椎名林檎×向井秀徳、SennaRin×川上洋平、家入レオ×斎藤宏介……男女ボーカルで響かせる新鮮なアプローチ

 昨年、大きな反響を呼んだ男女ボーカルのコラボ曲と言えば米津玄師と宇多田ヒカルの「JANE DOE」だろう。圧倒的な表現力を持つふたりの歌声が美しく交わった見事な共演だった。そんな代表的なソロシンガー同士のコラボが話題になった一方、昨年暮れから今年に入ってバンドアーティストとソロシンガー、それも男女ボーカルによるコラボ曲が次々と発表されている。どれも普段の活動とは異なる表現アプローチが際立つ楽曲ばかりだ。本稿ではそんな魅力的なコラボレーションの面白さを紐解いてみようと思う。

椎名林檎×向井秀徳「SHI・GE・KI」

 椎名林檎が3月11日にニューアルバム『禁じ手』をリリースした。自作曲を封印し、他アーティストからの提供曲やコラボレーションに絞って構成された作品だ。本作から向井秀徳をゲストボーカルに迎えたZAZEN BOYSの「SHI・GE・KI」のカバーをピックアップしたい。原曲の切れ味あるバンドサウンドをさらに拡張し、ホーンセクションとピアノが暴れる緊張感に満ちたトラックの上で2人がボーカルをせめぎ合わせている本楽曲。まず驚くのは椎名が低音で繰り出す「繰り返される諸行無常/蘇る性的衝動」という、向井楽曲にお馴染みのフレーズだ。凄みのあるロートーンが一気に楽曲の世界へと引きずり込む。そこから歯切れの良いリズミカルな発声、呟くように、しかし滔々とした歌唱、そしてとろけるような囁き声と、次々に歌声を変化させる椎名に対して、こぶしの利いた節回しをぶつける向井。両者ともに強烈な個性を放つ表現者であり、何度共演を重ねても常に新鮮で刺激的な化学反応を巻き起こし続けているのだと、あらためて気づく。

SennaRin×川上洋平「ENDROLL」

 現在公開中の映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』の挿入歌として話題なのが、ソロシンガーのSennaRinと[Alexandros]の川上洋平がコラボした「ENDROLL」。1月31日より配信リリースされたこの楽曲は、映画の劇伴を担当している澤野弘之が作曲したメロディに乗せ、シネマティックなスケール感で切実な歌を響かせている。川上は自身がパーソナリティを務めるラジオ番組『おとをおかし』(TOKYO FM)で、「同じラインをハモるのは初めてだった」と語っており、持ち味のハイトーンボイスをSennaRinの荘厳な歌声と息を合わせて届けている。バンドのフロントマンとして放つ豪快で迫力ある声とはまた異なる、柔らかく伸びやかな歌唱は彼のボーカリストとしての多面性を軽やかに提示している。

川上洋平 [Alexandros]×SennaRin「ENDROLL」Music Video

礼衣×川谷絵音「ハートマーク feat.川谷絵音」

 ツユの元ボーカル・礼衣は、ソロ3作目となる楽曲「ハートマーク feat.川谷絵音」を1月21日にリリース。しっとりとしたトラックとサビで劇的に展開するメロディが特徴のこの楽曲。川谷は自身でリリックも書き、indigo la Endやゲスの極み乙女などで聴かせる歌唱とは大きく異なる、硬派なラップと押韻で楽曲に彩りを与えている。礼衣の力強い歌声と対比するようなたおやかで鋭い彼の歌唱は、終わりかけの恋を描く楽曲にもマッチし、詩世界を立体的に仕上げている。川谷をラップパートに迎えるのは珍しく、その自然なライミングは今後もさまざまな局面で聴かせてほしくなる魅力に満ちている。

ハートマーク – 礼衣 feat.川谷絵音 Music Video

家入レオ×斎藤宏介「Mirror feat.斎藤宏介」

 昨年10月、家入レオは斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN/TenTwenty)とのコラボ曲「Mirror feat.斎藤宏介」をリリースした。家入にとって初の男性アーティストとのコラボであり、斎藤も女性シンガーの楽曲への客演はこれが初めて。双方にとって新鮮な共演だったが、非常によく馴染んでおり、抜群のハーモニーを披露している。声を重ねるパートが印象的だが、ふたりの歌声はまるで溶け合うように響く。両者とも涼やかで清らしい声質を持ち味としているが、楽曲のテーマ自体が“自分自身との対話”という点もこの重なりの魅力を際立てている。

家入レオ - 「Mirror feat.斎藤宏介」(Music Video)

藤原さくら×安部勇磨「little baby feat. 安部勇磨」

 藤原さくらは最新アルバム『uku』に「little baby feat. 安部勇磨」を収録。トロピカルでどこか脱力したムードが心地よく、安部がボーカルを務めるnever young beachが志向してきた軽やかさをそのまま藤原のもとへ運ばれてきたようなナンバーだ。この楽曲はキーの低いところでふたりの歌声が重なり合う点に魅力がある。それは“混ざり合う”というよりも、気楽にお喋りしているような、そんなのどかな雰囲気のデュエットなのだ。リラックスしながらも芯の通った藤原の歌声に、安部の渋みと脱力のコントラストが加わり、円熟味すら感じられる。双方の持ち味を存分に引き出し合ったコラボと言えるだろう。

藤原さくら – little baby feat. 安部勇磨 (Music Video) – 360 Reality Audio

 声質の異なるシンガー同士、記名性の高いボーカリスト同士の新たな表情、そして男女のキーの差異によって生まれるドラマと調和。こうしたコラボ曲には企画性以上の必然性が宿っている。コライトやコラボが当たり前にもなってきた今、さらなるユニークなタッグが今年も続々実現していくことに期待したい。

※1:https://radiko.jp/#!/ts/FMT/20260131123503

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