SPECIAL OTHERS、日比谷野音に響かせたシンガロング 9カ月連続リリースの新曲もふんだんに披露したツアー初日を振り返る

SPECIAL OTHERS野音公演レポ

 SPECIAL OTHERSが8月27日、東京・日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)にて『SPECIAL OTHERS TOUR 2023』の初日公演を行なった。

 現在、毎月25日を「ニコニコの日」と称して今年2月から9カ月連続リリースを実施中のSPECIAL OTHERS(以下、スペアザ)。「ニコニコの日」の最終リリースは10月25日に、その集大成となるニューアルバム『Journey』を予定しているが、今回のツアーはそれを挟む形での開催となる。

SPECIAL OTHERS
芹澤 “REMI” 優真(Key)

 スペアザといえば野音、野音といえばスペアザと言っても過言ではないくらい、彼らにとって馴染みのある野音は、施設の老朽化のため来年度以降に建て替えられることがすでに発表されている。つまり、現在の野音で彼らのライブを観るのはもしかしたらこれが最後になるのかもしれない。

 とはいえ、感傷的なムードなど、どこ吹く風の4人。これまでの野音公演と同様、この日も近所のファミレスにでもふらっと入ってきたかのような超自然体の登場に、待ち焦がれていた客席からは口笛や歓声が飛び交った。

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柳下 “DAYO” 武史(Gt)

 本公演は2部制で、第1部は「ニコニコの日」にリリースされている新曲のみで構成されたセットリスト、第2部はライブ人気曲が中心のセットリストとなっていた。宮原 “TOYIN” 良太(Dr)、又吉 “SEGUN” 優也(Ba)、柳下 “DAYO” 武史(Gt)、芹澤 “REMI” 優真(Key)の4人が持ち場につき、おもむろに楽器をセッティング。肩慣らしのアドリブを各々がし始めたかと思いきや、そのバラバラだった音が次第に一つのアンサンブルに。まだ日は落ちていないが、昨日までの猛暑とは少し違う、ほんの少しだけ秋の気配を感じさせる日比谷の空に、軽やかなエレピのフレーズが吸い込まれていく。

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又吉 “SEGUN” 優也(Ba)

 一瞬の目配せのあと、少ない音数で構成された軽快なリフが繰り出されるとオーディエンスは一気にヒートアップ。まずは8月25日にリリースされた、疾走感あふれる8ビートが印象的な「Feel So Good」でこの日のライブは幕を開けた。

 続く「Falcon」は、7月にリリースされた第6弾シングル。その前の「Bed of the Moon」に引き続き、東京・原宿にある昭和41年創業の老舗中華料理店・紫金飯店で撮影された、シュールでユニークなMVも話題になった曲だ。4人がそれぞれアクセントを微妙にずらした幾何学的なアンサンブルが、時間と共にじわじわと熱を帯びていく。ピッチベンドホイールを駆使した芹澤のスペイシーなソロは、まるで獲物を狙って上空を滑空するハヤブサ(Falcon)を彷彿とさせるものだった。

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宮原 “TOYIN” 良太

 柳下のジャジーなインプロビゼーションからスタートしたジャムセッションが、セミの鳴き声とともにミドルテンポのメロウチューンへ。時おり吹く少し涼しい風を感じながら、その心地よいグルーヴにしばし身を委ねる。するとカウントとともに始まったのは、スペアザ流のロックナンバーともいえる「Bluelight」。まるで突然降り出した大粒の雨のように、あちこち不規則に飛び回るトリッキーな旋律がフロアのテンションを一気に上げていく。

 第1部は「Apple」で締めくくる。切なくノスタルジックな3拍子のギターに導かれ、まるで寂れた遊園地のメリーゴーランドから聴こえてくるような、ひなびたシンセが日比谷の空に響き渡った。

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