわざ言葉にするのはなんだか野暮ったいなあという気持ちもややありますが、折角戴いた機会ですので、NOMELON NOLEMONの現在地点を明確にするべく、今一度自分のために書き起こしてみたいと思います。
皆さんにとって興味深いものになっていれば幸いです。よろしくお願いします。
『EYE』について。

このアルバムは自身3枚目となる、NOMELON NOLEMONの現在を映すアルバムです。
そして同時に、何が見えているのか、誰が自分を見ているのか、この先で何が見たいのか、何を見落とさずにいたいのかを問い続けるための、ひとつのまなざしを描いています。
“アイ”と読むこのタイトルには色々な意味があります。
まず、収録されている殆どの楽曲の歌詞に“アイ”という言葉を使っています。愛、藍、i、などの様々な表記で。その数ある“アイ”の中で、何故この“EYE”というワードをタイトルに選んだのか。
理由の一つとして回文ということもあるのですが(1st AL『POP』、2nd AL『ルール』に続いて)、一番の理由は「眼に映るもの、そして映らないもの」というテーマで作品を作りたかった、というところです。
作品づくりにおいて、私が大変影響を受けているアーティストの一人に岡本太郎という人がいます。“太陽の塔”という有名な作品がありますが、私はそのすぐそばで生まれ育ちました。
幼少期から今に至るまで、彼は沢山の刺激を与えてくれる存在です。
彼は生涯“眼”を描き続けていました。眼球です。
晩年の作品には、殆ど眼球のみで構成されている作品も存在するぐらい、彼の制作スタイルにおいて“眼”に執着し、表現の軸を置いていました。そのどれもが、整頓された綺麗な瞳ではなく、なんというか、どこか呪いのような、夜の洞窟のような、光のない深い黒で塗り潰された眼球。岡本太郎の描いた眼は、もれなく世界を挑発するように、呪うように睨んでいます。
そんな岡本太郎は、こんな言葉を残しています。
「眼は存在が宇宙と合体する穴だ。」
私はこの言葉が凄く好きです。というか、なんだかしっくりきます。単に目の前の物体を認識するためだけの情報処理ツールではなくて、この世界と自分が繋がるための、空っぽの“穴”。岡本太郎の描く眼球は、まさに“穴”です。自分自身と眼に映る世界との摩擦によって起こる感情の爆発みたいなものが、その“穴”を介して伝わってきました。
そこからヒントを得て、自分もそんな世界との繋がりを描きたい、表現したい、という思いで制作したのが、今作『EYE』です。
またその他に、彼は“対極主義”という芸術思想を提唱して活動していました。彼の作品には、抽象と具象が、静と動が、無機物と有機物が、調和をとらず引き裂かれた形で、猛烈な不協和音を発しながら一つの画面に共存しています。
私の音楽人生においてこのスタンスには物凄く影響を受けていて、今作にもそれが存分に現れているかと思います。
我々NOMELON NOLEMONは、矛盾を肯定します。従来のポップミュージックとは、しばしば感情をわかりやすい形に整えてしまうものです。聴き手にとって受け取りやすい形にデフォルメすることはどの分野においても必要なことではあるものの、デザイン性が行き過ぎるきらいがあります。それはどこか排他的で、寂しい感じがします。
感情や感覚など、実際の目に映らないものは、そこまで単純明快ではないと考えています。明るさには暗さが必要で、孤独にも快楽があり、ポジティブの裏側に諦念が潜んでいる。
その逆だって同じです。
NOMELON NOLEMONがこれまで鳴らしてきた音楽は、そういった矛盾を排除しないポップスです。すべてを抱えて表現したい。そんな歪な二律背反を成立させることを今回も意識し制作しました。今作もまた誰一人として置いていかないものを作りたかったのです。

そしてこのアルバムには、大きなモチーフとして“宇宙”を取り入れて表現しています。宇宙には、光と闇が共存しています。これが冒頭の、タイトル『EYE』の意味についてでお話しした、「眼に映るもの、そして映らないもの」というテーマに繋がります。
しかしこのアルバムでは、
光は「眼に映らないもの」(感情や音楽、など)
闇は「眼に映るもの」(今居る世界、など)
と、「見えるもの」と「見えないもの」を反転させて描いたケースがほとんどです。
そうすることによって、表現に新しい奥行きが生まれるのでは、という解釈で制作に反映させました。是非また歌詞を読んで、この解釈を以て皆さんの景観が更に広がることを期待します。
ではここで、アルバムの為に制作した楽曲をピックアップして、私自身が思う作品に対するイメージを書き起こしてみようと思います。皆さんの持つイメージから、更に楽曲の世界観が広がれば幸いです。
発売時には既にリリースしていた収録曲に関しては、過去の記事を参照していただければと思います。























