スピッツ、RADWIMPS、YOASOBI、ポルノグラフィティ、羊文学、BE:FIRST……注目新譜6作をレビュー

 毎週発表される新譜の中から注目作品をレビューしていく連載「New Releases In Focus」。今回はスピッツ「灯を護る」、RADWIMPS「ワールドエンドガールフレンド」、YOASOBI「劇上」、ポルノグラフィティ「THE REVO」、羊文学「いとおしい日々」、BE:FIRST「Stare In Wonder」の6作品をピックアップした。(編集部)

スピッツ「灯を護る」

スピッツ / 灯を護る Spitz / Protect the Light

 華やかなドラムのフレーズから始まり、切なさと抒情性をたたえたギターフレーズを軸にしたバンドサウンドへと移行。ハッとするような転調と徐々に高ぶるメロディ、管楽器の音色とともに奏でられるサビの旋律など、「すべてがハイライト」として「これぞスピッツ」と称すべき「灯を護る」は、2023年の「美しい鰭」(劇場版『名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)』主題歌)がそうであったように、アニメ『SPY×FAMILY』Season 3(テレビ東京系)のストーリーや設定にしっかり寄り添うと同時に、いつ、誰が聴いても心の奥底まで浸透する楽曲に仕上がっている。社会の規範とされている枠に入ってないとしても、僕は君との未来を見たい――。〈幸せの意味にたどり着きたいんだ〉というフレーズを筆者はそんなふうに捉えたが、あなたはどうか。(森)

RADWIMPS「ワールドエンドガールフレンド」

RADWIMPS - ワールドエンドガールフレンド / World End Girl Friend [Official Music Video]

 10月8日発売のアルバム『あにゅー』収録曲のひとつ。メジャーデビューから20周年、メンバーは改めて10代の頃の感覚を取り戻しているそうで、アルバムには疾走感のあるギターロックが多数。そういう中にあって、こちらはまったりと柔らかなミドルテンポ。はっぴいえんどや原 由子のエッセンスを感じる、珍しいフォーク系の楽曲である。ただし、タイトルは直訳すると「世界の終わりの彼女」。世界が滅んでも二人の愛は永遠だと言い切るような感覚は、いい意味で青い。かつてRADWIMPSが登場した時、あまりに無防備かつ剥き出しの恋愛観に驚いたことを生々しく思い出した。野田洋次郎(Vo/Gt/Pf)にしか書けないという意味で、あまりにも“らしい”曲。(石井)

YOASOBI「劇上」

YOASOBI「劇上」Official Music Video

 ドラマ『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』(フジテレビ系)主題歌となる新曲。まずドラマの脚本を務める三谷幸喜が楽曲のために短編小説『劇場ものがたり』を書き、「この世界は舞台であって、人間はみな役者である」というテーマを軸として制作は進んだそう。誰もが主役であり、また見向きもされない端役かもしれない。老若男女に当てはまる言葉をチョイスしながら聴き手全員を巻き込んでいくアッパーなダンスチューンに仕上がっている。また、この曲はYOASOBI史上初となるWボーカル楽曲。コンポーザーのAyaseもikuraとともにサビを唱和している。さらにMVに本人たちが出演するのも初めてのことで、テーマに全力で向き合った二人の姿が確認できる。(石井)

ポルノグラフィティ「THE REVO」

『僕のヒーローアカデミア FINAL SEASON』本PV/OPテーマ:「THE REVO」ポルノグラフィティ/10月4日放送開始・毎週土曜夕方5:30/ヒロアカファイナル

 TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』(TBS系)第1期のオープニングテーマ「THE DAY」を担当したポルノグラフィティが、約9年の時を経て、FINAL SEASONの主題歌を担う。このストーリーだけでグッとくる『ヒロアカ』ファンも多いはず。“脳内の革命”をテーマに掲げた「THE REVO」(作詞:新藤晴一/作曲:岡野昭仁)は、しっかりと抑制を効かせたバンドサウンドから始まり、曲が進むにつれて熱量とダイナミズムを増していく。その構成自体が、『ヒロアカ』のキャラクターたちの道のり――数々の苦難と葛藤を乗り越えながら成長を続けた――と強くリンクしている。「THE RAVO」にある〈THE DAY HAS COME〉というフレーズもあり、ライブでも新たなアンセムとして機能することになりそうだ。(森)

羊文学「いとおしい日々」

いとおしい日々

 アルバム『D o n' t L a u g h I t O f f』に収録されている未発表新曲のひとつ。タイトルから万人に贈る人生讃歌なのかと思ったが、シンプルなギターロックに乗っているのは、呪詛にも近い塩塚モエカ個人の言葉である。〈耳障りなアラーム止めて〉という歌い出しからラスト近くの〈何にもない今日が過ぎる〉まで、慰めの言葉は見当たらない。蓄積するばかりの苦しさ、虚しさ、満たされなさ。一気に高音域に駆け上がるサビは絞り出す絶叫のように響く。武道館2DAYSを前に、傍目には輝くステージにいる彼女たちが、ここまでリアルな心象風景を吐き出すことに背筋が震える。救いはラスト3行。必死に明日を掴もうとする姿は、必ずや誰かの心を照らすだろう。(石井)

BE:FIRST「Stare In Wonder」

BE:FIRST / Stare In Wonder -Special Dance Performance-

 常識やルールに縛られていた自分を抜け出し、絶対にあるはずの個性を発揮しながら、最後は自らの感覚と本能に任せて踊りまくる。そんな情景を映し出す新曲「Stare In Wonder」は、アニメ『ワンダンス』(テレビ朝日系)の主題歌として制作された。周囲の雑音を打破して突き進むリリックは、ダンスを通して自分らしさを取り戻す高校生たちの葛藤と成長を描いたアニメのストーリーに即しているのはもちろん、BE:FIRSTがたどってきたプロセスともしっかりと同期。トラックメイク、ラップ、フロウも当然、踊ること、パフォーマンスすることを強く意識してプロダクトされているが、そのクオリティはアニメのダンスキャストを務めるKAITAとReiNa、そしてSOTA(BE:FIRST)が振り付けを担当したMVで確かめてほしい。(森)

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