RADWIMPS 20周年ツアーファイナル徹底レポ 山口智史もサプライズ登場、バンドの歩みが凝縮された特別な夜
2025年12月27日、有明アリーナ。RADWIMPSのメジャーデビュー20周年を記念したアリーナツアー『RADWIMPS 20th ANNIVERSARY LIVE TOUR』が、9都市17公演の旅路を終えた。そして、この夜、10年前にバンド活動を休止していた山口智史(Dr)が、再びRADWIMPSとして音を鳴らした絶対に忘れられない時間がそこにあった。
RADWIMPS 20周年ツアーファイナル ライブ写真をすべて見る」
「RADWIMPSを見つけてくれてありがとう」ーー歴史と感謝が滲むステージ
場内が暗転し、デジタルと生音が溶け合うオープニングSEが空間を満たしていく。ステージにメンバーのシルエットが浮かび上がると、1万3千人の歓声が一斉に立ち上がった。1曲目は「ふたりごと」。照明は落としたまま、野田洋次郎(Vo/Gt/Pf)の声とバンドアンサンブルが闇の中に広がる。客席からは自然と歌声が重なり、野田が短く「ありがとう」と返す。そこからバンドサウンドが熱を帯び、ドライブしていく様は、20年という時間を背負いながらも、いまだ走り続けるこのバンドの姿そのものだった。
続く「まーふぁか」では、最新アルバム『あにゅー』の息吹が会場を塗り替える。赤い閃光のようなライティングが走り、LEDビジョンにはメンバーの演奏映像とサイケデリックなモーショングラフィックが重なる。今回のツアーからサポートに加わったギターの白川詢、今や鉄壁となったツインドラム体制を担う森瑞希とエノマサフミーー新しい編成が生み出す、新しいバンドグルーヴ。ニューウェイヴの香りを纏いながら、RADWIMPSは過去ではなく現在形の音を鳴らしていた。
「NEVER EVER ENDER」で空気が一気に開ける。4つ打ちのキックに合わせてクラップが湧き起こり、シンセを弾いていた武田祐介(Ba)が持ち場を離れて跳ね、野田も白川もステージを自由に駆け回る。野田がセンターステージまで走り、「会いたかった!」と叫ぶ。声を求められたオーディエンスが応え、「ウォーウォーウォー!」のコーラスが渦を巻く。生命力がほとばしる、という表現が似合う光景だ。
MCで野田が口を開く。
「ツアーが終わるのが、信じられないくらい早くて。本当にあと30、40本できるんじゃないかってみんなで話していて。そのエネルギーをみんなに1日で注入するということでよろしいでしょうか? 終わりよければ全て良し、ということわざがあるらしいんですよ。今日、1万3千人がとんでもなくいい2025年だったなと思えるような1日にしたいと思います。最後までよろしくお願いします」
「ます。」のイントロで歓声が弾ける。ポップパンクの疾走感が会場を駆け抜け、「ワールドエンドガールフレンド」ではノスタルジックでロマンティックな気配が色づき、武田のベースラインが歌のように響き、野田のボーカルが伸びやかに空間を満たす。「Tummy」ではレゲエのフィーリングが漂い、武田がシンセでスティールパンの音色を奏でる場面も。優しいアルペジオに導かれた「me me she」と短いMCを挟んで「賜物」へ。
「賜物」は、2025年3月から放送されたNHK連続テレビ小説『あんぱん』の主題歌であり、RADWIMPSの2025年を象徴する1曲でもある。一筋縄ではいかない多面的なサウンドプロダクションの中に、どこまでもRADWIMPSのシグネチャーが息づいている。野田、武田、白川がセンターステージに集まり、野田が歌いながら武田の肩に手を回す。言葉を超えた結束が、伝わってくる。歌い終えると、野田は客席に向かって深々と頭を下げた。
「棒人間」では、野田がワルツ調のピアノを弾き始める。が、途中で手が止まった。
「あー! 間違えたと言っていいでしょうね、今のは。ここまで完璧だったのになぁ」
客席から笑いと歓声が起こり、改めて演奏が始まる。スクリーンに歌詞が映し出され、まるで文豪のひとり言が、人間という存在の本質を射抜くような歌詞が会場を包む。
ここで、RADWIMPSの20年を振り返る映像が流れ始めた。貴重なメジャーデビュー前夜のライブ映像。そこに野田と武田のインタビューが挟まれる。「止まってもおかしくない瞬間は20年バンドをやっていると数多くあった」と語る野田。曲が生み出せなかった日々、東日本大震災、そして、山口智史の無期限休養。武田は「智史の時は大きなターニングポイントだった。そのあとに控えていた10周年で決まっていたことがあったから、ここで終わらせるのは違うと思った」と振り返る。
その後も、バンドの危機と希望は幾度となく交錯した。新型コロナウイルスの影響で全公演中止となった2020年のツアー、約5年ぶりの海外ツアー、桑原彰の脱退、そして昨年10月にリリースされた11thアルバム『あにゅー』。このアルバムは、20年の蓄積を経てなお更新するRADWIMPSの音楽力を提示する傑作となった。野田はこう言ったーー「RADWIMPSというバンド名をつけた思想をいまだに追いかけ続ける」。
映像の最後に、直筆のメッセージと2人のサインが映し出された。
「RADWIMPSを見つけてくれてありがとう」
「告白」はセンターステージで、野田と武田を中心に最小編成で届けられた。〈これほど誰かで僕の真ん中が いっぱいに満たされるとは/この世界が言うには絶対なんてないけど ねぇここに一つあるよ〉ーーそのフレーズが強く残る。曲が終わり、クリスマスの話題を経て野田はこう続けた。
「大好きな人と愛し合うって奇跡みたいなことなんだよ。あなたが好きな人があなたのことを好きって、奇跡みたいなことだから。慣れるなよ、当たり前になるなよ、好きな人を大事にしてあげてください。一個見せたいものがあるんだけど、いい?」
MVで使用したファートラッパーハットを取り出し、「じゃあこの曲やるか!」と言って「おしゃかしゃま」が始まると、カオティックで革新的なロックサウンドが渦を巻き、野田が指揮者のように楽器ソロ回しをリードしていく。ギターとベースがバトルを繰り広げ、ツインドラムが縦と横のグルーヴを牽引し客席を揺らす。頭を振りすぎた野田の帽子が落ちる。そのまま「DARMA GRAND PRIX」へなだれ込み、熱量は途切れない。最新アルバムからの「DASAI DAZAI」を経て、「三葉のテーマ」「スパークル」「グランドエスケープ」のメドレーへ。野田のピアノで始まり、歌が立ち上がり、解放されていく。新海誠作品との邂逅、音楽と映画の交歓。それもまた、RADWIMPSの歴史に欠かせない一章だ。
「トアルハルノヒ」では、ビジョンに歌詞が映し出される。〈ロックバンドなんてもんを やってきてよかった/まともに話さえ できなかったこの僕が/そんなにも君と 想いを交わしあっていた〉。その実感が、音と歌に乗せられていく。会場全体が感動的なムードに包まれた。
そして、「筆舌」。どこまでも生々しく付帯する重たい感触がしかし、人生の一歩先を照らすフォークロック。ビジョンには広瀬すず主演のMVが流れ、終盤には走馬灯のように映像が駆け抜ける。生きるための走馬灯。会場に張り詰めた緊張感。息を呑むとはまさにこのことだ。〈生きてりゃ、色々あるよな〉ーーその一言が、すべてを包み込むように響いた。
本編最後の曲を前に、野田が再び口を開く。RADWIMPSと20年の核心を紐解くように。
「本当に、嘘みたいで。『RAD! 洋次郎! 武田!』って声をくれて。でも、ある日突然『全部嘘でした、あなたそんな価値はないですよ』って言われてもそうだよなって思うくらい絵空事なんだよね。デビューする前からも、デビューして20年経ってからも、『俺らが何をしたらそんなものを得られるんだろう?』と思うくらい、不思議で。すごい不思議なんです。たぶん一生不思議なんだと思います。あなたが俺のことを、RADWIMPSを知ってくれてるという奇跡は一生馴染めなくて。でも、言ってくれるあなたが目の前にこうやっているから、ありがとうを返したい」
オーディエンスの拍手の中で、野田は続ける。
「RADWIMPSを見つけてくれた、聴き続けてくれたあなたがいて。あなたが生命維持装置となって、あなたがRADWIMPSを今日までちょっとずつここまで運んでくれたんだよね。RADWIMPSをここまで運んでくれてありがとうございます。この先、21年目から本当に何も決めてないんだけど。人生が、今日のライブくらいあっという間に過ぎていくなら、無駄なことなんて1秒もしたくなくて。たぶん、生まれてきて俺が与えられた役割って限られていて。音楽を作って、死に物狂いで作り出して、聴いてもらうってことくらいだから。それをさらにやるんで、また聴いてください。最後の曲、一緒に歌えたら歌ってください」
ライブを終わらせたくない、という野田の気持ちが伝わってくる。本編ラストは「有心論」。噛み締めるように歌い、演奏するメンバーが印象的だった。