Aqua Timez、信じ続けた音楽で果たす“使命” デビュー20周年記念ライブで眩しく輝いた絆と感謝

 バンドの音を翼にして、太志(Vo)のロングトーンが観客の元へ伸びていく。客席を指しながら〈あなたを 幸せにしたいって思う〉(「生きて」)と歌う彼の声に、東京ガーデンシアターが幸福な空気に包まれた。6年間の別れを経て、Aqua Timezとファンは今、再会の喜びを噛み締めている。

 Aqua Timezのデビュー20周年記念ライブ『Aqua Timez 20th Thanksgiving Live「空いっぱいに奏でる祈り」』。2018年に惜しまれながら解散し、2025年末までの期間限定で2024年7月に再結成した彼らが、このライブで伝えたかったのは純粋な感謝の気持ちだった。開演前には、先日終えたばかりの全国ツアー『Aqua Timez Re:visit tour 2025』を振り返る映像とともに、「そこで強く感じたのは、こんなにも待ってくれる人がいたということ」「まだ自分たちの使命は終わっていない。みんなにありがとうを伝えきれていない」「自分たちの想いを直接伝えたい。自分たちの信じた音楽に乗せて」というメッセージが流され、メンバーの想いが示された。

太志(Vo)

 セットリストでは感謝と愛情が表現され、バンドとファンが共有してきた時間と記憶の価値を改めて確かめ合うような、温かい時間が流れた。この日特に印象的だったのは、メンバーが語った想い。バンドのリーダーであるOKP-STAR(Ba)は「6年間『みんな何してるのかな?』って寂しかった」「心に穴があいたみたいで、でも“前に進まなきゃいけない”と思いながら自分で塞いだ」と、Aqua Timez不在の世界で暮らしていたファンと近い心境を打ち明けた。しかしOKPのMCが「今は『やっぱりみんないたじゃん! 全国に仲間いたじゃーん!』って」「思い出を共有できることはこんなに素敵なことなんだと、再結成して実感しています」と続いたように、今はリアルタイムで音楽を、思い出を共有できている。太志も「いつからかわからないけど、ただ自分が傷つかないように暮らすのが人生の目的になってました。でも今日は、今年は違う。この5人でならできると信じてます」と決意を語る。そうした心境とともに響いた4曲目の「生きて」。リスナーの気持ちに応えて帰ってきたAqua Timezが、〈あなたを 幸せにしたいって思う〉というフレーズを力強く届ける。その瞬間は、それぞれの孤独の夜が明けたこと、バンドとファンがついに再会できた喜びを象徴していた。

OKP-STAR(Ba)
大介(Gt)

 mayuko(Key)が「みんながあったかいから、ありのままでいられる。ステージに立つときの感じが日常生活に近くなっている」と語っていたように、再結成後の彼らを特徴づけるのは、ステージと日常の境界が曖昧になったことかもしれない。ファンからの手紙を読んで想いを巡らせたというTASSHI(Dr)は、「自分もAqua Timezの音楽に支えられてきた」と語り、「みんなもともに歩んできてくれたと思うと感謝でいっぱい」と噛み締める。大介(Gt)も過去の出来事を回顧しながら「ファンのみんなと作った20年」とし、垣根のない関係性を表現した。

mayuko(Key)
TASSHI(Dr)

 そんな変化が最も顕著に表れたのが、ライブ中盤のアコースティックセクションだった。キャンプファイヤーの映像を背景に、5人がやさしいサウンドを届けると、観客も含め一つの輪の中で語らうような、親密な空間が立ち現れる。太志は「hana~Everlasting~」演奏前に祖母とのエピソードを、「Pascal」演奏前には父との思い出を静かに語った。これらの楽曲を歌うことは、彼にとって愛する人たちを自分の中に生かし続けるための大切な行為なのだろう。同時に観客にとっても、それぞれの大切な人や記憶を思い起こす温かな時間となった。そして「決意の朝に」では、会場全体が大合唱に包まれる。曲が終わると、太志は「今まで俺たちだけじゃなくて、みんなそれぞれいろいろな大変なことがあったけど、それを乗り越えてここに会いに来てくれた。ホントありがとう。僕らは幸せです」と語りかけた。個々の人生の重みを背負いながら語られる、ここに集まった全員への深い感謝の言葉だった。

 今を大切に生きること。過ぎ去った時間を受け入れ、慈しむこと。相反するようで実は一つである人生の真理を、Aqua Timezは「カルペ・ディエム」「LOST PARADE」といった楽曲を通して歌い届ける。そこにあるのは、20年の歳月を重ねたからこその説得力だ。続く「虹」は、今この瞬間を祝福する楽曲として鳴り響く。ステージから客席へ七色の照明が伸び、メンバーの笑顔も輝くなか、太志は人差し指で円を描きながら〈みんなの空がやっと やっと 一つになって〉と歌詞を変えて歌う姿が印象的だった。そして本編を締めくくる「12月のひまわり」から「OLDROSE」への流れは、このライブの核心的なメッセージを物語っていたように思う。変化を超えて受け継がれる美しさを歌った2曲は、限られた再結成期間だからこそ切実に響いた。

 「僕たちが再結成したのは、この曲をみんなに聴いてもらうためだったのかもしれません」――アンコールではそんなメッセージがスクリーンに映し出され、新曲「空いっぱいに奏でる祈り」が披露された。20年前のインディーズデビュー作と同じタイトルを持つこの楽曲は、これまでのどの楽曲とも異なる雰囲気を持っていた。ひと夏の体験を壮大なイメージへと昇華させる楽曲の構造、ドラマティックな音像、20年を共に歩んだファンを“人生の友”と認識した上で綴られる歌詞、20年前に掲げたタイトルの回収――再会の喜びとやがて来る別れの予感が交錯する中で、20年という時間が描いた大きな円環がここに完成していた。

 最後の「等身大のラブソング」では観客のジャンプと一緒に締めくくろうとするも、タイミングが合わず、「やっぱりね」「俺たちってあと一歩なのよ」と笑い合うメンバーたち。MCでこぼれる何気ない笑いも、最後の最後でしっかりキメられないところもAqua Timezらしくて愛おしい。メンバーとファンの飾らない笑顔は、6年間の別れと再会を経て、より深まった信頼関係を感じさせた。彼らはこの再結成期間で、時が経っても色褪せない絆の価値や、人生の友と共に歩んできた証を刻みたかったのだろう。Aqua Timezとファンがかけがえのない幸せを共有できる時間は、あとわずかだが、もう少し続く。

▪️Setlistプレイリスト
https://filtrjapan.lnk.to/AquaTimezET

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