GONTITI、困難を超えてたどり着いた現在地 “熟練パイロット”が音楽を通して巡った見果てぬ世界旅行

「集大成的なものにはしたくない」ーーGONTITI、結成48年目の挑戦とは?

ーー実は、アルバム全体は40分足らずで15曲。短い曲が多いようにも感じました。
松村:結果的にそうなった、という感じかな。
三上:曲の長さは意識してなかったですね。
ーーこの短さがいいと思ったんです。それこそGONTITIが円熟の境地を表現するとしたら、もっとお互いの音を聴かせ合う、みたいな名人芸的な世界もあったかもしれない。でも、お二人はホイホイ、ツカツカとどんどん先に進んでるんです。
三上:それはあると思います、確かに。
松村:余分なものを削ってるというところも多いですね。ギターだけの曲にしても「ここで間奏をもう1回繰り返した方がいいのかな」と僕が思っても、三上さんの方から「この曲は繰り返しをしないでも全然大丈夫」みたいな意見も出た。「あ、そうかー」という気づきはありました。
三上:菅谷さんにいろいろ頑張って作っていただいたイントロを、ばっさり切った曲もありましたから。まあ、そういうことを言い合える仲だということなんですけどね(笑)。でも、全般的に曲が短くなってきたことは確かです。曲順を考えてくれてる元プロデューサー佐脇(章太)くんが「これ、ちょっと長いかも」って、第三者の感覚で漏らしたひとことがあり、僕も「あ、それは真実かもしれないな」と思ったので、もう1回聴き直して短くしたりね。そういう意見は真摯に受け止めてやっていこうということなんです。
ーー曲名には「フレズノ」とか「コスタリカ」とか世界の地名が出てきますけど、これは過去に実際に行った思い出が元? それとも未体験ですけど想像することで生まれたインスピレーションなんでしょうか?
松村:三上さんの方から「今回はこのアルバムタイトルで行くので、国際空港のある地名みたいな曲名をいくつか考えてほしい」という提案があったんです。それで、僕はインターネットで「世界の国際空港」をあちこち調べました。
ーー「世界の国際空港」から!
松村:アフリカのギニアで「コナクリ」という地名がヒットしましてね。この言葉の響きがものすごくよかった。「気に入った!」と思いました。ギニアですから、僕は猿が好きなので、ギニアヒヒというのがあそこにいるぞ、と。それで「コナクリの少年」を思いつきました。実際はギニアには行ったことがありません。コスタリカ(「Costa Rica Calling」)にも行ったことはないです。でも、あそこには僕が大好きな昆虫とか、ケツァールやハチドリという鳥とか、面白い生き物がいっぱいいるので、「ここにも行ってみたい」と思ったんです。それから、コタキナバル(「Mysterious Kota Kinabalu」)。ここはボルネオ(マレーシア)ですが、オランウータンにテングザル、ラフレシアといった希少種の動物がいます。好きなものがいっぱいあるので、行ったこともないのにその3つを曲名に選んだんですよ。そしたら、コナクリもコスタリカもコタキナバルも、全部「コ」で始まる地名だったので、あとでびっくりしました(笑)
三上:フレズノ(「Coffee Shop in Fresno」)は、僕が作りました。大阪のある雑貨店の方の買付日記をネットで読んでいて、そこに出てきた地名です。男2人でアメリカに買付けに行くという切なくて大変そうな旅の記録を読んだんですけど、そこに出てくるカリフォルニアの北の街、フレズノって面白そうだなという興味からですね。
松村:言葉の響きが面白いですよね。
ーー実際に行くよりも想像の広がりがすごい。お二人ならではですよ。そういう意味では、この新作に限らず、GONTITIはワールドミュージックに似てるけれど全然違う“イマジナリーミュージック”である。そこがクローズアップされているのは、原点回帰のようにも思えます。お二人にとって、アルバムで印象的な曲があったらお聞きしたいです。
松村:「対岸からの眺め」という曲があるんですが、これは最初はギターだけでやろうと思っていて。でも何か音が入った方がいいかなと思い、菅谷さんにそういう提案をしたら、すぐにピアノが入ったんですね。それがもう、音数が多くない、本当に間の世界。すごい、面白い! 彼は天才だと思いました。その時点ではまだ曲名は決まってなかったんですけど、あのピアノで完全に「天国からの眺め」やなと思ったんですよ。「三途の川」の向こうからこっちを見てるような雰囲気になったので、「対岸」っていう言葉が浮かびました。
ーー世界旅行だけでなく、三途の川も入っていたとは!
松村:もう1曲、「Farewell, My Old Friend」は、僕が一番仲が良かった同級生でシンガーソングライターの足立大輔くん(2013年にチチ松村プロデュースでアルバム『彷徨バラッド』リリース)が去年亡くなったので、彼に捧げた曲なんです。三上さんがストリングスを入れようと提案してくれて、アレンジをしてくださったのが飯島はるかさん。僕と足立が出会ったのは飯盛山で、同じ「イイ」というつながりを感じて、「あー、やっぱり呼ばれるべくしてこのアレンジになったんだな」と思いました。アルバムの最後にこの曲が来てくれて、ちょっとうれしいなという感じはあります。
三上:僕は今回、1曲というより全曲で苦労しましたね。ギターだけでなく、最終的にミックスをどう仕上げていくかが僕にとっては重要で、そこにものすごく労力をかけました。当初に作っていたデモを元にレコーディングしていくんですけど、最初にあった持ち味の良さをどんどん忘れていってしまう。ミックス段階で最初の構想を再度立ち上げて、原曲の良さはどこにあったのかを探り当てるというのが、また厳しい作業なんです。自分と向き合わないとダメだし、曲とも向き合わないとダメ。そういう作業に、今回は特に苦労しましたね。
ーーデモにあった最初の思いつきの純粋さにどれだけ近づけるか。
三上:そうですね。もっと具体的にいうと、どこかの和音とメロディがすれ違った時、キラッと光るようなものが原曲にはあったんですけど、それがどこにあったのかがわからなくなっていくんです。全体のイメージとしてはだいたい合っていても、細かいポイントがずれていると良さがいっさいわからなくなってしまうんですよ。そこを再度発掘し直すというのが難しいですね。デモからレコーディング、ミックスまですんなり行くことはないんです。必ずどこかで挫折するんですよ。「あれ? どこを忘れたかな」と思い返す作業の連続ですね。プロ中のプロならすぐにやれる、というようなことでもない。そこは音楽の神秘的なところですよ。どんなにすごい音楽家でも、そこを悩みながら曲を完成させているということだと思います。
ーーあらためて、今回のアルバム『Two Old Pilots After Twilight』はGONTITIにとって、どんな位置付けになると言えますか?
松村:ちょっとブランクがありましたけど、本当に新しいところに行けたなという感じはあります。
三上:そうですね。集大成的なものにはしたくないという気持ちはあったので。やっぱり、今僕らがやりたいこと、挑戦したい音楽は何か、それをこのアルバムで感じていただけたらうれしいです。
ーーつくづく思いますけど、キャリアとか円熟とかではGONTITIの音楽は計れないですよね。いつも音楽とは新鮮に向き合っている。
三上:ちょっと話は変わるかもしれませんが、僕はいわゆるキャラクター商品的なものが大好きで、ガシャポンもよくやるんです。最近は、「え? こんなものまで?」みたいなリバイバル商品がよくあるんですよ。どういう感覚で今の世代がウケているのかよくわからない。だけど、GONTITIの今回のアルバムも、僕らとは違う価値観で「あれ? これ、何かちょっと変わってんな」という感じでとらえられて若い世代にも聴いてもらえるアルバムになったんじゃないかと思っていて、そういう意味で期待はしてるんです。
ーーGONTITIというガシャポンがあって、「何だこれ?」って気にする人たちがいて、15個の曲が景品として入っていて、回すと何が出てくるかわからない。面白いですね。
三上:それはいい例えですね。そうかもしれないです。「やっとわかってくれたか」みたいな上から目線じゃなくてね、「何かが違う」という感じで引っかかってくると思ってます。
■リリース情報

GONTITI『Two Old Pilots After Twilight』
発売中
<収録曲>
01 Departure
02 Jumping VoVo
03 Old Pilots of Paradise
04 Good Will
05 Coffee Shop in Fresno
06 falling petals
07 対岸からの眺め
08 A Lovely Summer Day
09 sweet mud
10 転校生の家
11 Costa Rica Calling
12 コナクリの少年
13 Mysterious Kota Kinabalu
14 リボンをつけて
15 Farewell, My Old Friend
公式サイト:https://www.gontiti.jp/
公式X:https://x.com/gontiti_house




















