UNFAIR RULE『ひびのかけら』に滲む柔らかな変化 3人で鳴らす“今”の音、ライブが生んだ新たな結束

UNFAIR RULE、新作に滲む柔らかな変化

スナックのママの一言から生まれた「口癖」、衝動が刻まれた「耳鳴り」

ーーでは、EP『ひびのかけら』収録の新曲についても聞かせてください。まずは10月8日に先行配信された「口癖」について。素直な感情を歌ったミディアムチューンで、これもまたUNFAIR RULEの新たな一面が見える曲ですが、この曲はどのように制作されたのでしょうか?

山本:私、岡山の占いスナックのママとめっちゃ仲良くて。ママに相談していた時に、「でも結局、駆け引きしとるうちは本物じゃないよ」って言われてハッとしたんです。そこでめっちゃテンションが上がって「それ、歌詞にするわ!」ってサビから書き始めました。

ーーママの一言がきっかけだったんですね。

山本 はい。そもそも「ずるい約束」と「言葉に恋する君が」で歌っている人と同じ人の話なんです。〈疑ってしまうのも愛なら/私たちずっと一緒に居られそうだね〉って書いていますけど、その人が「嫉妬とかしてしまうのって愛だよね」って言う人だったんです。だから、「じゃあ私が疑うことも、向こうが疑うことも多いから、一緒にいられるね」っていう皮肉だと捉えてもいいし、〈君は/もう/だって/きっと/なんてもう言わない」っていう歌詞から、「もうマイナスなことは言わない」っていう、希望の曲だって捉えてもらってもいいかなって。

UNFAIR RULE「口癖」Music Video

ーー私は〈君/ もう/だって/きっと/なんてもう言わない〉を、「もう だって きっと」が好きな人の口癖で、それがもう聞けないという曲なのかなと推測していました。

山本:それも面白いですね! いろいろな聴き方をしてもらえたらと思います。

悠瑞奈:私、この曲はデモができた時からすごく好きでした。ずっと早く出したいと思っていたんですけど、最初は今回のEPにも入らないかもしれなくて。だけど秋冬に似合う曲だし、「今だな」ってみんなが思って入れることになったのですごく嬉しいです。

ーーその上で演奏やコーラスではどのようなことを意識しましたか?

悠瑞奈:声がきれいだから、楽器は結構もったりさせました。実は、ベースもドラムも、ギターも結構ロックな感じの音なんですよ。

杉田:最後の〈口紅を塗り直したところで〉からバーンっていくんですけど、そこまでの表現が難しかったです。歌詞もメロもいいから、ドラムも打ち込みみたいなものを目指していたんですけど、それが難しかった。

山本:スネア替えたのってこの曲だっけ?

杉田:そうそう。この曲、実はスネアを2台使っていて。1サビまではサブスペアといって、ちょっと音が軽めなものを叩いて、1サビでメインのサビでメインに切り替えています。少しずつ盛り上げていく感じを楽器でも表現できたらいいなと思っていました。

山本:この曲、楽器の音がかっこよくて好きです。この曲の持つ濁った感じを、楽器で表現したいなと思ってかなり音色にはこだわったので、全体をじっくり聴いてもらいたいです。

ーー個人的に気になったのが2曲目「耳鳴り」です。歪んだ音を感情的に投げつけるような印象の曲ですが、この曲はどのようにできたのでしょうか?

山本:すっごく嫌なことがあって! その嫌なことが頭の中でウワッとなりすぎたので、好きなバンドの曲を爆音でイヤホンで聴きながら帰ったんですよ。それこそ耳鳴りがしそうなくらい、キーンってなるくらいの音量で聴いて嫌なことを紛らわせた。そのまま家で、ノートに書き殴ったのが、Aメロです。

ーーこの曲に綴られている感情に、実際なったんですね。

山本:そうです。だから、この曲を聴くと、いつでもあの時の感情を鮮明に思い出せます(笑)。

ーーお二人は、最初にこの曲を受け取ったとき、どう思いましたか?

悠瑞奈:「バリ怒ってるやん」って(笑)。本当に怒ったことをすぐに書いたんだろうなって思うくらいの新鮮さを感じました。

杉田:「みーちゃん、何かあったんかな」って思ったよな(笑)。

ーーすべての楽器が歪んでいますが、音作りはどのように?

悠瑞奈:実はこの曲は、クリックなしで、3人でいっせーのーせで録ったんですよ。だから歌詞の通りに演奏できている気がします。

ーー全員が感情任せに。

悠瑞奈:はい。その上で息は合わせて。

杉田:僕は、実は前半は無機質な感じなんですよ。エンジニアさんに「無機質な感じにしてみたら?」と言われて試してみたらバチッとハマったので。そのおかげで〈私の味方でいてディストーション〉以降との緩急の差がすごくよく出せたなと思います。

山本:ギターは歪んでれば、それでよかったです(笑)。

UNFAIR RULE(撮影=山川哲矢)

『ひびのかけら』が映す新しい関係性、努力を重ねて掴んだ手応え

ーー今お話を伺った3曲に加え、「誰かの彼女になっても」「後悔する前に」という新曲を加えた全5曲が収められた『ひびのかけら』ですが、出来上がっていかがですか?

山本:めっちゃお気に入りです。この『ひびのかけら』というタイトルは崇がつけたんですよ。この5曲をまとめる言葉が思い浮かばなかったから、チームみんなで案を出し合って。名前を伏せて集まった中から『ひびのかけら』を選んで、「これ、誰の案?」って聞いたら崇でびっくりした。

杉田:「まさか!」ってね(笑)。

山本:悠瑞奈が正式加入してからメンバーの仲もより良くなったし、“3人で作ろう”としている感じがするんです。「私が作る」とか「私が引っ張っていかなきゃ」とか、そういう気持ちよりも「3人でこれをどうするか考えよう」って思えるようになったのが今年。だからジャケにも3人を入れたくて写真を使ったし。だから、このEPは「3人で作った」という気持ちがすごくあります。

ーー珠羽さんがふたりを頼れるようになったんですね。

山本:そうですね。ふたりが頼れる環境を作ってくれたんです。だから前よりも楽な気持ちで曲も作れるし、ライブもできているような気がします。 

悠瑞奈:うんうん。私もこのジャケ、めっちゃ好き。

『ひびのかけら』
『ひびのかけら』

ーーそれこそ、冒頭に伺った合宿での3人の雰囲気がそのまま出ているなと思いました。

悠瑞奈:確かに! なんだかそんなジャケの雰囲気もあってか、あったかいEPだなって思います。

杉田:「名盤爆誕!」って感じがします。

ーーちなみに珠羽さんが、最近ボイトレに通い始めたとおっしゃっていましたが、それはどういう思いからなのでしょうか?

山本:「ここで歌が上手くならんと埋もれる」と思ったからです。ほかのバンドを見ていると、ずば抜けているものがあったりするんですよね。そういうことを考えていたら、まずは私がめちゃくちゃ歌を上手くなろうと思って。通い始めてみると歌の幅も広がった実感があるし、ツアーでは東名阪のCLUB QUATTROでのワンマンがあるので、ライブでそれを感じられるのが今から楽しみです。

ーー実感があると頑張れますよね。

山本:はい。最近、ライブ終わって「はー、今日いい歌うたえたな」って思えますもん。

ーーすごく幸せですね。

山本:はい、すごく楽しいです。

UNFAIR RULE(撮影=山川哲矢)

ーーお二人は最近、何か挑戦していることはありますか?

杉田:リズム練習の動画にあわせて基礎練をするようになりました。最初は何気なく始めたことなんですけど、やっぱり「上手くならないといけない」という気持ちはあって。でも、上手くなるための近道ってないんですよね。だから、まずは基礎練から。あとは、ドラマーの友達と一緒にスタジオに入ってお互いに良いところを吸収し合うみたいなこともやっています。

悠瑞奈:私はすごく手が小さくて、ベースを弾く上で普通の人が簡単にできることが上手くできないことがあって。だけど、それを「手が小さいから」で諦めたくないから、克服しようと思って指を鍛えています。あとは、ボイトレを始めたことでみーちゃんのボーカルが結構変わったんですよ。だからコーラスではその違いもちゃんと拾えるように、毎回ちゃんと声を聴いて試行錯誤しています。

ーーそして11月9日からツアー『UNFAIR RULE “ひびのかけら”Tour』が始まります。前半は対バン、後半は先ほどお話にもあったように東名阪クアトロでのワンマンライブです。

山本:楽しみですね。デカ箱のライブも好きだし。

悠瑞奈:このEPの新しい曲たちと既存の曲たちがどうあわさって、その日1日を作るのか。自分たちも楽しみです。

■リリース情報
配信EP『ひびのかけら』
2025年11月5日(水)配信リリース
配信リンク:https://jvcmusic.lnk.to/unfairrule_hibinokakera

<収録曲>
1. 誰かの彼女になっても
2. 耳鳴り
3. 口癖
4. ポニーテール
5. 後悔する前に

■関連リンク
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Official Site:https://unfairrule.fanpla.jp/

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