佐々木李子「夢破れた経験も全部無駄じゃない」ーー意欲作『RI PATHOS』、ロックに昇華した葛藤と孤独
歌手・声優として活躍している佐々木李子が、Lantis移籍後初となるフルアルバム『RI PATHOS』をリリースした。全曲新曲という攻めの姿勢で制作された本作は、メタルコア、ポストロックといったさまざまな“ロック”を横断しながら、彼女がこれまで歩んできた険しくも美しい轍を解き放った意欲作だ。今回リアルサウンドでは、収録曲の制作秘話から表現者としての変容、そしてライブへの熱い想いまでじっくりと話を聞いた。(編集部)
【オリジナル動画】佐々木李子、最近“魂を揺さぶられたこと”とは?
魂を揺さぶる“道”の原点、ロックが解放した真の自分
――『RI PATHOS』、とてもいいアルバムに仕上がりましたね。
佐々木李子(以下、佐々木):ありがとうございます。1曲1曲に時間をかけて、しっかりとテーマやコンセプトを決めて作り込んだので、最後の曲をレコーディングしたときには胸がいっぱいになりました。私の人生においても大きな分岐点にたどり着けたなという気がしています。
――アルバム制作に向けて、いつ頃から動き始めたんですか?
佐々木:1年くらい前には「アルバム作りましょう!」みたいなお話をしていたのかな。でも、具体的に「どんな1枚にしたいか」って考えるようになったのは、『Majestic Catastrophe』(2025年8月発売)を発売する時期だった気がします。私的にはLantisさんからデビューさせていただいた時から、「1曲ずつしっかり取り組んで、いずれアルバムへ繋げられるように頑張ろう」という気持ちで取り組んできたので、それがこうやって形になったことはすごく嬉しいです。
――Lantisからは『Windshifter』『Palette Days』『Majestic Catastrophe』とシングルを3枚発売してきましたし、これらの表題曲やカップリング曲を軸にしたアルバムになるのかなと思っていましたが、まさか全曲新曲とは想像もしていませんでした。
佐々木:ですよね(笑)。私もこの新しいチャレンジに対してドキドキもしましたが、最初の打ち合わせの時点で「1曲1曲、妥協することなくしっかり作りたいです!」と話していたので、楽しみな気持ちのほうが大きかったです。私自身、いろんなジャンルの曲を歌うことが好きで、それが生きがいなので、「どんな曲に出会えるんだろう? しっかりとメッセージを込めて、心に響く歌にしたいな」とワクワクしていました。
――『RI PATHOS』は激しめのロック中心で構成されていますが、これは佐々木さんが普段趣味で聴いている音楽とリンクしたものなんでしょうか。
佐々木:実際に普段聴いている音楽は、結構ジャンルはバラバラだったりするんですけど、その中でもやっぱりロックは大好きで。今思い返してみても、自然とロックに触れていたなという記憶があります。私、小さい頃にサンタさんに「ウォークマンが欲しい」とお願いしたことがあるんですけど、その時にもらったウォークマンに入っていた曲をあとで見返したらロックバンドの楽曲がたくさん入っていて。私の兄がRADWIMPSさんやBUMP OF CHICKENさんが好きだったので、その辺りの王道のJ-ROCKを入れてくれたのかな。そう思うと、“魂の揺さぶり”っていう意味が込められた今回の『RI PATHOS』は、ロックを通して自分の魂が一番揺さぶられる瞬間を表現できているのかもしれません。私自身、フェスに出演させていただいたり観に行ったりすることも多いんですけど、ロックでノリノリになれる空間が大好きなので、フルアルバムを作るとしたらやっぱりロック中心にしようと考えたのは、自然な流れなんだと思います。
――自分を解放させるという意味では、バラードで歌い上げるよりもロックナンバーで衝動的にガツンといくほうが合っていると。
佐々木:私、自分の中に想いを溜めがちなんですけど、だからこそロックを歌うとより感情が溢れてくるといいますか。普段はちょっと伝えづらい思いを吐き出せたり、限界突破できるのがロックだと思うので、レコーディングをしていてもライブをしていてもすごく楽しいんです。
――では、そこで歌われる歌詞のテーマにおいても、佐々木さんのこれまでの生き様が歌われている?
佐々木:そうですね。最初に「どういうアルバムにしたいですか?」と話し合った時から、「佐々木李子が歩んできた道を表現する1枚にしたい」とは伝えていて。これまでがむしゃらに、目の前のことを一生懸命頑張って生きてきたけど、ちょっと立ち止まって振り返ったらいろいろな分岐点、大切な道がたくさんあったと思っていて、それを今回のフルアルバムの中に形として残したい。そこは最初から、自分の中でも固まっていたことでした。
――その道のりも常にまっすぐだったわけではなく、時には曲がりくねっていて寄り道することもあったでしょうし、思いがけないハプニングがあって目的地を通過するのに時間がかかってしまったこともあったんじゃないでしょうか。
佐々木:本当にそういう経験ばかりでした(笑)。でも、そういう失敗とか後悔したことが、自分を成長させてくれたと思うんです。私はミュージカルでこの世界に入ったんですけど、そこでも『アニー』の主役を掴むまでに2回もオーディションに落ちましたし、小さい頃は「自分はダメだ、無理だ」と落ち込んでしまうことも多くて。でも、そこで終わるんじゃなく、その悔しさをガソリンにして次に繋げることで今に至ったわけですし、振り返ってみるとあの時のことは全部必要な経験だったんだと思えるんです。
それと、私は歌うことがすごく好きで、小さい頃からずっと歌ってきたのに、ある時急に歌えなくなったこともありました。デビューしたての頃にリリースイベントがあったんですけど、その当日に家から出られなくなってしまうぐらい、いろんな悩みや不安が重なってしまって。でも、マネージャーさんやスタッフさんが家まで来てくれて、特に会話とかせずに一緒にいてくださったことで、最終的にその日は最後まで歌うことができたんです。それまでの自分は、ずっと「私は孤独だ」と思い込んでいて、周りにいろんなスタッフさんやファンの皆さんがいて、常に味方でいてくれたことに気づけていなかった。あの日、周りの皆さんの存在に助けられたことで自分自身もっと強くなれたと思うと、ちょっと寄り道したかもしれないけど気づけてよかったなと思います。
――失敗をネガティブなままで終わらせず、周りへの感謝に気づけたことが、佐々木さんをより大きく成長させてくれたと。先ほど「これまでがむしゃらに、目の前のことを一生懸命頑張って生きてきた」とおっしゃっていましたが、もしかしたら今は少し余裕を持てるようになったのかもしれませんね。
佐々木:確かに。昔は自分のことで精いっぱいで、ライブができることや作品をリリースできること、それこそ人前で歌えることに対しての感謝を、そこまで意識できていなかったのかもしれません。でも、そういう過去を反省することで、今は周りのスタッフさんと協力して進んでいくことの大切さに気づけましたし、人と人が一緒に支え合っていくことこそ人生なんだなと思えるようになりました。
――そういう気づきは、アルバムに収録された楽曲からもしっかり伝わってきました。
佐々木:ありがとうございます。ただ「頑張って、元気出して」と言うだけじゃなくて、葛藤だったり自信がない部分も散りばめられているので、そこも含めて自分らしい曲たちになったなと思います。