歌声分析 Vol.11:SUPER BEAVER 渋谷龍太 “今、この瞬間に生まれる声”の響き、言葉の芯を射抜く熱量の正体

歌声分析

 アーティストの魅力を語るうえで、楽曲だけでなく“歌声”そのものに宿る個性にフォーカスする連載「歌声分析」。声をひとつの“楽器”として捉え、音楽表現にどのような輪郭を与えているのかを掘り下げていく本連載では、技術的な視点からさまざまなアーティストの歌声を紐解いていく。

 第11回目となる今回は、SUPER BEAVERの渋谷龍太を取り上げたい。

言葉一つひとつに宿る到達点のコントロール、一瞬の震えが生む説得力

 東阪ドームツアーのチケット即完直後に、全国ホール&アリーナツアーを発表。さらに、結成20周年の最終日となる3月31日と、21周年のスタートとなる4月1日の2日間には、ファンクラブツアー『都会のラクダSP at 日本武道館 〜ラクダフロムトウキョウジャパン〜』も追加席が出るほど。今、日本の音楽シーンの中でも、屈指のライブ動員力を誇るのがSUPER BEAVERだ。

SUPER BEAVER「美しい日」【「都会のラクダSP at ZOZOマリンスタジアム」 2025.06.21】

 渋谷龍太(Vo)のボーカルの特徴は、言葉一つひとつにピーク=声のエネルギーが最大化する瞬間を作り、その到達の仕方をコントロールできる点にあると考える。声の出力がピークに達するまでの過程を固定しないことで、音は一点に留まらず、常に運動し、聴覚上での摩擦が残る。喉をやや強めに締めることで生まれるものだろうが、倍音のザラつきもそこに重なり、声にフィジカルな引っかかりが生まれている。だから、渋谷の歌は再現されたものではなく、その瞬間に立ち上がる“今、生まれている声”として響く。その歌声の基盤となっているのが、チェストボイス(地声)の持続力だ。チェストボイスのレンジが広く、高音域においても地声の質感を維持し続けることができる。そして重要なのが、独特のドライな声質だ。温度は高く情熱的な熱気を帯びながらも、湿度が極めて低い。鼻腔で響かせるよりも先に喉から口へ直接声を放つようにして声が抜けて聴こえてくる。

 本稿では、SUPER BEAVERの楽曲をピックアップしながら、渋谷のボーカルの魅力を掘り下げていきたい。

 最新曲「燦然」(『新劇場版 銀魂 -吉原大炎上-』主題歌/2026年)では、歌い出しから、前述したピークのバリエーションが際立つ。〈抗い続ける 弱さと、後悔に/護りたいものを 護りたい 半端者なりにさ〉までは、文節終わりの母音を少し長めに発音することで、ピークの中に揺れを演出している。その次の〈日和見るな尊厳〉の〈日和〉の“ひ”は、一音の立ち上がりの瞬間にピークを持ってきている。さらに、アタックを強調しすぎないことで、スタッカート的なアプローチでも流れを切らず、次の音へつないでいる。この途切れない流れが、冒頭からサウンドの一部となりグルーヴを作り出している。

SUPER BEAVER「燦然」MV (『新劇場版 銀魂 -吉原大炎上-』主題歌)

 「名前を呼ぶよ」(映画『東京リベンジャーズ』主題歌/2021年)で注目してほしいのは、語尾の処理だ。歌詞の〈名前を呼ぶよ 名前を呼ぶよ あなたの意味を 僕らの意味を/名前を呼んでよ 会いに行くよ 命の意味だ 僕らの意味だ〉という部分には、タイトルの言葉も入っていることから、歌詞の中でも彼らが最も届けたいメッセージが込められていると考える。このフレーズにおいての言葉終わりの母音は“お”が圧倒的に多く、渋谷はトーンでアプローチを揃えている。SUPER BEAVERで詞曲のほとんどを手掛ける柳沢亮太(Gt)は、渋谷の声の魅力を熟知しているからこそ、韻を踏むように母音をこれだけ重ねているのではなかろうか。

SUPER BEAVER 「名前を呼ぶよ」MV (映画『東京リベンジャーズ』主題歌)

 ここで渋谷は“O”=“お”の母音だけで多彩な処理を聴かせている。“を”を“ぅお”と明確に発音し、ほかの“O”と差異をつけていることに加え、音を伸ばす際に、次の単語が始まる前の一瞬に余白を残している。この余白の長さもフレーズ毎に微妙に異なっているのだ。この違いによって〈名前を呼ぶよ〉という言葉と聴き手の距離感が、徐々に変わっていっている。

 次に取り上げたいのが「証明」(2015年)だ。この曲で渋谷は、随所で瞬間的な倍音を出し、それが楽曲のフックになっている。たとえば〈僕もあなたも 一人なんだろう/産まれて死ぬまで 一人なんだろう〉の〈一人〉の“と”を高音域に持っていき、抜けた声で倍音を響かせている。さらに〈命は初めて輝く〉では〈輝く〉の“が”以降で倍音も響く。加えて、この“が”では言葉の重心を少し後ろにずらすことで〈輝く〉という言葉の中で感情の波を幾重にも作り出している。ピークの声の揺らぎと倍音が重なることで、〈輝く〉という単語がまるで実際に発光していくように感じられる。

SUPER BEAVER「証明」MV

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