Fujii KazeがMVで上げる楽曲の解像度 “視覚化”されるメッセージにより広がり続ける『Prema』の世界
11月28日、Fujii Kaze(藤井 風)が「Casket Girl」のMVを公開した。
「Casket Girl」は、9月にリリースされたアルバム『Prema』の収録曲。MVは、音楽番組を模したパフォーマンスシーンと、Fujiiと女性が車で旅をしているような物語パートの2軸で進んでいく。ステージでパフォーマンスをするFujiiは70〜80年代のロックスターさながらの風貌で、当時の音楽に対してのリスペクトや、この曲がFujii Kaze流の“ロックアンセム”として生まれたことを印象づける。また、「Casket Girl」の歌詞を踏まえれば、ステージで歌う彼は“Casket”(棺桶)から抜け出し、解放された姿とも捉えることができるかもしれない。ロードムービー風のシーンも、ここから新しい未来が築かれていくことを思わせるようなラストになっている。MV全体を通して、とらわれてきた何かから離れて自由になるという楽曲のテーマが表現されているように思う。
『Prema』収録曲のほかのMVも、映像が加わることで解釈が広がり、曲をより楽しめるような作品に仕上がっている。同じように、アルバムリリース以降に発表された「Prema」、「I Need U Back」のMVについても振り返ってみたい。
アルバムの表題曲「Prema」のMVは、穏やかにこちらを見つめるFujiiのクローズアップでスタートする。映像の大半を占めるのは、タイの雄大な自然や、現地の人々の暮らしに溶け込むFujiiの姿だ。現代的なものが映ることのない映像は素朴さと生命力に満ちており、本当の豊かさとは何なのかを考えさせられる。MVのなかでも特に印象的なのが、終盤でFujiiが身一つで雨に打たれながら歌い上げるシーンだろう。その様子は神秘的で、〈You are love itself〉(あなたは愛そのものだ)、〈You are god itself〉(あなたは神そのものだ)というメッセージを力強く視覚化しているように思える。
10月に公開された「I Need U Back」のMVは、一転してポップでにぎやかな雰囲気だ。Fujii自身もダンサーも奇抜な風貌で登場し、一見カオスな世界観が広がるようにも思えうが、そこにはどこか希望に満ちているように思える。もともと、全編英語詞のアルバムを作るきっかけが、制作過程で「燃え尽きたように感じていたから」だと各所で発言していたFujii。この曲には〈My passion has died away〉(僕の情熱は死んでしまいました)、〈go back to those brighter days〉(あの輝かしかった日々に戻れますか)といったように、当時の想いを綴ったような歌詞が並んでいる。そして、MVで表現されているのは、情熱を再び取り戻した喜びだろう。ポジティブなエネルギーが、カラフルで躍動感のある映像から生き生きと伝わってくる。
MVを観ることによって楽曲の解像度が上がり、新たな角度から捉え直すことができるのもFujii Kaze作品の魅力だ。『Prema』のリリースから3カ月が経った今、収録曲のMVを観ながらあらためて楽曲を解釈してみるのもいいかもしれない。