マカロニえんぴつ、初ワンマンの地・下北沢SHELTERに帰還 ライブハウスに溢れた“ロックバンドの楽しさ”の原点

 今年デビュー10周年イヤーを迎えたマカロニえんぴつ。6月の横浜スタジアムでのワンマンライブ、7月の初のBillboard公演、“大ちゃん”こと長谷川大喜(Key/Cho)とステラおばさんのコラボなどなどスペシャルな企画が次々と投下されるなか、とんでもなくレアなライブが実現した。なんとライブハウス、下北沢SHELTERでのワンマンである。ここはデビューした2015年にバンドが初のワンマンライブを行ったメモリアルな地。はっとり(Vo/Gt)はこの日最初のMCで「俺たちにとってもすごい特別な日になりそう」と口にしていたが、その言葉どおり、さまざまなエモーションが湧き起こり、それと同時にこの10年間に彼らが刻みつけてきた成長を見せつける、本当に特別なライブとなった。

 「すごいね、ライブハウスですね!」。デビューミニアルバム『アルデンテ』の1曲目「鳴らせ」で始まったライブ。3曲目「ハートロッカー」を終え、早くも額に汗を光らせたはっとりが感嘆する。超激戦の末にチケットをゲットして集まったファンたちに感謝を伝えながら、「家族みたいな気持ちでいてよ、今日は。あんたたち、最高」とここまでですでに最高の空間を作り出している彼らを讃えてみせると、その後もライブは新旧さまざまな楽曲を織り交ぜて進んでいった。当たり前だが、前回この場所でワンマンライブをやったときにはなかった曲が大半で、個人的にもこの規模の会場で聴くのは初めてという楽曲ばかりだったのだが、驚いたのはどれもが想像以上にロックバンド然とした力強さを持っていた点だ。これまた彼らはロックバンドなので当たり前なのだが、なにせ前に見たのがスタジアムだったので、あらためてマカロニえんぴつの骨格と筋肉をまざまざと見せつけられるようで、自ずと興奮してくる。

 さらに、メンバーそれぞれのプレイをこれほど間近で目にする機会もそうそうない。「恋の中」での田辺由明(Gt/Cho)の泣きのギター、「ブルーベリー・ナイツ」での高野賢也(Ba/Cho)のベースラインと長谷川のキーボードのライン。そこにいつもよりエモ3割増しのはっとりの歌が重なって、楽曲がもつ情感が倍増して伝わってくる。なかでも感動したのは「悲しみはバスに乗って」。これほど生感の強い、ロックバンドらしい音のつくりをもった曲だったのか、と衝撃を受けた。

 そんな「悲しみはバスに乗って」を終えて、「声でかいね、みんな」とあらためて驚きの声を上げるはっとり。その言葉はマイクを通っていないが、この距離だとしっかりこちらの耳に届いてくる。そうして彼が話し出したのは、コロナ禍でお客さんの声を聞けなかった時期のことだ。思えば、マカロニえんぴつにとってあの時期は、まさにメジャーデビューに向けて突き進んでいく、バンドにとってとても重要なタイミングだった。ライブハウスで培ったものを手に大きなステージに進んでいく転換点を、彼らは歓声のないなかで闘っていたのだ。そんな時期を経て、バンドとして飛躍した今だからこそ、この場所に戻って来れた感慨もひとしおなのだろう。「胸を張って帰ってこれた」というはっとりの言葉には、実感が滲んでいた。そして「俺はひとりじゃないと感じて今年作った曲」と、「静かな海」が披露される。アウトロの口笛を吹き終えると、はっとりはメンバーに目を向けながら、何度も頷いて見せるのだった。

 そこから「然らば」でフロアの熱を俄然高めると、高浦“suzzy”充孝(Dr)のドラムが鳴り響くなか、はっとりがフロアに問いかける。「今日は“アレ”、払ってないんですよね?」。“アレ”というのはライブハウスにつきものの“アレ”だ。「払ったー!」とオーディエンスから声が上がる。いくら特別なライブとはいえ、やはり“アレ”はあるのだ。それを受けて「配信の人は一銭も払ってないらしいです」と笑いを取りながら、あの曲が始まっていく。そう、「ワンドリンク別」である。もちろんどんな会場でもマカロニえんぴつのライブには欠かせない鉄板曲だが、やはりこの曲がもっともふさわしいのは今日みたいなライブハウスだろう。オーディエンスの絶叫が響き渡り、はっとりは「優勝!」と満面の笑み。ここからライブは一気にクライマックスへと駆け上がっていく。

 「洗濯機と君とラヂオ」では「歌え!」の声にオーディエンスは初っ端から大合唱で応える。その光景を見て田辺がニコニコと笑っている。2度目のサビもお客さんに任せたはっとりは「ライブハウス最高!」と叫んでみせた。そして「忘レナ唄」へ。田辺のギターソロを真横で聴いていたはっとりは「アニキ、いいソロ弾くね、今日も!」と声をかけ、ラストは自分も田辺と向かい合ってギターを弾き倒す。何度も書いて申し訳ないのだが、ロックバンドの楽しさの原点のような光景だ。そんなシーンに続いて演奏されたのが「あこがれ」だったというのもとてもエモーショナルだった。いうまでもなくこの曲にははっとりの音楽に懸ける思いが凝縮されているし、そこに込められた感情は、今だからこそとても大きな意味を持つものだ。彼がどんな気持ちを抱いてバンドを続けてきたのか、その思いの丈を爆発させるようなパフォーマンスはとても感動的だった。

 「シェルターの楽屋はエレベーターのなかくらい狭いんですよ」。そんな言葉で、はっとりはライブハウスの記憶を呼び起こす。じつは彼は当時、ライブハウスの雰囲気やそこでほかのバンドと競い合うことが苦手だったという。シーンのトレンドや盛り上がりに馴染めずに、かつての彼は悶々としていたのだ。「でも」とはっとりは言葉を続けた。「あそこで探していたんだと思うんです。自分たちの本当に得意なことを。気づいたら、たぶん俺はライブハウスが好きだったんだと思います」。10年ぶりのステージで、彼は何かをはっきりと取り戻したようだった。「また青い気持ちに戻って、必死こいてまた『俺たちの音楽聴いてくれ』って走っていきたい」――その言葉に、フロアからはあたたかな拍手が送られるのだった。

 そして、きっとかつての彼ら自身もそうだったであろう〈ヤングルーザー〉たちに向けて「ヤングアダルト」が鳴らされる。この曲には下北沢に実在する居酒屋も登場する。曲中、大ちゃんのソロに「ステラおばさーん!」とはっとりがヤジを入れたりしながら、大きなシンガロングとともに曲が広がっていった。これでライブは大団円……でもよかったが、はっとリは「終わると思った?」とニヤリ。そしておもむろに「アルバムを出します!」とメジャー3rdアルバム『physical mind』が12月10日にリリースされることを発表すると、最後にそのニューアルバムからの新曲「いつか何もない世界で」を披露。アルバムタイトルを聴いて「Led Zeppelinみたいだなあ」と思っていたらLed Zeppelinみたいなイントロが来たので思わず笑ったが(曲全体を聴くと別にツェッペリンではなかった)、ロックバンドの肉体をバチバチに感じる1曲ですばらしかった。

 この日はっとりは「ここでの思い出に浸りながら最後まで突っ走りたい」と言っていた。確かにそうした面もあったが、ライブが終わったあとに脳裏に残ったのは、あくまで現在進行形で進化し続けるマカロニえんぴつの姿だった。デビュー10周年を経て、さらに加速していきそうなロックバンド・マカロニえんぴつの今後が楽しみになる、下北沢の一夜であった。

■リリース情報
3rdフルアルバム『physical mind』
発売:2025年12月10日(水)
特設サイト:https://macaroni-special.com/physical_mind/

<商品形態>
・完全生産限定盤(OKKAKE盤)※FC会員限定販売
PPTF-8190~8191
価格:¥6,600(税込)
仕様:CD+Blu-ray(『マカロックツアーvol.17 ~思ひ出いっぱい☆地元へ帰ろう編~』収録)

・初回生産限定盤A (Billboard盤)
TFCC-81171~81172
価格:¥6,600(税込)
仕様:CD+Blu-ray(『NANO universe×Billboard Live “music from NANO universe”』収録)

・初回生産限定盤B(hope盤)
TFCC-81173~81174
価格:¥6,600(税込)
仕様:CD+Blu-ray(『マカロックツアーvol.19 ~いざvol.10のリベンジ!持ち寄ろう、それぞれのhope篇~』収録)

・初回仕様限定盤(通常盤)
TFCC-81175
価格:¥3,300(税込)
仕様:CD

<収録内容>
・月へ行こう(映画『FLY!/フライ!』主題歌)
・忘レナ唄(TVアニメ『忘却バッテリー』テレビ東京系/ エンディング・テーマ)
・poole(コカ・コーラ「紅茶花伝」CMソング)
・然らば(TVアニメ『アオのハコ』TBS系/第2クールオープニングテーマ)
・NOW LOADING(映画『山田くんとLv999の恋をする』主題歌)
・ロング・グッドバイ
・静かな海
その他新曲を加えた全14曲を収録予定

■公演情報
全国5都市Zeppツアー
『マカロックツアーvol.20 ~むしろウチらが追っかける!愛を掴んでホールドオン篇~』
詳細:https://fc.macaroniempitsu.com/news/detail/100124

全国19都市25公演ホールツアー
『マカロックツアーvol.21 ~心を覗いてシラけるより、ことばのシワだけ増やしてゆけ篇~』
詳細:https://macaroniempitsu.com/news/16661.html

<チケット>
OKKAKE先行 受付中
2025年9月15日(月)23:59まで
受付URL:https://fc.macaroniempitsu.com

■関連リンク
HP:https://macaroniempitsu.com/
Instagram:https://www.instagram.com/macaroniempitsu_official/
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