WINO、解散を経て本格始動へ 23年ぶりの復活ライブで示した音源以上の衝撃、“落ちながら昇る”不変の力

 前の予定が押した。遅刻しそうだ、急がなきゃ。JR新宿駅から埼京線に乗り込む。なんとか間に合う時間に電車に乗れた。恵比寿駅から久しぶりにLIQUIDROOMへ向かう。

 2025年の年末、WINOの復活ライブを観た。WINOは2002年に解散、昨年に突如再始動が発表され、吉村潤(Vo)と久永直行(Gt)による2人編成で1999年以来25年ぶりとなる『FUJI ROCK FESTIVAL '24』を含むいくつかのイベントに出演、2025年より本格的再始動とアナウンスがされていた。

 僕は解散前のWINOを観ていない。2001年には存在を知ってアルバムを聴いていたけれど、翌年には解散してしまった。当時WINOを繰り返しピックアップしていた『snoozer』誌に掲載されていた解散ライブレポートが、いつになく感傷的だったのを覚えている。僕より少し前の世代の人にとっては、きっととても大切なバンドなんだろう。そんなことを当時思っていた。

 それくらいの距離感だから、内側に熱を持って観ていたわけじゃないし、過去のライブとの比較もできない。ただ、単体のライブとしてとてもよかったことははっきりと言える。何より、最近観たライブの中でも音響が抜群によかった。音は轟いているけど、分離がはっきりしている。ベースのフレーズの細かいところも聴こえるし、キックもハイハットもきれいに聞きとれる。ギター2本も混ざりきらずにそれぞれのフレーズが追える。それでいて全体のかたまり感もある。大抵のバンドのライブは結局音源の音の方がいいなと思うのだけど、今回に関しては音源以上の音響を実現していた。

 そして、吉村潤(Vo)の声がよく出ており、WINOで最も個性的な声の質感が強く感じ取れた。20代の頃に彼が残した音源に遜色ない、あたたかい層であたりを包み込んでいくような歌声が響いている。不遜さと優しさが同居するような表情と佇まい、黒いシャツを着た立ち姿もバッチリだ。これで、いける。今日は絶対に楽しめる。そう思った。

 今回の復活では、ベースに中尾憲太郎が参加。1曲目「The Action」がはじまると同時に「ベースがよすぎないか……?」と思ってステージを確認したら、NUMBER GIRLやART-SCHOOLのライブで何度も観ているベーシストが立っていた。彼はなんであんなにもいい音でベースが弾けるんだろう? おそらく右手の使い方が人と違うんだろうけど、それにしてもあそこまで強烈な印象を与えるベーシストはいない。

 ベースの役割が大きいファンクやジャズのライブならまだしも、ロックバンドでは本当にいないと思う。フレーズ自体は特段難しくなさそうなルート弾きでも、存在感が違うのだ。心地よい重みがある。気づいたらベースに乗せて体を揺らしてしまう。音を鳴らすと同時に楽曲を別のものにする瞬間を目撃して、この場に居合わせてよかった、あれを後世に語り継ぐべきだ、と思った。

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