NOMELON NOLEMON/Aooo ツミキが明かすサウンドメイクの現在地 Wタイアップの裏側、主題歌の全貌に迫る

「ユラリユレル」に落とし込んだキーワード、〈想像と現実〉の葛藤
ーーなるほど。では、具体的な楽曲の話に移りますと、まずノーメロによるオープニングテーマ「ユラリユレル」ですが、非常に疾走感のあるテンポ感でありながら、遊び心のあるサウンドも印象的です。サウンド面で最初に思い描いていた景色はどのようなものでしたか?
ツミキ:サーカスというモチーフから連想したのは、やっぱりビッグバンドやブラスバンドのような、きらびやかで華やかな世界観でした。ただ、あまりにもそっちの解釈に寄せすぎてしまうと、J-POPの枠組みから外れていく可能性もあるなと感じたんです。そこで、4つ打ちのダンスミュージックの中に、ブラスバンドやビッグバンドのエッセンスを取り入れたらどうなるかを追求していきました。アプローチとしてのこだわりは、なるべく電子楽器を使わないこと。ギターやピアノといった生楽器のアンサンブルだけで、エレクトロっぽい質感を表現していくというイメージで描きました。
ーー「ユラリユレル」というタイトルは空中ブランコを連想させますが、ここにはどんな意味が?
ツミキ:最初は空中ブランコを題材にしたイメージからスタートしたのですが、アニメのストーリーを見ていく中で、人と何かを成し遂げていく過程では、必ず色々な“葛藤”が生まれるなと思ったんです。エンディングテーマの「DAYS!」が少し引いた視点の曲だとすれば、「ユラリユレル」はより一人称視点。みんなで進むというよりは、自分との戦いや心の揺らぎを描いています。意見が揺れたり、自分が本当はどこにいるのか悩んだりする“心の揺れ”と“空中ブランコ”を、掛け言葉として扱いたくてこのワードに行き着きました。
ーーその“葛藤”は、冒頭の〈想像と現実 どちらが世界の真中?〉というフレーズに象徴されていますよね。この曲の核になるメッセージだと感じました。
ツミキ:まさにそこですね。夢を追い求める作中のひまわりサーカス団のメンバーもそうですし、自分自身もまったく同じで、みんな理想と現実のバランスの中で、自分に何ができるか、何を残せるかを考えて日々生きていると思うんです。想像することで夢に近づくことはできるけれど、同時に現実では何かを失っていたりする。逆に、現実を見つめてシャキッと生きようとすれば、今度は夢からどんどん遠のいていくような気がしてしまう。その〈想像と現実〉の間で、自分は一体どこにいるんだろうという問いを書きたかったんです。今は匿名性が高くなって、自分という存在がどんどん見えづらくなっている時代だと思うので、自分をもう一度見つめ直す入り口になるような歌詞にしたいなと。
ーーツミキさんご自身も、その〈想像と現実〉の狭間で揺れることはありますか?
ツミキ:ありますね。めちゃくちゃリアリストな自分と、ものすごく夢見がちな自分がいて、その間でバランスが取れなくなって辻褄が合わなくなっちゃう瞬間はあります。そういう時は、もう振り切って自分の嘘に騙されてみたり、逆に現実を見つめ直すために自分自身と徹底的にディベートして、自分に説教したり(笑)。時と場合によって、なんとかバランスを取っています。

ーー以前取材させていただいた際、ノーメロに関しては、自分がプロデュースしているという感覚はなく、ボーカルのみきまりあさんと正面衝突したときに生まれる化学反応が持ち味だとおっしゃっていたのが印象的でした。今回、制作にあたってまりあさんとはどんなやり取りをしましたか?
ツミキ:今回に関しては、アニメの資料を共有したうえで、基本的には「好きに歌ってもらおう」というスタンスが大きかったですね。なので、ほぼディレクションもなしでスムーズに進みました。一応レコーディングには立ち会いましたけど、本当に順調でしたね。
ーーまりあさんの方から制作中にどんどん「横槍が飛んでくる」なんて話もありましたが。
ツミキ:今年の2月にリリースしたアルバム『EYE』の制作を経て、お互いが「同じ方向を向いて制作を進めている」と感じる場面が多くなったんです。どちらかが意見を押し通すのではなく、相乗効果でずっとシナジーを保ったまま形にできた。ノーメロを結成して5~6年と続けてきたからこそ、お互いの考え方の変化も含めて、信頼関係が生まれてきたなという感覚があります。最近はぶつかることもなくなって、切磋琢磨というよりは二人三脚という形になってきていると思います。

「DAYS!」で描いた日常の温かさ、渋谷系サウンドへの挑戦
ーーまさに2人の関係も“グロウアップ”していると。一方で、Aoooによるエンディングテーマ「DAYS!」については、日常にある幸せやあらゆる人の人生を肯定するような、非常にポジティブな印象を受けました。
ツミキ:Aoooというバンドもまた、メンバー全員が別々の思想や強い個性を持っていながら、お互いをリスペクトし合って「Aoooという集合体はどうあるべきか」をディスカッションして進んできたチームなんです。個と個が正面衝突するノーメロに対して、Aoooは団体でひとつの塊として一瞬の芸術を表現する。そのスタンスが、サーカスという団体芸と近いなと思うんです。だからこそ、少し目線を引いた三人称視点で、ドキュメンタリー的にアプローチするのが合うんじゃないかと思って。ひとつの小さな種から始まったことが、どんどん世界に広がっていくような感覚は、今のAoooがリアルタイムで感じている現象でもあるので、そのリアリティも乗せられるなと。
ーーこの曲も冒頭の〈教科書に書いていないいつものしあわせ〉というフレーズが非常に印象的です。日常の何気ないワンシーンを褒め称えるような素敵な歌ですが、このテーマに行き着いたきっかけは?
ツミキ:監督と打ち合わせをさせていただいた時に、エンディングの映像イメージとして「みんなで食卓を囲んでご飯を食べるシーン」を想定していると伺ったんです。その話から、化粧をしてキラキラ輝いているショーのイメージではなく、その裏側にある人間の温かさや体温、日常の幸せを楽曲に落とし込みたいなと強く思いました。僕自身、日々生きる中での大きな幸せ、たとえば宝くじが当たるとかよりも、目の前にあるありふれた日常こそが一番かけがえのない幸せなんじゃないか、と常々思っているので、そこをしっかりと描きたかったんです。
ーーサウンド面に関してはどんなことを考えていましたか?
ツミキ:これはサブクエスト的な裏テーマでもあったのですが、Aoooの楽曲でずっと渋谷系的なアプローチにトライしたいと思っていたんです。ピチカート·ファイヴやフリッパーズ·ギターのような世界観ですね。もともと、ボーカルの石野(理子)がカラオケで小沢健二さんの曲を歌っているのを聴いて、「こういうルーツも通っているんだ」と知ったのがきっかけです。僕自身も小山田圭吾さんの音楽がすごく好きですし、アニメソングの歴史において渋谷系は切り離せない重要な存在だと個人的には思っています。
ーーアキシブ系なんてジャンルもありましたよね。
ツミキ:そうですそうです。なので、自分がいつか挑戦したかった渋谷系という要素と、今回のタイアップの機会がガチッとハマったんです。あと、これは本当にたまたまなんですけど、「Yankeee」からエンジニアの高山徹さんにミックスをお願いしているんですが、高山さんはフリッパーズ·ギターのほとんどの作品を録音されてきた第一人者です。そんな方に、自分がトライしたかった渋谷系サウンドの楽曲をミックスしていただけるという偶然も重なって。仕上がってきたミックスを聴いたときは本当にびっくりしました。渋谷系特有のリバーブ感や音像が施されていて、ものすごくテンションが上がりましたね。

ーー現在ソロ活動も含めて複数のアウトプットを持つツミキさんですが、それぞれの活動が互いに刺激し合っている側面はあるんでしょうか?
ツミキ:どちらのプロジェクトが勢いがあるかというような比較は、まったく意識していないです。ただ、全然違うジャンルの場所で活動しているからこそ、自分が作った楽曲に対してのお客さんの受け取り方や反応の違いに、新鮮な発見や刺激をもらうことはものすごくありますね。僕自身、雑食で色んな音楽を聴いて育ってきたので、ひとつのアウトプットだけでは満足できないわがままなところがあるんです。そんな自分の「こういう音楽がやりたい」という衝動を叶えられる環境がふたつもあるというのは、本当に恵まれたことだと思います。僕の音楽人生において、どちらも絶対に欠かせない存在ですね。
ーーもし仮に、同じメロディの楽曲をノーメロとAoooのそれぞれに渡したら、完成形はどれくらい変わると思いますか?
ツミキ:まったく違うものになると思います。僕はメロディや歌詞を書くだけでなく、鳴っているすべての音のサウンドデザインが好きなのですが、そもそも声という最大の楽器が違う以上、編曲のアプローチは180度変わります。声の成分に依存してジャンルごと変わっていくはずなので、完全に別の曲になるでしょうね。





















