SKRYU、なぜ“笑顔”を追い求めるのか? メジャーアルバム『ザ・ライト』とパワーじゃない勝ち方

SKRYU、なぜ“笑顔”を追い求める?

今回はほんま赤裸々。まさにマッパのアルバムになったと思います

SKRYU - イッツ・ア・ニューデイ (feat. MONKEY MAJIK)【Music Video】

――アルバムにはもう一組のゲストが。それが、MONKEY MAJIKさんで。「イッツ・ア・ニューデイ feat. (MONKEY MAJIK)」はすごく前向きな内容の曲に仕上がっていますけど、これはどんな経緯で?

SKRYU:僕の青春ど真ん中のアーティスト、MONKEY MAJIK。僕は築100年くらいの実家で暮らしてたんですけど、当時は8人家族で、同居してる叔父がいたんです。その叔父が朝のアラームに使っていたのがMONKEY MAJIKの「空はまるで」やったんですよ。僕は10歳くらいで、それを聞いて「めちゃくちゃかっこいいな」と思っていた。で、自分でも音楽を聴きだすようになってから「あの曲なんだっけ?」と調べたら、それが「空はまるで」だった。「思い出の曲なんです」と言ってMONKEY MAJIKさんにオファーしたんです。アラームって、普通は夢から醒めるアラームじゃないですか。でも、そうやって、実際に曲ができるって事実を目の当たりにした時に「これは夢が広がるアラームだ」と思って。

――〈無我夢中で毎朝聴いてたメロディ/飛び出して Realに目で見て触れたら〉という歌詞は実話ですか!

SKRYU:歌詞の最初の部分はファンタジーなんですけど、実話というか、自分のマインドを元に作った曲です。それで、メンバーの方が「空はまるで」のサンプリングも入れちゃおうよ、と提案してくれて。〈この空はずっと待ってた/まるで君はあの日のまま/青く澄んでいつまでも〉って。苦節、というほどでもないですけど、ここまでやってきて、うつむいて走った時もあれば来た道を戻ってみたこともある。でも、この青い空だけは俺も待ってたぞっていう思いがあって。同じビートの上でMONKEY MAJIKとやれているっていうのが、すごくエモーショナルでしたね。

――涙が出そうになっちゃいました。個人的にはtofubeatsさんが手掛けている「ゼクシィ・ガール」も気になりました。セクシー・ガール、と思いきや“ゼクシィ・ガール”……。

SKRYU:ビートもらった時に、もうこれはゼクシィ・ガールにして結婚の歌にしたろって思ったんですよ。ニュージャックスウィング調のビートだし、絶対にラブソングや、と。この曲だけちょっと浮いてるんです(笑)。でも、リスナーの方に伝えておきたいのは、別に今は結婚の目星がついた方はいないし、結婚したいという思いもないので。

――そんな状態でよく書けましたね。

SKRYU:オールフィクションというか、こういう結婚生活だったらいいかもなっていうイメージを元にして書きました。“てへぺろウエディングソング”みたいな。

――プロポーズとか結婚式向きの、すごく実用的な歌ですよね。

SKRYU:たしかに。ゼクシィに営業とか行きたいですね。ゼクシィ・ガール巡業。

――かたや、「イレブン・バック」のリリックには〈ハイピッチで走ってるのに/進まない歌詞迫り来る納期/ガラ空きのゴール寸前で頭抱える/最後のパンチラインが「なんか弱ぇー」〉というラッパーならではの“産みの苦しみ”が赤裸々に歌われていて。こうした“苦”の部分って、あまり表には出てこないじゃないですか。こういうプロとしての苦しみやプレッシャーって、昔よりも今の方が重く感じることはありますか?

SKRYU:曲を出す頻度や量も、過去を更新してきてるんですよね。産みの苦しみって、まさにそうで。今回のアルバムは本当にそうでしたね。制作なんて、メインどころができていたら、あとは妥協したっていいんですよ。でも、腐ってもアーティストですから自分が納得いく表現を突き詰めたい。でも、納期は迫ってきてる。これって、めっちゃ心を圧迫してくるんです。制作に対する熱意はめちゃくちゃあるのに、時間がなくて「うー」って苦しくなる。でも、自分で選んだ道だし、幸せなことだと思いますけどね。だからもう、ずっと書いていようかなと思って。

――ちょっとは休んでほしいと思いますけどね。

SKRYU:「イレブン・バック」もそうだし、「ウルフ・マン」って曲にも生みの苦しみをめちゃくちゃ書いています。アルバムのタイトルは「ザ・ライト」と言いつつ、闇の部分もかなり書きましたね。

――でも、そういう部分があるからこそ、SKRYUというアーティストの厚みが増すというか。より多面的にとらえることができますよね。「マッパ・ノ・オウサマ」みたいな曲が映えるというか。

SKRYU:そうなんですよ。〈煌びやかに見えたスターダムは/泥まみれで這いずる難関〉なんて今言っちゃダメだし、僕だって言いたくないし、みんな聴きたくないと思うんですよ。だけどなんか、「うん、これがリアルだしな」と。白鳥みたいに優雅に泳いでいても、実は下でバタ足してるみたいな。やっぱり僕がやってるのはHIPHOPだし、「ここまでニヤけながら鼻歌スキップでスターダムまで上がって来て楽勝でした」って見せるかっこよさもいいと思うんですけど、実際、これだけ苦労しているってところを出さないと曲数も埋まらなくて。だから、今回はほんま赤裸々。まさにマッパのアルバムになったと思います。

迷うこと、めちゃくちゃあります。「いや、こんなんラッパーぽくないやろ」みたいな

SKRYU(撮影=是永日和)

SKRYU(撮影=是永日和)

――あらためて伺いたいのですが、長らくインディーのソロラッパーとして活躍してきて、2026年からメジャーレーベルに籍を置く、ということはSKRYUさんにとってどれくらい大きな決断でしたか?

SKRYU:大きな決断ではあったんですけど、インディーズのまま幕張メッセまでやってきたという事実と、自分としてはやっぱりお茶の間に出て行きたいという意志もあって。HIPHOP界の唯一無二アイランドの住人として、ちょっと枠をはみ出していかないといけない、っていう思いの上でメジャーデビューを決めましたね。実際、お茶の間にアタックできるようなチャンスを頂けているし、変わってきてはいます。逆に、ありがたいことに変わっていないことも多いというか、下ネタ含め表現の幅とかも特段制限されるわけでもないし。

――いろんなラッパーの方がいるけど、SKRYUさんのキャリアって結構特殊ですよね。戦略的な部分もあるかもしれないけど、無理せず自分らしさを貫いていて、かつスケールアップしている。

SKRYU:だと思うんですよね。だからこそ、たぶん前例がないというか。「こうしなきゃいけない」っていう思いも最近はあんまりないし、足跡が着いていない道を自分で切り開くっていう方向に踏ん切りがついたという感じはあります。アウトプットに対して、あんまり人の目を気にしなくなったというか。

――自分のなかで、決断や選択を迫られて悩む時って、どう解決していますか?

SKRYU:迷うこと、めちゃくちゃありますね。今でもあるのが「いや、こんなんラッパーぽくないやろ」みたいな。「この動きってさすがにどうなん?」みたいな。でも同時に、「俺は売れないといけない」っていうプレッシャーを抱えていて。だから、自分の表現は絶対に譲らないですけど、「こういう動きしたらシャバいな」って思われるような動きに関しては、最終的にぶちかませば全部OKだと思っているので。だから、悩んだことに対しても「やる」っていう選択肢を取っているかもですね。

――やっぱりラッパーの方達って、「これってダサいんじゃないか」とか、外からどうやって見られるのか、というところは人一倍気にかけているという印象があります。イベントに出るにしても「他に誰が出るんですか」みたいな、“並び”をめっちゃめっちゃ気にする。

SKRYU:HIPHOPって、”今、誰と誰がフィーチャリングした“とか”誰と一緒にいるか“ってことがめちゃくちゃ大事だと思うし、僕もそこにいるんだったら多少は気にしているとは思うんですけど、その反面、そういったブランディングにはハマっちゃいけないというか。口を酸っぱくして言うんですけど、自分のことを知らない人にも知ってもらう必要があるとき は、土俵外の人、つまり、よりHIPHOPっぽくない場所との関わりがいちばん大事、っていうことに最近気づいてしまったんですよ。僕っぽくない人と絡めば絡むほど、マジでいいと思ってます。

――今のSKRYUさんが言うと、すごく説得力があります。

SKRYU:そうした人たちが、SKRYUを通じて「あいつ、めっちゃおもろいラッパーだな。めちゃくちゃいい音楽じゃねえかよ」って思わせることができたら、と。今の時期は、多分その積み重ねなんですよね。メジャーデビューした時に覚悟を決めたので、こういう考えに至ったのかもしれません。ポップスで成功しているアーティストとかバンドのところで1ヴァース蹴りに行く、みたいなのが、僕がいちばん見たい未来ですね。

――先ほども話に出たサーヤさんとMONKEY MAJIKさんの話題に戻っちゃうんですけど、『ザ・ライト』にはいわゆるラッパーの客演はいませんよね。サーヤさんはもちろん普段からラップをしている方ではありますけど。それって結構意識的でしたか?

SKRYU:当初はいろいろと構想もあったんですけど、結局、ほかのラッパーの子って先ほども言った通り“見られ方”を気にしてるじゃないですか。これは非常にネガティブにとらえられちゃうかもしれないけど、今の僕とフィーチャリングで組むべきじゃない人も多いと思っていて。こっちから「一緒に曲をやりたい」と言っても「いや」って言われちゃうだろうなとか。その気持ちも、わかるし。僕はやっぱり、しっかり数字をつけて、誰がなんと言おうとすごいアーティスト……それはめっちゃポップスかもしれないし、すごい売れセンかもしれないけど、そうしたアーティストと一緒に結果を出して「すっげえよな」ってなった時に、HIPHOPに戻ってきたいんです。で、大好きなラッパーたちが恥ずかしくないくらいの、それぐらいの地位とクオリティを身につけてやりたいな、と思ってるんです。偉そうですけど。

――その時を待っています。

SKRYU:やっぱりラッパーがめちゃくちゃ好きなんで。

――ちなみに、メジャーデビューを経て学んだことや新たに気づいたこととかってありますか?

SKRYU:ストイックじゃないと死ぬっていう。

――なるほど。

SKRYU:ただそれだけのことなんですけど。たとえば、今回みたいに1カ月で11曲入りのアルバムを作るっていうのは、まあ、完成したからマル印なんですけど、常に曲を作ってストックしておかないと、こうやって焦ることになるんですよね。メジャーだとタイアップの案件も少なくないわけですけど、そうした案件に対して「こういう曲を作ってください」というオファーがある。でも、その時点でイチから作って「結局、採用になりませんでした」ってことになると、めっちゃヘコむじゃないですか。でも、それ用のストックをいっぱい作っておけば、もし採用されなかったとしても他に手持ちの曲がたくさんあるからダメージはないんですよ。そういうことを聞いて、「じゃあ俺は1週間に何曲作ればいいんだろう?」って思ったら怖くなってきて。でも、ここでやらないと一流にはなれねえんだろうなって。一緒に動いてくれているワーナーミュージックのスタッフの方に「このスケジュールこなしてる人、いるんですか?これってやばいと思うんですけど」って聞いたら「想像以上に、ずっと作ってる人もいる」と。「酒とか飲まないんですか?」って聞いたら「飲まない人もいる」って。ほかのアーティストの方は、「今リード曲としてリリースしてもいいよ」という曲が100曲くらいあるみたいなレベルで。

――恐ろしい。

SKRYU:と言われたら、もうやるしかないなと。産みの苦しみを歌うのはここまでにしたいです。

――やがて溢れるように歌詞が出てきて「曲なんて、苦しまなくても生まれるわ」と。

SKRYU:そうですね。「誰か俺の才能を止めてくれ」って言いたいんですけど。次のアルバムは、そういう歌詞で締めくくりたいですね。「才能を止めてよ」って。

SKRYU(撮影=是永日和)

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