ふみの、曖昧を確信に変えられる音楽への想い 悩み涙した日々が“今ここで生きる”決意にーー1stアルバムで描いた人生

ふみの、1stアルバムで描いた“人生”

 シンガーソングライター・ふみのが、1stアルバム『僕のすべてを知ってるような君だから』をリリースした。デビューが今年1月であることを思えば、あっというまのアルバム完成にも思えるが、『No No Girls』などで彼女の存在を追いかけていた人からすれば、まさに“待望の”アルバムと言えるだろう。

 ふみのが何に葛藤し、何に喜び、何を糧として生きてきたのかーー赤裸々な言葉の数々からは、彼女の人となり、そして人生をありありと感じることができる。と同時に、リスナーの誰もが自身の生活を重ね合わせられる普遍性や優しさ、肩の荷が降りるような軽やかな活力が詰まっていることも本作の魅力であり、それもまた、ふみのが音楽を通して届けたいものなのだろう。自分らしさに悩み、つい頑張りすぎてしまうあなたにとって、このアルバムはきっとお守りのように大切な1枚になり得るはず。“ふみの”という物語が、多彩な楽曲に乗って届けられた1stアルバムについて、全国路上ライブツアーを終えて一段とたくましくなったふみのに、たっぷりと話を聞いた。(信太卓実)

「できれば共感してほしくない」 “18歳の記憶”を綴った意味

ーーまずは『ふみの全国路上ライブツアー2026〜はじまりとはじめまして〜』を振り返ってみて、いかがでしたか?

ふみの:めちゃくちゃ楽しかったです! 場所ごとに雰囲気が全然違いましたし、「どんな変化をつけようかな?」って毎回考えながら挑むことができて。猛暑によってスピーカーの調子が悪くなっちゃったり、強風でマイクスタンドが揺れたり、ピックがどこかへ飛んでいってしまったり、路上ライブならではのトラブルもあったんですけど、それを乗り越えていく経験が成長に繋がったなと思います。

ーー6〜8月でしたし、暑い日も多かったですよね。

ふみの:はい、しっかり日焼けしました(笑)。

ーー特に記憶に残っている場所はありますか。

ふみの:全部なんですけど、一つ選ぶとしたら最初に行った沖縄ですね。まだ路上ライブの感覚が掴めていなくて、「どれくらい集まってくれるんだろう?」「足を止めてくれる人がいるのかな?」っていう状態で臨んだので。「誰もいない中で歌って人を集めるんだ!」という修行のような覚悟でしたし、とても緊張してました。でも結果的にすごくたくさんの人が来てくれて一生の思い出になりましたし、それまではお客さんと近くでコミュニケーションを取れるライブもあまりなかったので、「グッズ着てくれてる!」っていうのがすぐそばで見れたのも嬉しかったです。他の場所に行ってからも、数時間前から待ってくださっている方もいたりしたみたいで、その気持ちが本当にありがたいなと実感しました。

ふみの 撮り下ろし

ーーそんな充実のツアーを経て、ついに1stアルバムが完成しましたね。曲そのもののパワーはもちろん、歌詞や歌唱、曲順やタイトルも含めてストーリーが見える素晴らしいアルバムでした。

ふみの:ありがとうございます! バラバラの時期に作っていた曲ばかりなので、アルバムタイトルを決めて軸を通そうとした時に「どうやって一つにまとめたらいいかな?」って悩んでいて。でも、「年齢とか経歴でいろんな見方をされているな」って葛藤を感じていた時期に、「今の私をまっすぐ知ってほしい!」と強く思っていたので、そういう気持ちを込めて『僕のすべてを知ってるような君だから』というタイトルをつけました。もともと言葉自体はデビュー後くらいにメモしていて、いつか歌詞にしようかなと思っていたんですけど、アルバム全体を包み込む言葉としてタイトルに据えたら、一本筋が通るんじゃないかなって。

ーーなるほど。アルバムの中で最初にできた楽曲はどれになりますか。

ふみの:1曲目の「18」ですね。デビュー前、スタジオに通いながらデビューの候補曲をずっと書いていた時期があって、その時にできた曲です。

ーーもしかして「favorite song」とどちらをデビュー曲にしようか迷われたというーー。

ふみの:まさにその迷っていた曲です! 当時、“18歳の頃”をテーマに何十曲もパターンを書いてたんですけど、それが最終的にぎゅっと一つに凝縮されたのがこの曲なんです。

ーー18歳というのが、そこまで特別なテーマだったのはなぜでしょう?

ふみの:まだまだ短い人生なんですが、一番悩んで、一番辛かったのが18歳の時期だったので。自分の中で何かが明確に変わったと思いますし、考えることもその頃を境に増えたなって。学生だったので、今思うと見えている世界が狭かったと思いますし、いろんな悩みがあったのに身近な人には打ち明けたくなくて、かと言って自分の感情を深く掘り下げるのも好きじゃなかったので、消化しきれない想いがどんどん積み重なってしまって……。急に大泣きして、「なんの涙だろう、これ!?」みたいな毎日を経験したからこそ、それってよくないよねと振り返り、これは曲にしようと思いました。

 最近「18」のMVを撮影している時にも感じたんですけど、できればこの曲には共感してほしくないなって。〈始まる前に終わってしまえば/生きてく限り/希望が消えない〉っていうフレーズは曲の核でありつつ、一番思っちゃいけない気がする部分で。当時はすべてが辛かったわけではないし、残したい記憶もあるのに、一つの嫌な思い出のせいで全部を消したいと思ってしまうのはあまりにも悲しすぎるなって思います。

ふみの / 18 -Music Video-

ーー〈だから想いも捨てたけど/それではダメだと/心が叫んでいる〉(「東京」)にも通ずる部分がありますよね。諦めたくなる瞬間って、いとも簡単にやってきてしまう。

ふみの:そうですね。「諦めたい。でも、なんとか生きていけてしまう」みたいな感覚をずっと歌っている気がします。こういうシリアスなテーマって、言葉にして伝えるのは私にはとても難しいんですけど、歌に乗せて一つのストーリーに昇華させると不思議と伝えられる。勇気が出る気がするんです。

ーー「White lie」は一転して可愛らしい楽曲で、初めてのストレートな恋愛ソングという印象を受けました。

ふみの: はい、私もそう思ってました!(笑)

ーー今までは恋愛以外の捉え方もできる曲が多かったですもんね。今回はどうして恋愛ソングを書いたのでしょう?

ふみの:「White lie」って“優しい嘘”という意味なんですけど、私のためにつかれる優しさゆえの嘘がなんか嫌だなと思った時があって、言葉だけメモに残していたんです。アルバムに少しテイストの違う曲も入れたいなと思った時に、それを形にしたいと思って書きました。

ーーということは、歌詞は実体験なんでしょうか。

ふみの:実体験も入っていますし、あとは友達と恋愛の話をしている時に、「その言葉いいな!」「その表現好き!」と思ってメモしていることも多くて、そこから引っ張ってきた部分もあります。〈すきだと伝えてしまいたいの/自覚してからだいぶすきよ〉とかは友達と会話してて思いつきました。好きですね、ここ。

ふみの 撮り下ろし

ーーこれまではアッパーなロック、またはバラード系の曲が多かったので、「White lie」は歌い方も新鮮に感じました。

ふみの:ふふふ。そうですよね。この曲のレコーディングはよく覚えているんですけど、最初に歌う時、とにかく恥ずかしくて(笑)。歌詞の内容も可愛いじゃないですか。こういうことを歌う機会があまりなかったので、すごく照れました。〈待ってるの〉とか〈たしかめて〉とか……「早く来いよ!」とは素直に言えないので(笑)、ちょっといじけて遠回しに言ってしまう感じを意識しました。

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