Buono!「初恋サイダー」バイラル浮上 カバーをきっかけに広がる名曲とハロプロならではのスキル
Viral Chart Focus
Spotifyの「Daily Viral Songs(Japan)」は、最もストリーミング再生された曲をランク付けした「Spotify Top Songs」とは異なり、純粋にファンが聴いて共感共有した音楽のデータを示す指標を元に作られたランキング。同チャートの11月19日付のTOP10は以下の通り(※1)。
1位:晋平太「ボコボコのMIC」
2位:Naoyuki Chikatani&向井康二&THE TOYS「LOVE SONG」
3位:Buono!「初恋サイダー」
4位:MAZZEL「Only You」
5位:M!LK「好きすぎて滅!」
6位:AOTO「バイオリン」
7位:Hazbin Hotel, Jessica Vosk, Alex Brightman, Sam Haft, Andrew Underberg「Gravity」
8位:ザビャン「トゥントゥントゥンサフールに恋している」
9位:ロザリア&ビョーク&イヴ・トゥモア「Berghain」
10位:ZXKAI,slxughter「NO BATIDÃ」
Buono!「初恋サイダー」が、バイラルチャートで浮上している。きっかけは、11月13日放送の『ベストヒット歌謡祭2025』(読売テレビ/日本テレビ系)で披露されたスペシャルユニットによるカバーだ。井上和(乃木坂46)、櫻井優衣(FRUITS ZIPPER)、佐々木舞香(=LOVE)、TSUZUMI(ME:I)、吉川ひより(超ときめき♡宣伝部)という、今のアイドルシーンを牽引するグループの5人が同曲をカバーすることが発表されるとSNSを中心に話題に。人気グループを横断した大胆な布陣に、「最強歌メン陣」「原曲を超えるのか」という期待が集まっていた。放送を経て、結果的に原曲への流入が生まれ、チャートインに結びついた。
ここで注目すべき点は、カバーパフォーマンスの放送が、原曲の「初恋サイダー」まで至り、楽曲としてシェアされていること。つまり、原曲が持っているパワーが、バイラルヒットへの流れを作ったことである。
同曲が収録されたシングル『初恋サイダー/DEEP MIND』がリリースされたのは、2012年1月18日。オリコンチャートでの最高順位は7位と記録されている(オリコン調べ/※2)。Buono!は、Berryz工房の嗣永桃子と夏焼雅、℃-uteの鈴木愛理によるユニットで、ハロー!プロジェクト(以下、ハロプロ)の中でもロック色の強いサウンドと確かな歌唱力で独自のポジションを築いていた。近年では、様々なハロプログループがアイドルフェスのみならず音楽フェスに多数出演し、そのパフォーマンス能力が再評価されている。世代を超えたヒット曲の多さ、生歌と全身全霊のライブパフォーマンスなどが、アイドルファンだけではなく、フェスファンやロックファンにも刺さったのである。
「初恋サイダー」は軽快なアップチューンで、爽快感と高揚感が一気に駆け抜ける楽曲である。開放感あるメロディ、跳ねるリズム、切なさを孕むサビのメロディラインと、キャッチーな要素も満載だが、この曲を名曲にまで押し上げたのは、メンバー3人の声質が混ざり合う高密度な歌声のアンサンブルである。ストレートなビートが軸になるアップチューンの中で、ソロパート、ユニゾン、ハモりと、どれをとっても安定したクオリティ。アタックがやや強めで可愛らしくも幼くなりすぎない嗣永の歌声、夏焼の艶っぽい声質と繊細なビブラート、鈴木の滑らかで丸みのある伸びやかな声など、それぞれの個性がお互いを引き立てているのは、実力派メンバーならではの強みだろう。
また、今回のバイラルヒットには、ハロプロ所属のグループやアーティストが、音楽配信サブスクリプションサービスを解禁しつつあることも大きく影響しているだろう。Buono!の公式YouTubeチャンネルで公開されている「初恋サイダー」MVのコメント欄にはこの楽曲、そしてユニットをディグるうちにMVにたどり着いたという声も多く見受けられる。これは「初恋サイダー」が世代を超えた名曲になりつつある証拠である。
※1:https://charts.spotify.com/charts/view/viral-jp-daily/2025-11-19
※2:https://www.oricon.co.jp/prof/434963/products/944249/1/