sumika、“感情”と向き合って紡いだ新たなる一歩 『ドラえもん』との巡り合いがバンドにもたらした推進力

sumikaが11枚目となるシングル『Honto』をリリースした。『映画ドラえもん 新・のび太の海底鬼岩城』主題歌としても話題になっている表題曲は、“人間らしさ”について考えさせる作品のテーマとも深いところで共振しており、幼い頃から『ドラえもん』好きだというsumikaの3人による作品愛もたっぷり詰まっている。幾田りらをゲストに迎えた「赤春花 (feat.幾田りら)」、『映画ドラえもん 新・のび太の海底鬼岩城』にインスパイアされた小川貴之(Key/Cho)作曲のバラード「Blue」なども含めた充実のニューシングルは、バンドの新たな一歩としての手応えも十分だという。そんな今作の制作や『ドラえもん』に対する思い入れについて、片岡健太(Vo/Gt)、荒井智之(Dr/Cho)、小川にたっぷりと話を聞いた。(編集部)
※以下、記事内では『映画ドラえもん 新・のび太の海底鬼岩城』の一部ネタバレを含みます。
「Honto」の始まり——「感情を優先してしまうことに名前をつけたい」(片岡)
——現在公開中になりますが、改めて、『映画ドラえもん 新・のび太の海底鬼岩城』の主題歌を担当することが決まった時の心境から聞かせてください。
片岡健太(以下、片岡):もうこれ、ダジャレみたいになってるんですけど、「本当?」って思いました。
——あははは。
片岡:それぐらい信じられなかったですね(笑)。日本の歴史の中でも長く愛されている作品と、まさか自分たちの音楽が交わるとは。あったらいいなとは思ってましたけど、そこまで具体的には想像してなかったので。それが実現するってなった時に、ちょっと夢見心地な気持ちになりましたね。
小川貴之(以下、小川):報告を受けた日は、家に帰るまでの間もずっとふわふわしてたのを思い出しました。それから音楽を作っていくうちに、だんだんと噛みしめながら今に至るんですけれども、決まった瞬間はやっぱり信じられないぐらいのことだったので、びっくりが一番大きいかったですね。
荒井智之(以下、荒井):子供の頃から慣れ親しんできた大好きな作品だったので、とてもびっくりしました。そこにバンドとして音楽で一緒に作品を作るお手伝いができるのはすごく幸せなことだなと思います。

——「慣れ親しんできた」とありましたが、『ドラえもん』は皆さんにとってどんな作品となっていますか。
片岡:僕は姉がいるんですけど、家のテレビでは家族の誰かが『ドラえもん』にチャンネルを合わせてる状況だったので、自分の意識でオンオフをつける以前に、『ドラえもん』がいる方が逆に自然なぐらい、自分の生活の中の一部に入ってましたね。
荒井:小学生の時に『ドラえもん』が好きな友達と二人で“ドラえもん愛好会”を作ってました。友達が会長、僕が副会長。休み時間に『ドラえもん』を観た感想や豆知識、好きなひみつ道具をたくさん話してたのが、いい思い出です。
小川:たぶん人生初映画が『ドラえもん』だったと思うんですよね。『のび太の創世日記』(1995年)だったか、『のび太と銀河超特急』(1996年)だったかな。母親と二人で映画館に行った記憶があって。『ドラえもん』の映画を観に行くと入場者プレゼントがもらえるし、帰りに売店でパンフレットを買ってもらえるのがご褒美的な感覚だったのを覚えています。その映画に一緒に携われるのが嬉しかったんですけど、今回、この作品と携わるうちにいろんな見え方があるなって思いました。
——大人になってから触れるとまさに見え方が変わってることに気づきますよね。通算45作目となる本作は1983年に公開された『映画ドラえもん のび太の海底鬼岩城』の再映画化となりますが、原作や脚本などを読んでどんな感想を抱きましたか?
片岡:のび太くんが水中を走るひみつ道具の水中バギーと話している中で、機械の水中バギーは「人間がなんでこんなに非合理的なことをやるのかがわからない」って問いかけるシーンがあるんですよね。のび太くんは「正解じゃないとわかっていても、自分の感情を優先しちゃうことがあるんだ」って言っていて。そこが今、2026年現在、わりとタイムリーな悩みというか。テクノロジーとして身近な生活の中にAIがある中で、どこまで自分の感情を優先させて、どこまで合理的に動くのかっていう線引きがグラグラ揺らいでいるような気がしたんです。時にテクノロジーに依存したり、時にそれを拒絶しすぎたりする。バランスを取るのが難しいんじゃないかなっていう問題を今一緒に考えていけたら、2026年に『新・のび太の海底鬼岩城』を公開して、自分たちが音楽を担当させていただく意味があるんじゃないかなっていうふうに思って曲作りに臨みました。
荒井:すごく今らしいし、とても人間らしいメッセージだなと思いました。しかも、大人になった今だからこそ、より深い受け取り方ができるなと思っていて。年を重ねるにつれて、社会や世界のルール、制約、暗黙の了解みたいなものを少しずつ覚えていってしまうじゃないですか。だから、昔ほど純粋に自分の感情と向き合えない部分が増えてきてるのかもしれないなとも感じましたね。子供の頃はもっとピュアだった気がするなって。子供はもちろん、大人にも、人間らしい心とは何かっていうメッセージを伝えてくれる作品なんじゃないかなと思いました。
小川:脚本を読ませていただいた上で、自分たちの人生にも置き換えられるなと思っていて。バンドをやっていること自体、合理的かと言われたらそうではない。メンバーと運命的に出会って、周りが就職していく中でバンドを続けていくっていうことを選んだ。全然ご飯を食べられない時期があったし、それこそAIを使ってバンドの成功率みたいなのを調べたら、すっごい悲劇みたいな数字が出てくると思うんですよ。でも、そういうのを考えてたら目指すきっかけにもならない。やっぱり人の心や感情は数値化できないものだと思うんですよね。そういったものを優先するべき時にちゃんと優先する大切さが明確に描かれてるなと思ったので、自分らしく参加すれば、いいピアノが弾けるのかなとは思いました。
——バンドを選択したっていうことに対しても重なる部分があったんですね。
片岡:そうですね。振り返れば、僕らがバンドを始めた時って、そんなに情報も多くなかったですし、誰かに質問したらベストアンサーみたいなのが出てくるような世の中でもなかった。本当に、メンバーとか身近な友達に「これでいい?」っていうものが1分の1の答えだった。他の分母をあまり持ち合わせてなかったからこそ、盲目にやれたんだろうなと思う。逆にそれはすごく幸せだったとも思うし、今の時代を生きる方も——ある種、便利で幸せだと思うんですけど、やっぱり僕が高校の時より悩みは多いのかなって思ったりはしました。

——のび太と水中バギーの「正しいと正解の違い」というやりとりの中から「Honto」っていうワードを選んだのはどうしてですか。
片岡:正解/不正解ではなく、自分の感情を優先してしまうことにまずは名前をつけたいなと思っていて。そこに向かって曲作りに励んでいくことで、他のメンバーや参加してくださるミュージシャンの方と同じ一本の道を歩いていけるような気がしたんですね。だから、その葛藤に「Honto」という名前をつけて、一旦そこを目指してみんなで行ってみないかという気持ちで、タイトルから作ったんですけど。
——そうなんですね。最初からアルファベットでしたか?
片岡:はい。仮タイトルから「Honto」で変わっていなくて。しかも、その「Honto」はみんな別々でいいから、ある程度抽象度があるものだなと思っていたんですけど、一つだけルールがあるとしたら、「自分が決めた」ってことだけなんじゃないかなと思うんで。そこに向かってみんなで、ミュージシャンとして答えを出していった感じですかね。
——小川さん、荒井さんは片岡さんが作ったデモ楽曲を聴いた時にどんな印象を受けましたか?
小川:デモの時点でかなり緻密に構築されているなって思いました。そこで、自分がレコーディングでどういうアプローチができるかなって考えた時に、寸分の狂いもないリズムっていうよりは、人間らしさを大事にしたいなと思って。劇中でも様々な冒険や紆余曲折があるので、そういった人間らしい波みたいなものを出せたらなっていうのを感じて弾いてみました。
荒井:デモの段階でもうドラムもでき上がっていたので、まずはそこを大事にしたいなと思いましたね。ゆっくりめというか、落ち着いた進行の中でしっかりと一音一音、一歩ずつ歩いていくような音。あとは、マーチングバンドのような軽快なスネアロールが随所に現れているので、ドラえもんたちが歩いていくのを一緒に横で応援するような、見守っていくような雰囲気を感じたので、そこをすごく大事に叩きました。



















