KREVA、すべてを“自ら手掛ける”トラックメイカーとしての矜持 激動の40代を経て、50代を迎える胸中に迫る

 KREVAが自身50歳の誕生日である6月18日、14年ぶりとなる『BEST OF MIXCD』シリーズ第3弾『BEST OF MIXCD NO.3』をリリースした。2017年のSPEEDSTAR RECORDS移籍時にリリースした『嘘と煩悩』から最新作『Project K』までの5作のアルバム収録曲のインストゥルメンタルを自らミックスして目指したのは、“日常のBGM”だという。ソングライティングからラップ、トラックメイク、エンジニアリングまでのすべてを自ら手掛けるKREVAの現在地点とは? 音楽談義を交えつつ、50代を迎える胸中に迫った。(内田正樹)

日常のBGMーー14年ぶりの『BEST OF MIXCD』シリーズ

――本題に入る前に伝えておきたいんですが、先日のフルオーケストラのアンコール公演、とても素晴らしかったです。昨年の同公演の映像ソフトはすでにリリースされていますが、音源でもリリースしてほしいくらい画期的でしたよ。(5月21日に開催された『billboard classics「KREVA Premium Orchestra Concert -ENCORE-」~produced by 武部聡志』)

KREVA:それはよかった。武部さんにまた呼んでいただけて嬉しかったし、あの日はとにかくお客さんが素晴らしかった。それに尽きますね。

「billboard classics『KREVA Premium Orchestra Concert』 at Tokyo Bunka Kaikan Main Hall」Teaser Pt.3

――さて、14年ぶり3作目の『BEST OF MIXCD』シリーズですが、まずアルバムジャケットのデザインがかっこいいですね。かつての洋楽最盛期の頃のエッセンシャルベストみたいな佇まいで。

KREVA:ジェームズ・ブラウンとかのね(笑)。まさにそこを狙いました。写真とアートディレクションがちょっとハマりすぎた分、中身が伝わらないとまずいなと思って後から帯文をつけました(笑)。

――今作の制作に至った経緯は?

KREVA:そもそも俺は、日常生活において“無音”の状態があまり好きじゃないんですね。ミーティングとか、誰かとの会話の時間でも、ずっと後ろで薄く音楽を流していたい。そのためにミックスをたくさん作っていたので、今作はその延長線上という感じです。コアなファンの人はもっとテクニカルなものを聴きたいかもしれないけど、こんなふうにスムーズな音の起伏だけで切れ目なく1時間くらい続くものも、案外使い勝手があるんじゃないかな? って。要は自分の生活に必要だから作ったけど、皆さんの生活にも馴染んでくれるかも、と思って。14年ぶりについてはたまたまそうなっただけですね。

――ちなみに日常で流すBGMというのは、会話中でも制作作業中でも?

KREVA はい。常に何か音楽がかかっていてほしい。

――しかも、ランダムもしくは編集されたプレイリストよりも、ミックスされた音源が好ましい、ということですか?

KREVA:そうですね。もうApple MusicでもAuto Mix機能が実装されて、本当によくできているし滑らかに繋ぐんだけど、とはいえ、やっぱりここから入れてここまで繋ぐ、みたいなことはできていないし。滑らかだとしても、「音の起伏って、そういうことじゃないんだよな」と思ったりするし、かえってミックスされた音源の価値を再確認させられて。自分で作れるんだし、自分で流すものもミックスしたものが好ましいなあと。

「常にヒップホップDJとしての感覚は忘れずにいたい」

――今作は2017年のレーベル移籍後から最新作にわたる5枚のオリジナルアルバムの収録曲のインストが元になっています。曲順については?

KREVA:曲順については“No迷い”でしたね。30分くらいだったかな、割と即決でした。そこから、全体の流れのための曲の繋ぎ方やBPMをいじって。ひとつの作業を何時間もやるとかじゃなくて、ある程度仕上げては部屋で流しっぱなしにして、「ここ、ボリュームちっちゃいな」とか「ここ、急に遅くなりすぎたな」と感じたら、その都度直して。それを何日か繰り返しました。延々とやり込むこともなく冷静にフィニッシュしたけど、そうした修正は結構細かくやったかもしれない。

――原曲と聴き比べると、単なるインストではなくてBPMもアレンジもかなり繊細にトリートメントされているのがわかります。

KREVA:うん。でも、もちろんセンスは別としてだけど、今作ぐらいのトリートメントであればスキルだけで言うと最近の機材を使える人なら決して難しくないレベルだと思います。前作、前々作の時は、「DJのスキルを見せたい」という気持ちも結構あったんだけど、今回はまったくなかったですね。

――そうなんですよね。派手なスクラッチが入っているわけでもなく。

KREVA:おっしゃる通り、派手なDJのテクニックはほぼほぼ皆無です。たとえば「One (Inst.) (Mixed)」から「Expert (Inst.) (Mixed)」に移るところとか、普段の俺だったら絶対にスクラッチしてから入るんだけど、今回は「いらないかな」と思って。あえてアナログレコードで小さく擦った音を入れるとか、細かいこだわりは入っていますけど、「あまり(リスナーの)耳を奪わなくてもいいかな」という気分でしたね。

――それでいて、中盤で一旦抑えて終盤で盛り上がっていくとか、全体として自然なライブっぽさもあって。

KREVA:何をやっても、常にヒップホップDJとしての感覚は忘れずにいたくて。誰かのライブを見て、自分にとってあまり面白いと思えない時って、そこで物足りないのは“全体としてのグルーヴ感”なんですね。1曲の細かいノリではなく、トランジションというか、その曲から次の曲に行くところのつまらなさだったりして。「そこ、DJ的にはきれいに繋いでほしい」という感じ。今回のアルバムも、終わったと見せかけて次の曲に行くとか、そういうところに気を配って、ミックスの面白さでありヒップホップDJとしての面白さにはこだわりました。ビュッと止まって、こすって(音を)出すっていうのもヒップホップDJの醍醐味だけど、そういう派手な表現は自分のライブでやるべきときにやればいいかなと。

――そして本人がやりたいかはともかく、KREVAさんの場合はその気になればいくらでもアグレッシブなミックスも作ろうと思えば作れちゃうわけで。

KREVA:それもおっしゃる通り。まあ、俺自身、荒々しいものは最近そんなに求めていませんけどね。

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