ハシリコミーズ、ざらばんし、ローライラック、お風呂と街灯……ロッキン・ライフの「俺のイベントに出てくれないか!」第5回

 秋の訪れを肌で感じる中、ライブハウスシーンはさらに熱を帯びてきている。春から続く連載コラム「俺のイベントに出てくれないか!」も第5回を迎え、今回も自分がイベントを主催するなら呼びたい新鋭バンドたちをピックアップ。次の音楽シーンを担うような、個性的なアプローチでリスナーの心を掴むアーティストを4組紹介する。

ハシリコミーズ

一日数秒の良いシーン(MusicVideo) - ハシリコミーズ

 ハシリコミーズは、2020年のアルバム『無理しよう!』から一貫して、ポップでエネルギッシュなロックを展開しているバンドだ。変幻自在なギターの音色とタイトなリズムセクションが基盤となり、軽快ながらも情感豊かなサウンドを生み出している。ボーカルのハーモニーも特徴的で、リズミカルなサウンドアプローチの中に柔らかく溶け込んでいく。リズムセンスが抜群でDIY精神が強めのギターロックが好物のリスナーであれば、きっと刺さるものが多いはず。「たまには下と比べましょう」のようなバンドの代表曲から、近年の代表曲である「一日数秒の良いシーン」まで、バンドの根底はブレることなく、己のインディー感を深めながらアバンギャルドな世界を作り上げる。

ざらばんし

ざらばんし / SELF Music Video

 ざらばんしは、2022年に京都で活動を開始したソロアーティスト。作詞作曲から編曲までを一人で手掛け、90年代〜00年代のギターロックの影響を感じさせるアプローチを基調としている。宅録スタイルで生まれる作品は、90年代オルタナティブロックの系譜を継ぎながら、内省的な歌詞をキャッチーなメロディにのせているのが特徴。代表曲である「心がくたばるよ」や「全肯定」も"4ピースギターロックバンド"のような切れ味の中で、疾走感のあるビートメイクで進行する。最新曲「SELF」でも、センチメンタルなアルペジオから楽曲が始まり、そっけないトーンで繰り出されるボーカルで、喪失や葛藤を赤裸々にメロディとして紡ぐ。

ローライラック

 ローライラックは、2022年に田代唯人(Vo/Gt)を中心に結成された3ピースのエレクトリックロックバンド。サウンドは煌びやかながら、どこか懐かしい空気感も持ち合わせるのが特徴。バンドのルーツはエレクトロニックではあるものの、ダンスロックのようなトーンの楽曲もあれば、歌謡曲の濃度が強めの楽曲もあって、様々な要素をハイブリッドに昇華させて美しく展開させるのが持ち味。代表曲である「夢遊病」はゆったりとしたテンポながらもミニマムなリズムメイクで、穏やかな高揚感を生み出すし、新曲である「夏顔」はシンセサイザーとバンドサウンドを組み合わせることで、幻想的な音楽景色を作り出す。

お風呂と街灯

恥ずかしい日/お風呂と街灯

 お風呂と街灯は、関西在住の現役学生アーティスト。作詞作曲を自身で担っているため、どの歌も作家性が強く、絶妙なワードセンスと鍵盤主体の柔らかいポップスで紡ぐスタイルが魅力。最新曲「ある日の哲学」では、鍵盤主体の柔らかいテイストとハネたビートメイク、内省的な歌詞がリスナーの情感を呼び起こす。「恥ずかしい日」や「忘れごと」など、日常の何気ない場面を切り取りながらも、心の奥底を探索するような哲学的な歌詞も魅力的だ。特徴として、どの歌もミニマムながらもドラマチックな構成になっており、短編小説に触れたような奥深さを感じさせてくれる。ライブは鍵盤の弾き語りもあれば、バンドセットで挑むこともあり、多種多様なアプローチを目撃できる。

 サウンドやジャンルは様々であるが、己のDIY精神を拡張させながら作家性を際立たせているアーティスト、という点では共通している4組。それぞれ異なるシーンでサバイブしているが、「もし揃ったら面白そうだな」と思ったため、勝手ながらにまとめて紹介してみた。ぜひいつか同じイベントでそのカラーを解き放ってほしいなあと感じている次第。

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