いきものがかり、『tiny desk concerts JAPAN』特別アレンジの裏側 「さよならララ」で目指した“広くて強い曲”の意図も語る

いきものがかり、『tiny desk』の舞台裏

 『tiny desk concerts JAPAN』とは、アメリカの公共放送NPR(National Public Radio)がネット展開し、全世界にブームを巻き起こしたコンテンツ『tiny desk concerts』の日本版。“小さな机のコンサート”というタイトルの通り、NHKの実際のオフィスという、アーティストにとっては“非日常的”な空間で演奏が行われる。これまでにもOriginal Loveやちゃんみな、くるりや藤井 風といったアーティストが登場してきたこのシリーズに今回は、いきものがかりが登場。そのライブパフォーマンスの様子をレポートし、終演後にはライブでの手応えと最新曲「さよならララ」についてのインタビューも行った。

モノンクルを招いた“1日限りのアレンジ”、生まれ変わった代表曲の数々

 開演前、NHKのオフィスの一角にあるわずかなスペースに、楽器がセッティングされていた。その周りを囲んでいるのは客席ではなく、NHKのスタッフたちがそれぞれに使用しているパソコンやペン立てなどが置いてあるデスクと椅子。その隙間にコンサートを聴きたいスタッフたちが別のフロアから続々と集まってくる。今回は過去最大級となる、300人近いオーディエンスが集まった。開演時刻になり、狭い通路をすり抜けるようにして今日の特別な演奏をしてくれるミュージシャンたちが登場した。いきものがかりが、このコンサートのために楽曲のアレンジ&サウンドプロデュースを依頼した、モノンクルの角田隆太(Ba)と吉田沙良(Cho)。その2人が声をかけて集まった高橋直希(Dr)、工藤拓人(Key)、須原杏(Vn)、林田順平(Cello)、映秀。(Cho)。この特別な編成が並んだだけでワクワクするのも束の間、最後にいきものがかりの水野良樹(Gt/Pf)と吉岡聖恵(Vo)が小さな机にスタンバイした。

いきものがかり ライブ写真

 「途中で吉岡が煽りますんで!」と水野が観客たちに声をかけると、吉岡も「煽られてくださいっ!」と続けて、大きな拍手の中、ライブは始まった。1曲目は「ブルーバード」。ウッドベースがグルーヴィにリズムを刻み、バイオリンの音色が華やかに彩りながらも、いたってミニマムなサウンドとアレンジが吉岡の歌声をくっきりと浮かび上がらせていく。いきものがかりの音楽によって、それまでオフィスだった空間の熱気が一気に上昇し、特別な非日常へと変わった瞬間を目の当たりにした。続く「気まぐれロマンティック」は吉岡の歌声と水野の鍵盤のみで始まり、小さな空間で小さな音に耳を澄ませるようにして楽しむいきものがかりの音楽が、とても贅沢で新鮮に感じられた。吉岡が小さな声で「カモン!」と煽ったのを合図に手振りでダンスを始めると、観客たちも同じように踊り始めた。その盛り上がりは「じょいふる」へと続き、吉岡が立ち上がってタオルを回し始めると、観客もこの日のためにいきものがかりが用意した黄色いタオルをブンブン回して最高潮の熱気を生み出した。重なるコーラスも楽しく、観客も掛け声を上げながら最後は〈JOY〉とみんなでジャンプ。

いきものがかり ライブ写真

 曲が終わると、吉岡が「『tiny desk concerts JAPAN』に初めて出演させていただきます、嬉しいです」と言うと、水野も「とても仕事中とは思えないですね、ありがとうございます」とにこやかな表情を見せた。

 アコースティックギターと生歌でしっとりと始まった「SAKURA」では、吉岡の伸びやかな歌声を堪能。そこからは柔らかなキーボードの音色や弦楽器、パーカッションやコーラスも加わっての、ジャジーでグルーヴィなアレンジで楽しませてくれた。普段のライブのような大音量ではないからこそ、近い距離で音を立体的に感じ取るような体験は『tiny desk concerts JAPAN』の醍醐味かもしれない。「帰りたくなったよ」から「YELL」へと続くと、いきものがかりの2人も、長く歌っているヒット曲を今日だけのアレンジで演奏することを生き生きと楽しんでいる様子が窺えた。

いきものがかり ライブ写真

 ゴスペル調のコーラスワークがエモーショナルだったのは「コイスルオトメ」。吉岡もいつもよりファンキーなボーカルで聴かせてくれた。さらに「笑顔」では、レゲエ調のアレンジと豊かなハーモニーが加わって、楽曲のピースフルなムードが増量。観客も、ここがオフィスだということなんて忘れて、手拍子をしながら笑顔で聴き入る。「風が吹いている」へと続くと、吉岡の豊かな歌声を柱に、繊細な音色が加わってくるようなアレンジが素晴らしかった。風の煌めきのようなバイオリンの音色や、温かみを加えるベースラインに包まれて、みんなで手を左右に振りながら〈La La La…〉と歌い合う忘れられない光景となった。

いきものがかり ライブ写真

 「まだまだ新しい曲を作り続けていますし、こうして新しいミュージシャンたちと新しい音楽に出会い続けています」と言いながら、「カッコつけてんなあ〜」と照れる水野。吉岡がそれに「カッコいいよ!」と合いの手を入れた。そして、最後に演奏されたのは新曲の「さよならララ」。最新曲でありながら、すでにいきものがかりの名曲としての存在感を放っている王道のミディアムバラードだ。弦楽器の繊細な音の重なりとパーカッションが織り成す特別なアレンジが、吉岡の豊かな歌声を運び、胸いっぱいのラストシーンとなった。後述するインタビューでも、「凪」のイメージがある曲だと水野は語っていたが、最後に鳴ったウィンドチャイムが静かな海の輝きのような余韻を残した。オフィス中に鳴り響く大きな拍手に包まれながら、いきものがかりの『tiny desk concerts JAPAN』は幕を閉じた。スタッフが「それでは、皆さんは仕事に戻ってください!」と言うと、観客は冷めやらぬ熱気のままスタッフに戻り、それぞれの午後の仕事場へと帰っていった。そんな終わり方も、いつもとは違うライブの演出のようで楽しませてもらった。

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