goetheが鳴らす日常と地続きの祝祭、不思議な引力を宿す珠玉の歌 9名編成のスペシャルライブで広げた地図

goethe、9名編成SPライブを振り返る

 拍手で迎えられた彼らを見た瞬間、LIQUIDROOMの空気がふっと軽くなるのを感じた。R&Bやジャズ、数多のジャンルを背骨に持つ彼らのサウンドは、驚くほど洒脱で、それでいて強烈に聴き手の心拍を揺らしてくる。5月30日、バンドメンバーに加え、サポートギター、コーラス&パーカッション、そしてホーン隊を迎えた9人編成という特別な布陣で臨んだこの夜、goetheが鳴らしたのは、“ライブ”という枠組みを軽々と超えた、私たちの日常と地続きにある祝祭だった。

goethe(撮影=山川哲矢)

goethe(撮影=山川哲矢)

 北海道発、樋口太一(Vo/Gt)、永江碧斗(Key)、加藤拓人(Ba)、相蘇勇作(Dr)からなるgoethe。詰め寄せたオーディエンスたちの耳に飛び込んだのは、幻想的なイントロダクションだ。重厚なバンドサウンドに重なるホーン隊の煌びやかな音色がフロアに浸透していく。「Friendship」からキックオフすると、脱力したいい雰囲気がフロアへ蔓延していく。芳醇なバンドアンサンブルにオーディエンスは心地好さそうに体を揺らしている。「LIQUIDROOM、楽しんでいきましょう。よろしくお願いします!」と樋口が口を開き、「Make a Move」、「Sick!!」と軽やかに展開していく。樋口の歌心と、まるで耳のすぐ横で歌唱しているような優しくあたたかい歌声は、聴いていて非常に気持ちがいい。その歌声を中心にカラフルなサウンドがフロアを包み込んでいくと、再び樋口が口を開く。

「こんばんは、goetheです。今日は、僕らのスペシャルライブということで。ホーン隊とコーラス、ギターを含めた9名編成でお送りしています。僕らも皆さんと一緒に楽しみたいと思うので、好きに揺れながら、時には踊って楽しんでいきましょう」

樋口太一(Vo)(撮影=山川哲矢)
樋口太一(Vo)(撮影=山川哲矢)
樋口太一(Vo)(撮影=山川哲矢)
樋口太一(Vo)(撮影=山川哲矢)
永江碧斗(Key)(撮影=山川哲矢)
永江碧斗(Key)(撮影=山川哲矢)
加藤拓人(Ba)(撮影=山川哲矢)
加藤拓人(Ba)(撮影=山川哲矢)
相蘇勇作(Dr)(撮影=山川哲矢)
相蘇勇作(Dr)(撮影=山川哲矢)
小池隆太(Support Gt)(撮影=山川哲矢)
東風あんな(Support Cho)(撮影=山川哲矢)
鈴木雄太郎(Support Tp)/池本茂貴(Support Tb)/屋嘉一志(Support Sax)(撮影=山川哲矢)
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goethe(撮影=山川哲矢)

goethe(撮影=山川哲矢)

 続く「煙管」で魅せた、ジャジーなグルーヴ。夕焼けのようにオレンジに照らされたステージで物語を紡ぐように披露した「Warumono」では、聴く者すべての胸の奥を揺らす。彼らが織りなす音の葉には、不思議な力が宿っている。まるで街の喧騒のなかにふと現れるオアシスのような、そんな安らぎ。「ユーモアを交えて」では、これまでの雰囲気とは異なる世界観を提示する。ブルースのテイストを滲ませるサポートメンバー・小池隆太(Gt)のギターの音色に酔いしれると、無音の世界が一瞬やってくる。しかし、この無音すらも心地好いのだ。「middle」で鍵盤の音色が響くと、我々をまた別の世界へ誘っていく。儚くも力強いアンサンブルに東風あんな(Cho/Per)のコーラス、そして屋嘉一志(Sax)のサックスソロ、そして樋口の歌――〈愛はloneliness〉という言葉が重なり、一気に音像は広がっていく。

goethe(撮影=山川哲矢)

goethe(撮影=山川哲矢)

goethe(撮影=山川哲矢)

 純粋なバンドサウンドへと絞り込まれていき、ステージには樋口太一ひとりが残る。洗練されたアレンジが施された「Q」を彼は弾き語った。ギターを爪弾き、物語を紡ぐ。伸びやかに、それでいて芯のある歌声をフロアに響かせながら、夜の様相を一変させていく。続く「湖にて」で紡がれた静謐な時間。「バンドでやるのは久しぶり」と活動初期の楽曲を投下すると、飾らない剥き出しの歌声と温かさが会場を包み込んでいく。しかし、goetheの真骨頂はその直後の緩急にある。余韻に浸る間もなく、バンドアンサンブルが再び牙を剥く。先ほどまでの繊細さは保たれたまま、同期を巧みに操りながら、会場を瞬く間にディスコのような熱狂の渦へと引きずり込んでいく。作り込まれた演出と、肉体的なグルーヴの融合。激しいビートのなかに、たしかに存在する人間のあたたかさ。「ふらふら」から「Runway」にかけて、会場を“踊るための場所”に変貌させてしまう圧巻のパフォーマンスにフロアの熱気は最高潮に達していた。鍵盤が波紋のように旋律を広げ、それが心地好い陶酔となって、オーディエンスに伝染していく。「Dear」で再びホーン隊とともに芳醇なアンサンブルを聴かせると、ライブは早くも終盤に差し掛かっていた。

goethe(撮影=山川哲矢)

goethe(撮影=山川哲矢)

 「LIFE」では、クラップが自然発生する。その空間のなかで、バンドは自由に音をかき鳴らしている。彼らの音楽には、赤い炎のような激しさはない。青く温度の高い炎を宿し、冷静に、しかし熱くオーディエンスを魅了し続ける。本編ラストとなった「夢から覚めても」。波紋のように広がる音に、どこか夢見心地なフロア、全身全霊の音を最後まで届けるgoethe。グッドミュージックの余韻がフロアに充満するーー。

goethe(撮影=山川哲矢)

goethe(撮影=山川哲矢)

 鳴り止まないアンコールに応え、バンドは再びステージへ姿を現した。樋口が口を開く。「アンコール、ありがとうございます。あっというまだね」「新しいアルバムを出したんですけど、そのアルバムを引っ提げて11月からツアーをやります。そのツアーファイナルとして、12月4日にヒューリックホール東京で、goethe初のホールワンマンやります。ぜひ、遊びにきてください!」と。歓声と拍手が贈られるステージの上で、それでもなお彼らはブレず軽快なサウンドを我々に届ける。メンバー紹介を交えながら「キリン」、そしてスペシャルな夜を締めくくる「Town」へと続いた。「Town」は、日々を忙しなく生きる私たちへ向けた讃歌と言っていい。goetheがこの夜創造したスペシャルな空間は、こうして大団円を迎えたのだった。

goethe(撮影=山川哲矢)

 goetheの描く地図は、ここからホールワンマン、そしてその先へと大きく広がっていく。その進化の過程を私たちがこの目で、この耳でたしかめられることは、最高の贅沢だ。goetheの音楽がより多くの人の日常に溶け込み、そこから新たな祝祭が生まれる瞬間を今から楽しみに待ちたいと思う。

goethe(撮影=山川哲矢)

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