優河、単身渡米と変化の日々を超えてビルボードライブへ 「『私はこれでしかない』と思えています」

優河、変化の日々とビルボードライブ

 優河が5月2日にビルボードライブ公演をビルボードライブ横浜で開催する。

 アルバム『Love Deluxe』のリリース、単身渡米、そしてEP『All the words you said』のリリース。さまざまな変化を受け、心が揺れる日々を過ごしたと赤裸々に語ってくれたが、彼女が今たどり着いたのは、“歌う人”としてのあり方の真髄だ。いかに隔たりをなくせるかを追求すること、しかし力みすぎずに柔軟であること、「誰かの癒しになったらいい」と心から願うこと……。そうすれば自分も、目の前のオーディエンスも、同じ空気に包まれる。そういう場を持つことが、歌うことの意味だったのかもしれない。そんな確信が今の優河を作っている。

 彼女は、今回3年半ぶりにビルボードライブのステージに立つことになる。バンドを引き連れ、空間全体がひとつになれる場所に、今の優河が隔たりを手放した声を響かせるのだ。公演を目前に控えた今、ビルボードライブ横浜で話を聞かせてもらった。(編集部)

ビルボードライブ前に訪れた変化の季節「ライブに挑む気持ちが180度変わった」

優河(撮影=茉那実)

――ビルボードライブでのライブは3年半ぶりということですが、まず優河さんにとってビルボードライブというのはどんな会場ですか。

優河:空気を共有しやすいなと思っています。ライブハウスって、“私たちとお客さん”っていうエネルギーでどちらかから矢印が向くような関係性になりやすいけど、ビルボードライブはひとつの空間にみんなで入っている感覚がちゃんとあるので、その空気に一緒に包まれるのを楽しむというか。

――それって優河さんがライブで目指すものに近い空間なのかもしれないですよね。

優河:そう思います。最近、ライブへのモチベーションがすごく変わってきていて。少し前までは、「私が楽しませなきゃ」とか、「果たしてみんな楽しんでくれてるだろうか?」みたいな不安が結構強かったんです。でも、ある時、私ってエンターテイナー的に楽しませることは苦手だなってことに気づいて。私の場合は楽しませることが目的なんじゃなくて、歌を通して、お客さんがいろんなことに想いを馳せたり、日々の疲れや嫌なことが流れていくような場を作って、結果的に誰かを癒してあげられたらいいんだなってことを思ったんですよね。もちろん楽しんでもらえたら嬉しいけど、私が楽しませなくていい。しかも、そのためには自分がリラックスして癒された状態で歌わないとダメなので、ライブに挑む気持ちが180度変わって。“何もしなくていい”というか、ただそこに立って歌を歌って、音のなかで私もみんなも癒されている――そういう空間を持つことが自分にとってすごく大切なんだなって思えるようになりました。

――そのことを実感したのには、何かきっかけがあったんでしょうか。

優河:去年、友人に誘ってもらってエリック・クラプトンのライブを(日本)武道館で初めて観たのがきっかけですね。なんというか……演奏を聴いていたらグッと武道館が小さくなっていって、まるで砂浜に波が入っていくように、そこにいる人たちがじゅわ〜ってゆっくり癒されていってる感じがしたんですよ。それを観た時に「あ、これじゃん!」「こういうことが音楽にはできるのか!」って、ズドンと雷に打たれたみたいな感覚になって。それから改めて、両親からもらったこの声で歌うっていう自分の生業に立ち返ってみた時に、何かを伝える以上に、音が揺れて波動となったものを共有するためのツールとして私の声があるんじゃないかと思って。ずっと「楽しませなきゃ」っていう変なプレッシャーがあったから、体もカチカチのまま歌ってた気がするけど、今はすごくゆったりと歌えている感じがするんです。

――優河さんはこれまでもいろんなライブを観てきたと思うので、今話してもらったことに気づきそうなタイミングって過去にもあったんじゃないかと思うんですけど、昨年そうなったのは、そもそも優河さん自身に何らかの変化が起きていたからなんじゃないかとも思いました。そこはいかがですか。

優河:去年の頭にプライベートで心がぐちゃぐちゃになるような出来事があって、何カ月も泣き腫らしながら過ごしていたんです。でも、それがあったから、人生を通して何をしていきたいのかを考えたり、「これはどういうことだろう?」って自分の内側と向き合ったりすることもできた気がしていて。なぜ自分が怒ったり、悲しんだりするのか――そこを突き詰めていくと、起こった出来事と向き合うだけじゃなくて、その奥にいる自分自身ともしっかり対話しないといけないから、「いちばん気づくべきことに気づけ!」って体を揺さぶられたような時期だったというか。

――なるほど。

優河:クラプトンのライブも、もう泣き腫らしたような顔で観に行って(笑)。「自分はどうしたいんだろう?」「どうやって生きていきたいんだろう?」って漠然と考えながらライブを観ていたから、さっきみたいなことに気づけたのかもしれないですね。クラプトンを観ている自分、プライベートに悩む自分、やりたいことに向き合っている自分って、それぞれ違うような気がしていたんですけど、やっぱり全部が繋がっていて。そういう大きな波のなかにいる自分に「気づけ!」って言われているような感覚でした。

――さっき、武道館で感じたことを「砂浜に波が入っていくように」っていう視覚的なイメージで説明してくれたじゃないですか。そういう感性が出てくる時の優河さんって、「めちゃくちゃ優河してるな」って思うんです。

優河:あはははは。本当ですか(笑)。

――『Love Deluxe』では、それまで音楽のなかで出せていなかった優河さんを表現して、認めてあげられたことに大きな意味があったような気がするんですけど、それを経て、いろんなことにも思い悩んで、もう一度優河さんらしい感性でアートや音楽に接してみた時って、今まで見えていなかったものが見えてくるのかもしれないなって。

優河:本当にそうですね。たしかに、優河してるなあって思いました(笑)。2024年の末、ちょうど『Love Deluxe』を出したあとに単身渡米したんですけど、そこで得た感覚も大きかったのかなと思っていて。

優河(撮影=茉那実)

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