THE ORAL CIGARETTES、SiM、健やかなる子ら、KANA-BOON......盟友が登場するMVに見るバンド同士の信頼関係
ロックの面白いところのひとつは、アーティスト/バンド同士のつながりが、ひとつのバンド自体の物語にも影響を与えるという点だ。特に、対バンイベントや主催フェスなどではそういう絆がドラマを生み出す場面も多いが、MVにおいてもその絆や熱さを目撃できるケースがある。1月7日に公開されたTHE ORAL CIGARETTES「ERASE」のMVも、築き上げられた信頼関係が垣間見える。
THE ORAL CIGARETTES「ERASE」
「ERASE」には、TOSHI-LOW(BRAHMAN)、MAH(SiM)、イチロック(SPARK!!SOUND!!SHOW!!)が出演。本楽曲は、TVアニメ『地獄先生ぬ〜べ〜』第2クール(テレビ朝日系)のオープニングテーマで、ゲストの3人は作品の世界観を再現するかのように鬼や悪魔の特殊メイクを施して登場。強烈なインパクトを残した。
山中拓也(Vo/Gt)は、キャスティングの意図について、「『ロックシーンの鬼』といえばTOSHI-LOWさん。鬼がいるなら敵が必要だと思い、『悪魔っぽい』兄貴分のMAHさん。そうなると、あとは『雑魚キャラ』役も必要だったので年上だけどいじれる先輩でもあるイチロックにお願いしました」とコメントしており、「ロックシーンって面白いんだぜ!というメッセージを、シーンの絆を含めて映像化したかった」と語っている(※1)。
本作の面白いところは、それぞれが適材適所と言わんばかりの形で登場している点だ。“鬼”の愛称で親しまれているTOSHI-LOWが特殊メイクをして本格的な鬼として姿を現し、敵役のMAHと、敵役の下っ端としてMAHの指示通りに動くイチロックの力関係が見える構図も絶妙。また、一つひとつのアクションが細かく、必殺技のCGのクオリティも高い。少年漫画の実写化さながらの迫力ある演出の中で、全員がキャラクターに入り込み、躍動する様子も面白さを際立たせる。MVの最後には「カット」の声とともに、THE ORAL CIGARETTESの4人がイチロックも巻き込んで、「こんな雑な使い方して申し訳ございませんでした!」とTOSHI-LOWとMAHに土下座をするコントが繰り広げられる。それぞれのパワーバランスをあえて強調するようなやり取りが笑えるのだが、キャリア関係なくこういった遊びを作品に落とし込めてしまう点からも、信頼関係が垣間見える。
SiM「BASEBALL BAT」
一方で、山中もSiMが2020年5月に公開した「BASEBALL BAT」に出演。このMVは総勢25バンドから、71人と1匹が参加し、圧倒的なスケールが話題になった。Taka(ONE OK ROCK)やcoldrain、10-FEET、Tokyo Tanaka(MAN WITH A MISSION)など、シーンを代表するアーティスト/バンドたちが勢ぞろいし、野球をコンセプトにした映像の中で動く姿は多くのロックキッズを魅了した。一人ひとりの尺は数秒から数十秒程度だが、その中で演者ごとの個性が出ている点が見どころ。なぜか畑を耕すTOSHI-LOWに、水を地面に注ぐ山口隆(サンボマスター)、チアダンサーになって踊るナヲ(マキシマム ザ ホルモン)など、全員の個性が凝縮しているのがこのMVの面白さだろう。終盤には全員が集結するシーンもあり、改めてその数の多さに圧倒される。SiMの呼びかけに応じてこれだけの面々が集結したという事実から、彼らの求心力が感じられ、いかに本作がバンドマン同士の絆に裏打ちされたMVであるかが実感できる。
健やかなる子ら「僕らは花瓶のようなもので」
2025年6月に公開された健やかなる子らの「僕らは花瓶のようなもので」のMVには、上野羽有音(TETORA)、岡本優星(ammo)、アサベシュント(the奥歯's)、山之内ケリー(ミニマムジーク)、ゆきなり(炙りなタウン)が出演。5人がメンバーに扮して演奏する様子を囲むように撮影するシンプルな構成の中、切磋琢磨するバンド同士の飾らない共演に、熱いものを感じる。
KANA-BOON「シルエット New Go-Line ver.」
また、MVではないが、2025年12月に公開された『THE FIRST TAKE』でのKANA-BOONによる「シルエット New Go-Line ver.」のパフォーマンスでは、三原健司(フレデリック)、朝日ともっさ(ネクライトーキー)、玉屋2060%(Wienners)、エンドウアンリ(Grape Kiki)、北澤ゆうほ(Q.I.S.)が駆けつけた。最後のコーラスパートから仲間が登場。全員を一気に映すのではなく、それぞれにフォーカスを当て、仲間の姿が順に明らかになるという演出に高揚感が沸き立つ。そして、背中を押すような分厚いコーラスが楽曲を多幸的に包み上げていくのだ。どのメンバーも笑顔で歌っている様子からも、バンド同士の熱い絆を感じずにはいられない。KANA-BOONの新体制の船出を仲間たちが見届けるような構図が、温かさを印象付けた。
このように、ライブやフェスだけでなく、ゲストが友情出演するMVからもバンドシーンの絆や熱さが感じられる。関係性の深い盟友が、ここぞというタイミングで登場するからこそ生まれる感動がある。
※1:https://realsound.jp/2026/01/post-2270233.html