ソロ公演で描いた“櫻井優衣”という物語 「生まれ変わってもアイドルになりたい」――夢を追いかけ続けた12年の軌跡

 アイドルとはなにか。櫻井優衣にとっての、そして、ファン一人ひとりにとっての。櫻井優衣が2月18日にNHKホールで開催した『櫻井優衣 メジャーデビュー記念 ソロコンサート「STORY – A Journey into Yui's Dream –」』は、そんなことを考えさせられる彼女のアイドル人生と矜持が詰まった、“未来しかない”コンサートだった。

 2022年にFRUITS ZIPPERとしてグループデビューした櫻井。2025年には悲願の『NHK紅白歌合戦』(NHK総合)への出場を果たし、今年2月には夢に掲げていた東京ドーム公演を成功させ、名実ともにトップアイドルへと成長を遂げた。今回のNHKホールは言うまでもなくその『紅白』の会場であり、次の4周年アリーナツアー『FRUITS ZIPPER ARENA TOUR 2026』の会場のひとつである国立代々木競技場 第一体育館を目の前に見据えた運命的な場所でもあるが、バラエティやモデル業も含め、ここからさらにメンバー一人ひとりの活動が際立っていく、グループがさらなる“フェーズ”に入る、FRUITS ZIPPERとしても重要な一歩に位置付けられるライブであることは確かだ。

 2013年にアイドルとしてデビューした櫻井は、FRUITS ZIPPERも含め、現在活動12年目。2024年にデビュー10周年を記念した東名阪ツアーを開催し、2025年9月に「キミのことが好きなわたしが好き」でソロとしてユニバーサルミュージックよりメジャーデビューを果たした。今回のコンサートはそのメジャーデビューを記念したものであるのと同時に、コンサートタイトルにも示されている櫻井優衣のアイドル人生に招待する、彼女がこれまで歩んできた物語、アイドルとしての生き様を幕間VTRと楽曲で辿るライブ構成になっている。

 櫻井がMCとして話し始めたのは、なんと開演から1時間30分ほどが経ったアンコールでのこと。口下手な櫻井がどうすれば今の思いを伝えられるか考えての術だったというが、それは完璧ではない自分を完璧に見せる最善の選択であり、12年間というアイドル人生と今の自分にプライドがなければ出来ないだろう。アンコールラスト、緊張から解き放たれた櫻井が、安堵から深夜テンションのように「ははは」と笑いが止まらなくなる、その姿にこの日のために積み重ねてきた日々とファンとの絆が滲んでいたように思えてならなかった。

 「もし私がアイドルになれたら、どんな景色が見えるんだろう」――そんなモノローグから始まるVTRは櫻井が夢と現実を行き来していく。ライブはVTRと連動した演出になっており、楽屋から扉を開け、実際にステージに現れた櫻井は「キミのことが好きなわたしが好き」を皮切りにアッパーチューンの「カーストサマーセッション」、さらにFRUITS ZIPPERの「かがみ」へと繋げていく。FRUITS ZIPPERの代表曲「わたしの一番かわいいところ」にも通ずる“自分を大事に”という根底にあるメッセージ性は変わらず、櫻井のコンサートを一言で言えば“王道のアイドル”という表現がしっくりくる。同時にあらためて驚くのは、ソロアイドルとしてステージに立つということのすごさだ。これは『紅白』で大トリを飾った松田聖子を観ていても感じたことだが、ひとりでステージに立ち、1曲を最後まで歌い聴かせることは並大抵のことではない。歌唱力やダンスの技術はもちろんのこと、ステージに見合った純白のドレスにも負けない華やかさと柔らかな笑顔が櫻井にはあった。

 一方で、ヘッドセットをつけたバーテンダー姿での「You,You,You」から、傘を広げてのFRUITS ZIPPER「BABY I LOVED」、新曲の「Black Coffee」へと続くブロックではロマンチックかつ妖艶な世界観を表現。マイクスタンドを前に、ぶかぶかのシャツの袖が振り付けのポイントになっている「Black Coffee」は、ソロとして新たなジャンルの一曲になっている。また、「Re→TRY & FLY」「スターライトヴァルキリー」「We are Frontier」のFRUITS ZIPPER楽曲3連弾では、KAWAII LAB. MATESから加藤好実、嶋﨑結花、山下ここ、横山かのんをバックダンサーに引き連れ、かっこいい櫻井優衣を打ち出した。「We are Frontier」の〈新天地へご招待〉という歌詞が、今の櫻井と今回のライブコンセプトにマッチしている。

 特筆すべきは、カバーブロック。バックバンドを迎えての「PIECE OF MY WISH」(今井美樹)、「帰りたくなったよ」(いきものがかり)、「未来へ」(Kiroro)の3曲がかつての、そして今の櫻井を表していた。櫻井のアイドルとしての12年間は決して順風満帆なものではなかった。時にはアイドルとしてのステージから離れ、アルバイトをする期間もあった。迷い、遠回りする日々。慣れない場所で着実に重ねていく年数に焦りを覚えながら、それでも温かく見守り応援してくれていたのは母だった。アコースティックギターとキーボードのシンプルなサウンド構成で、櫻井は「未来へ」のAメロ〈母がくれたたくさんの優しさ〉という歌詞から感極まってしまう。途中に出てくる〈自分の物語だからこそ諦めたくない〉という歌詞のリンクにハッとさせられながら、最後まで歌うことを止めなかった彼女の姿に、これまで数えきれないステージに立ってきたことで培われたアイドルとしての芯の強さを見た気がした。万雷の拍手が彼女の涙の歌唱を讃えている。

 本編ラストは、KAWAII LAB. MATESとバンドメンバーを迎え、新曲「ぜんぶ可愛いのせい」から「ずるい、かわゆい」、FRUITS ZIPPERの「君の明るい未来を追いかけて」、「Spotlight」で締めくくり。「君の明るい未来を追いかけて」という意外な選曲に会場はどよめいていたが、櫻井優衣としての始まりの楽曲でもあるのかとも思う。言わずもがな、恒例のコールを“ゆいちゃん”へと変換するファンも流石だ。「Spotlight」では回転するミラーボールの下、櫻井のロングトーンが会場に響き渡っていた。

 「アイドルオブアイドル」――それはKAWAII LAB.総合プロデューサーの木村ミサが、デビュー当時に櫻井へと与えた言葉であり目標。櫻井は“なりたい自分”と解釈し、今もその姿を追い求めている。VTRのなかで櫻井がペンライトを振りながらコールしていた「あいり」=鈴木愛理もまた、櫻井が憧れたアイドルとしての大きな背中だ。筆者が思い起こしたのは、昨年12月にKアリーナ横浜で開催された『KAWAII LAB. SESSION vol.17』でのこと。この日、マスコミ向けの囲み取材にて、初お披露目となるMORE STARから新井心菜、遠藤まりん、高梨ゆなが憧れの先輩に櫻井の名前を挙げていたのだ(※1)。今回ステージに立っていたKAWAII LAB. MATESの4人も然り、櫻井はかつての自分を迎え入れる立場にいる。

 アイドルとはなにか。それは夢を見せてくれる、元気をくれる存在。「生まれ変わってもアイドルになりたい」と話す櫻井優衣は正真正銘のアイドルだ。

※1:https://realsound.jp/2025/12/post-2250749.html

■関連リンク
公式サイト:https://www.universal-music.co.jp/sakurai-yui/
X(旧Twitter):https://x.com/yui_fz0221
Instagram:https://www.instagram.com/yui.sakurai_7/
TikTok:https://www.tiktok.com/@sakuraiyui2
YouTube:https://www.youtube.com/@yuisakurai_official/videos

関連記事