JUBEE「グレーゾーンをもっと作っていきたい」 錚々たる初バンドセットライブで熱く体現した“RAP ROCKERS”の精神

「今日という日がどうなるか、まだ誰にもわからない。けど、今日という日が今後、どういう日だったのかということをわからせるためには、今、目の前のみんなと俺が心を解放して、ぶっとんで遊ぶことだと思うんだ。いけますか!?」

 JUBEEの問いかけに観客が「イエー!」と答えると、彼は満面の笑みを浮かべ、声を上げた。

「ラップでもヒップホップでもロックでもないラップロック、楽しんでってくれ!」

JUBEE

 SE~イントロの「Kick it loud」から、WORSTRASHのbibiと作ったメロディックパンクナンバー「FENCE -I CHOSE MY WAY-」になだれこむと、さらにヒップホップのビートを鳴らしながら、これぞミクスチャーサウンドなラップナンバー「Re-create」に繋げ、スタンディングのフロアを揺らしたタイミングで宣言するように放ったJUBEEのこの一言が、まさにこの日のライブを象徴していた。5月1日、渋谷Spotify O-WESTで開催されたワンマンライブ『JUBEE & DA RAP ROCKERS ONE MAN LIVE “RAP ROCKERS”』のことだ。

 ラッパー/DJ/ビートメイカー/ソングライター/ボーカリストという複数の顔を持つJUBEEにとって、初のフルバンドセットによるワンマンライブ。“今日という日”という表現からは、運命の日というニュアンスも感じられたが、この日、彼をバックアップしたメンバーたちの顔ぶれからも、このライブにかけるJUBEEの並々ならぬ思いが窺える。

 彼らはJUBEEが今年、新たに掲げた“RAP ROCKERS”というテーマに共鳴して、JUBEE & DA RAP ROCKERSの名の下に集まったのだという。そのメンバーとは、JUBEEのオリジナル楽曲を共に制作しているAWSM.のDAIKII(Gt)、The BONEZ/TEARS OF THE REBELのKOKI(Gt)、Knosis/Survive Said The ProphetのKOSUKE(Ba)、TOTALFATのBunta(Dr)、そしてKAIKOOのDJ BAKUの計5人。さらに曲ごとに多くのゲストが加わるのだが、歴戦のプレイヤーたちがバンドセットによるライブアレンジで披露する新旧の楽曲もさることながら、90分におよぶ熱演の中でJUBEEが観客に伝えた様々な思いこそが、このライブの一番の見どころだったんじゃないかという気が今はしている。

DAIKII(Gt)
KOKI(Gt)
KOSUKE(Ba)
Bunta(Dr)
DJ BAKU

 重低音のビートを、KOSUKEが巧みなベースプレイで再現したラガなラップナンバー「Impala」からノンストップで繋げた3曲はゲストとの共演も見どころだった。MUDとともに歌声に熱を込めたミクスチャーナンバー「RED CAP」、CreativeDrugStoreの盟友であるin-dを迎え、ダビーなレゲエサウンドでフロアを揺らした「Black Flys」では、JUBEEの「飛び跳ねてくれ!」に応えるように観客がダイブを始める。

 序盤から場内にはすでに十分すぎるほど熱気が渦巻いていた。しかし、それでも「足んねえ! 足んねえ!」とJUBEE以上に観客を煽ったのは「Boost」に激しいシャウトを加えたAge Factory/AFJBの清水英介だった。

in-d
MUD
清水英介

「去年2025年は、すごい考えた1年間で。数字とか安定とかそういうことをずっと考えてた。そういうものを守ったほうがうまくいくのかと考えたこともあったけど、俺の心は違うと言ってたから、そうじゃねえと思って、そういうものを捨てて、ここに来ました。たくさん捨てた分、たくさん得られると俺は気づいてる。だから、こういう(ラップでもヒップホップでもロックでもない)グレーゾーンを俺はやっていきたい」

 この1年間の葛藤を包み隠すことなく観客に語りかけたJUBEEが「捨てる勇気の歌」と紹介した「Escape」はラップパートも含むグランジ/オルタナなスローナンバー。バラードとも言えるメランコリックなJUBEEの歌をじっと聴き入っていた観客は曲が終わると、ハジかれたようにJUBEEとバンドを称える声を上げた。そこから「LESS IS MORE」「手紙」と繋げていったこのブロックでは序盤の盛り上がりから一転、“エモい”とも表現できるような一面で楽しませる。

 ラウドでもありつつ、チルな魅力もある「LESS IS MORE」ではゲストに迎えたlilbesh ramkoとJUBEEのラップが徐々に熱を帯びていき、最後は激しいシャウトに変わる。一方、メランコリックなラップロックナンバー「手紙」はゲストの(sic)boyとJUBEEが掛け合うように歌声を重ねるラップとコーラスのアンサンブルも聴きどころだった。

lilbesh ramko
(sic)boy

「2019年に俺はある曲を出しました。その曲を出したとき、周りとやっていることが違いすぎて、最初はすげえ怖かった。でも、スタイルを変えずに7年間、いろいろ食らったり、這い上がったりしながらやってきて、やっとこの曲をちゃんとバンドとしてホンモノにできるようになりました。それがすごい嬉しい。めちゃめちゃ俺の原点の歌だぜ」

 そう語ったファンキーなミクスチャーロックナンバー「NOISE SURFER MIND」からの後半戦。バンドメンバーを紹介しながら観客を煽った未発表曲の「SPITFIRE」に繋げ、再びフロアを揺らしていく。

 そして、「まだまだいけるよな!? 今日イチを見せてくれよ!」とJUBEEが観客に問いかけ、なだれこんだのは「GENOCIDE」。JUBEEがCrossfaithとともに参加したOVER KILLの1stアルバム『THE PURGE』収録のヘヴィロックナンバーだが、観客全員の期待通りCrossfaith/AFTERVOIDのKoieがオンステージ。「ぶちかませ、おまえら!」と観客を煽りながら、ラップともスクリームとも言える咆哮を轟かせる。DAIKIIとKOKIがメタリックなリフを刻む。そして、Buntaがフロアタムを連打しながら、バンドの演奏にヘヴィネスを加える。音源以上にヘヴィロックなアレンジにフロアの熱度がグッと上がったことは言うまでもない。

Koie

 そこからさらに畳み掛けるのかと思いきや、「Vision」「Dream Smasher」とエモいミクスチャーナンバーを挟むセットリストの作り方が心憎い。音源では、それぞれRIZE/The BONEZのJESSEとDragon Ash/The RavensのKjをフィーチャーしていた、ともにJUBEEのキャリアにおけるターニングポイントになった2曲だ。この後、JUBEEが自ら語るように、そこから“RAP ROCKERS”というテーマに繋がる新たなキャリアが始まったことをクライマックス直前の重要な局面で今一度示しておきたかったということなんじゃないかと想像するが、そこに繋げたAA=「PICK UP THE PIECES」のカバーは前掲2曲と同じ意味を持ちつつ、クライマックスに昇り詰める起爆剤の役目も担っていたようだ。

 「PICK UP THE PIECES (Mass Infection Mix)」のアンセミックなサビのコーラスをシンガロングするメンバーたちを見ながら、この日、ライブを見ながらずっと感じていたことが確信に変わった。メンバー全員がこのバンドを楽しんでいるのだ、と。この日のために、どれだけリハーサルを重ねてきたかはわからないが、JUBEEとバックバンドではなく、JUBEE & DA RAP ROCKERSと掲げている通り、1つのバンドになっているところが、同じようにバンドを愛する人間として羨ましかった。こんなにかっこいいバンドを手に入れたJUBEEに嫉妬さえ感じてしまったほど。

 観客が大きな拍手を送る。「最高!」という声が飛ぶ。

「ただただ、いろいろなものをぶっ壊して、新しいものを作りながら、白も黒も全部見てきたけど、俺はその全部が好きなんだ。だから、グレーゾーンを選んでる」

 本編の最後を飾ったのは「REBIRTH OF NOISE」。“RAP ROCKERS”を掲げたリリースの第1弾となったヘヴィメタリックなミクスチャーナンバーだ。JUBEEがドープなラップとともに凄みを見せつける

「真ん中空けて回れる!?」

 JUBEEが挑発するように観客に問いかける。観客はそれに応えるようにBuntaのドラムが2ビートになった瞬間、ウォールオブデスからサークルピットを繰り広げ、クライマックスにふさわしい熱狂を作り出したのだった。

 アンコールでは、まずAge Factoryとのコラボナンバー「AXL [imai Remix]」を、清水英介とJUBEEの2人であえてリミックスバージョンで披露。チルな曲調に加え、JUBEEと観客のコール&レスポンスがピースフルな空気を作った「Slowsurf feat. Shimizu Eisuke, in-d (acoustic ver.)」を含め、見どころはその他にもいろいろあったと思うが、一番はやはり「カラオケで一番歌った曲」とJUBEEが照れ笑いしながら紹介したDragon Ash「Fantasista」のカバーだったかもしれない。

 「声出していくぞ!」とシンガロングを求めたJUBEEに応え、観客が声を上げる。しかも「前列! 後ろ! はい、全体で!」というJUBEEのリクエストに観客がしっかりと応え、ハッピーなバイブスとともにフロアとステージが1つになった。

 Dragon Ashの代表曲中の代表曲と言えるライブアンセムなのだから、当たり前だろうと言えば確かにそうかもしれない。しかし、初のフルバンドセットのライブという挑戦を大きな足跡に変えながら、この日何度かそういう場面があったように、自らの原点に立ち返ることをJUBEEが観客とともに楽しんだ意味は大きかったと思う。なぜなら、JUBEEというアーティストが音楽を続ける動機の1つには、無邪気とも言い換えられる純粋な音楽愛があると思うからだ。そして、JUBEEはさらなる夢を膨らませる。

「KjさんやJESSEさん、上田剛士さんと一緒に曲を作れたことで、去年、自分の中でもう上がっちゃった気がして、音楽をやっている理由がわからなくなっちゃったんだ。だから、それを1年考えていたんだけど、まだまだ足りねえって気持ちはずっと残ってたから、音楽は続けたいという気持ちはめちゃめちゃあった。それが俺にとってはバンドだったわけだけど、なぜバンドなのか。それはカルチャーをもっともっと大きくしていきたいからなんだ。バンドセットのライブを観て、影響されたっていうラッパーがいたりとか、ヒップホップのライブを観て、影響されたっていうバンドマンがいたりとか、そういう架け橋になって、どんどん広げていって、こういうグレーゾーンをもっともっと作っていきたい。今日は、すごいグレーな素敵なフロアでした。マジでありがとう。最後はみんなで声を出して、1つになって終わりたい」

 最後の最後に披露したのは「UNDERDOG」。昨年の秋からライブで披露しながら、観客と作り上げてきたJUBEEの新しいアンセムだ。

「足りない足りない。声出しな」

「足りない足りない。まだ来いよ。心を解放してくれ、もう1回!」

 様々な感情のアップ&ダウンを繰り返しながら、観客の気持ちを揺さぶってきた90分。最後はそこにいる全員でシンガロングしながら、ピースフルなマインドに導いていった。

「“RAP ROCKERS”、これからも続けていきたいと思うんでよろしく!」

 JUBEEと、彼の思いに共鳴したバンドマンやラッパーたちが、これからどんなグレーゾーンを作っていってくれるのか。大いに期待している。

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