SPECIAL OTHERS、野音で“最後”のワンマンライブ オーディエンスと焼き付ける最高の景色

SPECIAL OTHERS野音ワンマンレポ

 4人組インストゥルメンタルバンドSPECIAL OTHERS(以下、スペアザ)による、『SPECIAL OTHERS 野音! 日比谷野音100年のありがとう☆彡 大盤振る舞いの大阪城野音もあるよ(^o^)/』と銘打たれたワンマンライブの東京公演が5月19日、東京・日比谷公園大音楽堂(以下、野音)で開催された。

SPECIAL OTHERS
芹澤 "REMI" 優真(Key)

 たくさんのキャンドルや小型のミラーボールで飾られた、まるで祭壇のような入口のモニュメントを眺めつつ会場に入ると、ステージにはたくさんの植物が機材と共に並べられ、さながら植物園のよう。ソールドアウトした客席は、オーディエンスで賑わっている。おそらくスペアザの野音は他のアーティストと比較しても、売店でのアルコール売上高はかなり高いのではないだろうか。開演前からすでにあちこちで酒盛りが始まり、ビールやスルメの匂いがほのかに漂う。小さな子供を連れた家族連れも多く、ちょっとしたピクニック気分で楽しんでいる人も多そうだ。

 当日はあいにくの雨模様ではあったが、定刻となり、お馴染みの「KOYA」をBGMに芹澤 "REMI" 優真(Key)、又吉 "SEGUN" 優也(Ba)、宮原 "TOYIN" 良太(Dr)、柳下 "DAYO" 武史(Gt)がふらりとステージに姿を現すと、会場からは大きな歓声が湧き上がる。芹澤と宮原はステージの両端から向かい合い、その間に柳下と又吉が横並びといういつものフォーメーション。持ち場に着くなり、おもむろに音出しを始めた4人。そのてんでばらばらに鳴らしていたカオスなサウンドが、少しずつアンサンブルを形成していく。今日も彼らのライブはジャムセッションからのスタートだ。

SPECIAL OTHERS
又吉 "SEGUN" 優也

 又吉はシンプルなベースラインで低音を支え、宮原は細かくビートを刻みながらグルーヴを作り出す。柳下はアルペジオを浮遊感たっぷりに爪弾き、芹澤がエレピでその空間を彩っていく。高校時代から培われた鉄壁のアンサンブルが徐々にテンポを上げていくと、それに合わせてオーディエンスも気持ちよさそうに体を揺らしている。

 そんな肩慣らしのような最初のセッションが終わり、「Anniversary」のイントロが奏でられると「待ってました」とばかりに多くのオーディエンスが席から立ち上がり、楽しそうに踊り始めている。

 「どうもSPECIAL OTHERSですー。この景色を一緒に見られるの、今日が最後ですよ。最後の予定ですよ!」と、宮原が念を押すように客席へ語りかけると、あちこちから笑い声が。予定されている会場の改修工事のため、「野音でやるのはこれが最後」と話してはいるが、これはすでに何度もライブを行なっているスペアザ流のお決まりジョークだ。「雨はもう上がったかな? 皆さん、楽しみ残しがないようよろしくお願いします」と芹澤が改めて挨拶すると、再び会場は大きな歓声に包まれた。

SPECIAL OTHERS
宮原 "TOYIN" 良太

 柳下のギターと芹澤のオルガンによる幾何学的なアンサンブルからスタートしたジャムセッションを経て、「Uncle John」へ。カントリーテイストの清々しいメロディを宮原と芹澤がハモりながら歌うと、オーディエンスも拳を振り上げながら一緒に歌う。どこか日本の民謡やお囃子を思わせるこの曲のシャッフルビートがアルコールの回りを早くする。ふと空を見上げると、雨は小降りをキープしたまま。なんとかこのまま持ってほしいのだが。

 再び始まったジャムセッションでは、芹澤がキーボードのツマミをグリグリと回しながらスペーシーなサウンドを作り出し、その上で柳下がひらめくままに、次々とジャジーかつファンキーなギターフレーズを繰り出している。宮原はリズムを倍にしたり半分にしたり、時間の流れを完全にコントロールしてオーディエンスの腰をぐいぐいと揺さぶる。

 そんなスリリングなジャズファンクからの「STAR」は、2007年のEPタイトル曲。日本人の琴線に触れる、どこか切なく哀愁漂うコードを歪みまくったエレピで刻む芹澤。押し寄せる波のようなアンサンブルに、会場のボルテージは上昇する一方だ。

SPECIAL OTHERS
柳下 "DAYO" 武史

 続いて「PB」の特徴的なキメが奏でられると、それに合わせてハンドクラップするオーディエンス。洗練されたコード進行を疾走感あふれる演奏に乗せていく。曲が進むにつれ、まるでハードロックバンドのようにギターやベースのヘッドをぶん回しながら演奏する柳下と又吉。芹澤も負けじとヘッドバンキングしながら、鍵盤を叩きつけるようにオルガンソロを繰り出す。一方、宮下はひたすらクールに3人の演奏を下から支えている。気づけば雨もかなり強まっているが、野音は完全にお祭り状態。童心に戻ってはしゃぐ大人たちの姿を不思議そうに見つめていた子どもたちも、いつしか一緒になって飛び跳ねていた。

 一転、チルアウトするようなしっとりとした短めのセッションを経て、第1部の最後は「I'LL BE BACK」。三拍子と二拍子を組み合わせた変態的な、それでいて宮原が歌うサビは飛び切りポップで人懐こい、スペアザならではの楽曲だ。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる