A.B.C-Z、熱量高く“伝統とパフォーマンス”を届けるステージに 『CRAZY ROMANTIC!』ライブ&囲み取材詳細レポ

A.B.C-Zとファンが熱量をぶつけあう『CRAZY ROMANTIC!』

 開演2分前から、「A.B.C-Z」の掛け声に続いて4拍のクラップが鳴り響いた会場。暗転すると、一気にA.B.C-Zの世界へと吸い込まれるような感覚になった。

 待ち侘びるファンを前にスモークがステージを覆う。「CRAZY」「ROMANTIC」と掲げたライブの始まりは、炎とアップテンポな楽曲でのっけから会場を包み込んだ。助走もほどほどにギラギラとした「Go CraZy」で一気にオーディエンスのバイブスを上げていく。

 絶妙な一瞬の間を置いて、イントロからトキメキを誘う「NO MORE YOU」。新鮮さと懐かしさが同居するような、王道のJ-POPでは、伸びやかな歌声を響かせるメンバー。彼らを照らすクレロマフォンライトの揺れも一層激しさを増していった。ロックダンスをベースにした振り付けで、メンバーも音の高まりとともにリズミカルにフォーメーションを変える。そして、90年代アシッドジャズな「Groove O’Clock」と、リバイバルサウンドの音で会場を包み込んだ。

 歌声はもちろん、誰もがノリやすいメロディラインに酔いしれ、彼らの細やかな足さばき、ソロやペア、ユニゾンとメリハリのある美しいフォーメーションで魅了する、これぞA.B.C-Zのステージ。とても初見では追いきれないほどの技巧を凝らした細やかなパフォーマンスに、「もっと観たい! ずっと見ていたい!」と掻き立てられた。

 昨年のツアー『A.B.C-Z Concert Tour 2024 F.O.R』では、新体制のA.B.C-Zを印象づけるコンサートだったが、今回はデビューして13年というキャリアを重ねながら、落ち着いたコンサートを届けるのに加えて、彼らが受け継いできた“伝統とパフォーマンス”をCRAZY(熱狂)に、そしてROMANTIC!(トキメキ)に届ける、“熱量”をテーマに掲げた。

 その言葉通り、のっけから彼らの世界へと引き込み、この上ない没入をもたらす。独自の音楽性をベースに、軽やかで美しいダンス、バチっと決めるフォーメーション、華やかなアクロバット。そしてレーザーや照明、スクリーンのグラフィックなどを巧みに操るステージにキャリアを滲ませながら、オーディエンスとともにさらなる高みへと進んでいく。

 キレもあればふわりとした浮遊感も纏う次にどんな動きをするのか、想像のつかない面白さと、激しさもありながら品を保ったまとまり。そして、楽曲の世界観を踏襲したドラマチックな振り付けや展開に目を奪われる。

 新体制となってから2回目となる今回のツアー。これまでとは物理的に見せ方も変わってくるのだが、カノンやユニゾンなどを組み合わせ、4人のスキルや魅力を止めどなく、リズミカルに発揮していく。補うというよりも、新たに構築したという新鮮味のある印象で、さらに魅力が引き出されていた。観客も安心して彼らのステージに身を委ねられるのは、A.B.C-Zがこれまでに培ってきたキャリアとスキル、くっきりとした個性の賜物だろう。

 そして囲み取材のコメントにもあったように、近場から上階の客席にまで姿を見せたメンバーたち。できるだけ全員と目を合わせようというような意気込みが伝わり、ファンもデコったペンライトやうちわを見せたり手を振ったりと、とびきりの笑顔を返していた。

 前作のアルバム『F.O.R-変わりゆく時代の中で、輝く君と踊りたい。』からリバイバルをコンセプトに掲げ、所属事務所が長きにわたって培ってきた独自の音楽性を盛り込んだ最新作。今作も同様に、A.B.C-Zじゃなければ実現しない、圧倒的な個性を持った世界観を打ち出した。懐かしい感じがするのに新しい……絶妙な音楽の世界へと誘ってくれる。

 MCでは五関がトークを回す。この日の公演は一際気合いが入ったと「みんなの声が大きいからかな」と喜びを語ると、橋本も「降りものものたくさん」と「終電を超えて~Christmas Night」での降る雪の演出を例に挙げると、五関は「わかりやすいな(笑)、みんなの声に比例して!」と笑わせた。オーディションで踊った楽曲の話題では、世代によって課題曲が違うと当時を懐かしむ一幕も。

 そして五関から発表が。「今日はこの場で皆さんにこの場解禁の……」、ファン「えー!」、五関「情報を」、ファン「えー!」と、小出しにしてファンを翻弄する。戸塚も「この情報化社会の中でまだ出てない情報が!」、橋本も「新しい情報が!!」と驚き、塚田も「情報を守ることができてよかった」と安堵するなど、彼ららしい言葉の紡ぎ方で楽しませた。

 五関は、自分が映像を作ったテイで話を進め、ここからは新情報を大放出。12月10日には、A.B.C-Zのシングルのカップリング、55曲を収録した配信アルバム『BEST OF A.B.C-Z-COUPLING BEST-』のリリースを皮切りに、今回のコンサートの模様をTBSチャンネル(CS)で2026年1月31日に放送することも決定。これに伴い、TBS地上波では特別番組が放送予定と、一足早いA.B.C-Zからのクリスマスプレゼント、お年玉のようなビッグサプライズで驚かせた。

 また、五関は「今日、2階、3階行ってないけどお子さんいらっしゃいました?」と聞くと、会場からは子どもたちの声が。五関が「もう一回言える?」と聞くと、「ごせきさまー!」と可愛らしい声が響いた。その子が5歳だと知った五関は「五関の“ご”ね!」と頬を緩ませ、「楽しい? やばい、ずっと会話してたい(笑)」と続け、「楽しんでいってね! 最後までね」と優しい声で呼びかけた。

 そんな一連のやり取りを受けて、戸塚は「そっか、そっかこんな世界があったんだな~」としみじみ。グラスを傾ける姿が浮かぶようだった。塚田も「子どもたちから“ジャスロマ”人気だよね」と続ける。一方、五関はまだ余韻に浸った様子で「飽きられないようにしないとね」「がんばるね、ごせきさま」と、胸に刻むように呟いていた。

 ライブやコール&レスポンス、客席降りに上記のようなトークなど、直接のふれあいの場から、楽曲配信や放送という広範囲に届けるプログラムと、2026年もA.B.C-Zと過ごす時間、“新たな情報”という特大ファンサービスを届けた。

 後半も衣装を変えながら、白を基調とした黒いパイピングをあしらったスーツ姿で一層パワフルにパフォーマンス。少しずつ回転数を上げるようなこの後半のセットリストにも唸った。彼らも勢いはそのままに、楽曲ごとに異国情緒を醸したり、映像を盛り込んだり、雰囲気をガラリと変えながら、畳みかけるようなラインナップで深い没入感をもたらした。

 囲み取材で五関が言っていたように、今回は特別な機構を用いず、彼ら4人のパフォーマンスを前面に打ち出した印象だ。そして、戸塚がファンを“共演者”と表現したように、ファンも積極的に大きな声を上げ、盛り上げて、ペンライトを揺らす。それぞれが目の前のパフォーマンスに夢中になる、その集中と一体感がプレミアムな高揚感を生み出した。

 「A.B.Cra-Zy」「Perfect Sky」とファンと一緒にコール&レスポンスを楽しみ、パワーチャージをするような「頑張れ、友よ!」など、CRAZYに、ROMANTICに、ドラマチックな熱い時間を過ごした。独自路線を歩むA.B.C-Z。彼らの音楽性やパフォーマンスがどう進化していくのか、これからがますます楽しみになるライブだった。

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