櫻坂46 井上梨名の卒業は二期生時代の一区切りに? グループを支えてきた存在感、空気を変える力と温かさ

 櫻坂46の井上梨名が、10月29日にリリースされる13thシングル『Unhappy birthday構文』の活動をもって卒業することを発表した。2018年に『坂道合同新規メンバー募集オーディション』に合格し、欅坂46の二期生としてグループに加入してから7年。今回、二期生メンバーとしては久しぶりの卒業となり、改名後の櫻坂46の重要な区切りともなるだろう。

 ブログでは、「櫻坂46のメンバーとして精一杯活動できた。思い残すことはない。そう胸を張って言える今、卒業を決断しました。」と綴り、「櫻坂46から大きな一歩を踏み出したいと思いました。櫻坂46を離れる事は寂しいですが、大きな一歩を踏みだす事をワクワクしている自分がいます!」と心境を綴っている(※1)。井上が選んだ言葉は、寂しさよりも次の舞台への期待を感じさせるもので、そこに彼女らしい温かさと誠実さを見た気がした。

転換期を支えた二期生、その中で井上が果たした役割

 筆者が井上に抱いた最初の印象は、とにかく柔らかい空気を纏っているメンバーだということだった。欅坂46時代の二期生加入当初、グループにはどこか張り詰めた緊張感が流れており、その表現も硬派でストイックな方向に傾いていた。そんな環境の中で、井上は自然体の笑顔とユーモラスな振る舞いで周囲を和ませ、重い空気をふっと軽くする存在だった。ステージに立ったときのダンスもしなやかで安定感があり、派手に目を引くタイプではないものの、フォーメーション全体のバランスを取る役割を果たしていた。

櫻坂46 井上梨名『恋して❤りなウェーブ』
櫻坂46 『なぜ 恋をして来なかったんだろう?』

 二期生という世代そのものも、グループにとって特別な意味を持っていた。欅坂46から櫻坂46へと改名した転換期に、新しい体制の中で最前線を担ったのは彼女たちだった。森田ひかるが表現の鋭さで先頭を走り、山﨑天がコンセプトを体現する核となり、田村保乃がMCやバラエティでグループを牽引するなど、それぞれが自分の役割を見つけ、機能的に分担することで再出発の櫻坂46を支えてきた。激動の時代を“基盤を築いた世代”として駆け抜けた二期生が残した足跡は、後輩世代にとっても確かな道標になっている。井上の卒業は、その象徴的な物語がひとつの区切りを迎えることを示している。

 その中で井上は、二期生がそれぞれの強みを発揮できるように場の雰囲気を和ませ、全体をなめらかにつなぐ存在だったと思っている。前列に立つ機会は限られていても、安定したパフォーマンスと落ち着いた立ち位置が、グループのバランスを支える大切な役割を果たしていた。

櫻坂46 『BAN』

 井上の存在感を決定づけたのは、メディアでの活動だった。『櫻坂46 こちら有楽町星空放送局』(ニッポン放送)では4代目パーソナリティとして長期にわたり番組を担当。攻めたトークで笑いを取りにいくというよりも、共演者やリスナーに寄り添う穏やかさと、時に自らいじられ役となって場を和ませる軽妙さを武器にしていた。リスナーからのメールに丁寧に耳を傾け、どんな話題もふんわりとした笑いに変えることで、日常の中に櫻坂46をそっと溶け込ませていった。声のトーンや間合いの取り方にも個性があり、夜のラジオに寄り添う柔らかさのようなものを持っていたこも印象深い。継続的に番組を任されたことこそが、彼女への信頼の証でもあっただろう。

 さらに2023年の春には『ラヴィット!』(TBS系)の水曜レギュラーに抜擢。朝の全国放送という舞台で櫻坂46を代表して抜擢されたことも、大きな信頼あってこそ。井上は、アイドルらしい華やかさを前面に押し出すというよりも、自然体をもってユーモラスなトークを展開することで、スタジオを温かい空気に包んだ。芸人やタレントに囲まれる環境の中でも必要以上に構えることなく、自分の言葉でやり取りを重ねられるのが井上の強みだった。

 時に思わぬ振りに戸惑いながらも、持ち前の素直さで笑いに変えてしまう。共演者と息の合った掛け合いを見せる場面も多く、番組全体を和ませる潤滑油のような役割を担った。また、生放送ならではの予想外のハプニングにも落ち着いて対応し、場を明るく持ち直す姿は視聴者に安心感を与えていたと思う。彼女の存在は単なる出演者にとどまらず、朝の時間帯をともに過ごす“身近な顔”として受け入れられていったのだ。

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